【開幕】「DESIGN MUSEUM JAPAN展」国立新美術館で12月19日まで クリエーターが発掘した日本各地の魅力あるデザインが一堂に会す

展示風景

DESIGN MUSEUM JAPAN展 集めてつなごう 日本のデザイン
会期:2022年11月30日(水)~12月19日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E(東京都港区六本木7-22-2)
開館時間:10:00~18:00
※毎週金曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
観覧料:無料
休館日:火曜日
アクセス:東京メトロ千代田線乃木坂駅直結
詳しくは同館の展覧会HPへ。

「DESIGN MUSEUM JAPAN展」が12月19日(月)まで国立新美術館で開催されています。本展は、NHKのプロジェクト「DESIGN MUSEUM JAPAN」の一環です。DESIGN MUSEUM JAPANは、「日本各地に点在する<デザインの宝物>を所蔵する館や組織をつなぎ、日本全体を<デザインミュージアム>にすること」を目指しています。そこで、帝国ホテル東京の新本館の設計を手がける建築家・田根剛さんや、デザイナーの皆川明さんなど13名のクリエーターが各地の生活文化をリサーチ。その成果を田根さんがデザインを手がけた会場で展示しています。

暮らしを支えたデザイン

国立新美術館展示風景(田根剛 「縄文のムラ」 1万年前の住空間にもデザインがあった)

会場では、各クリエーターが着目したデザインについて、実物や映像、クリエーター自身の言葉で紹介しています。

御所野ごしょの縄文博物館(岩手県)をリサーチした田根さんは、御所野遺跡の出土品を中心に展示。土を掘ってつくった竪穴住居、土をこね固めてつくった土器など、「土」をデザインすることからはじまった縄文の生活文化を紐解きます。

国立新美術館展示風景(皆川明 「山形緞通」 〈雪国のくらし〉を支えるデザイン)

つづいて、デザイナーの皆川明さんは、山形県山辺町でつくられる「山形緞通だんつう」(羊毛の絨毯)に着目しました。山形緞通のはじまりは、1935年。冷害凶作のため、大不況に見舞われたことがきっかけです。地元の人々の暮らしを少しでも豊かにするために、中国から緞通技術者を招聘しょうへいして製造がはじまりました。

戦後、素材が手に入らないときには、羊毛の代わりに「葛の根の糸」で手織り緞通を作るなど、人々の強い思いのもとで緞通は作り続けられてきました。皆川さんは、「緞通には手仕事の良さが<見える>というよりも<宿っている>」と説明しています。

国立新美術館展示風景(皆川明 「山形緞通」 〈雪国のくらし〉を支えるデザイン)・手織り緞通

一日に織れるのは数センチ。粘り強い手仕事の産物とも言える手織り緞通を、会場で実物展示しています。実際に触れるので、ぜひ厚みや手触りを直接感じ取ってみてください。

スポーツウエア開発のヒントは「あんどん」に

国立新美術館展示風景(須藤玲子 「最先端スポーツウエア」 発想源は富山の「あんどん祭」)

テキスタイルデザイナーの須藤玲子さんは、富山県小矢部市のスポーツウエアメーカー「ゴールドウイン」を訪れました。ゴールドウインは、1951年にメリヤス(機械編みのニット)製造所として創業し、1964年の東京オリンピックでは金メダルを獲得した女子バレーボールチームのユニフォームを制作。当時、ウエアの主流は化学繊維でしたが、摩擦熱を軽減するためにあえて綿素材を使用し、「東洋の魔女の回転レシーブ」を支えました。

国立新美術館展示風景(須藤玲子 「最先端スポーツウエア」 発想源は富山の「あんどん祭」)あんどん

1970年代からは、「身体の動きを助けるスポーツウエア」を目指し、身体に沿う立体裁断のウエアに挑戦。技術者は、試行錯誤を繰り返した末に、子供の頃から毎年作り続けてきた「あんどん祭り」のあんどんにヒントを得ました。竹ひごの骨格に和紙を張るあんどん作りが、身体に合わせた立体裁断のイメージへとつながったのです。

国立新美術館展示風景(須藤玲子 「最先端スポーツウエア」 発想源は富山の「あんどん祭」)

以降、新しい技術開発に挑戦し、様々なスポーツウエアを展開してきました。近年の代表作のひとつとして、2019年のラグビーワールドカップで日本チームが着用したジャージーも展示されています。

身近に眠るデザインの可能性

そのほか、「博多祇園山笠」の山笠、岡山県でつくられるプロペラ、おもちゃの「ぶちゴマ」など、クリエーターが心惹かれたデザインが紹介されています。

国立新美術館展示風景(廣川玉枝 「博多祇園山笠」 更新されながら受け継がれる情熱の結晶)
国立新美術館展示風景(原研哉 「プロペラ」 合理性が生む揺るぎないかたち)
国立新美術館展示風景(辻󠄀川幸一郎 「ぶちゴマ、そこから広がるさまざまなコマ」 おもちゃは人間が最初に触れるデザイン)

本展で紹介されるデザインには、これまで身近にあったために見過ごされてきたものも少なくありません。合わせて紹介されるクリエーターの言葉を読むと、背景にある物語がわかり、その魅力にあらためて気づかされます。

「デザインとは何か」について考えさせられる展覧会です。私たちの身近に、素敵なデザインがまだまだあるかもしれません。

「DESIGN MUSEUM JAPAN展」は国立新美術館で11月30日(水)から12月19日(月)まで。観覧料は無料です。2023年春からは、サンパウロ(ブラジル)、ロサンゼルス(アメリカ)、ロンドン(イギリス)へ巡回します。

参加クリエーター一覧
皆川 明 (デザイナー)
西沢 立衛 (建築家)
柴田 文江 (プロダクトデザイナー)
乾 久美子 (建築家)
須藤 玲子 (テキスタイルデザイナー)
三澤 遥 (デザイナー)
原 研哉 (グラフィックデザイナー)
廣川 玉枝 (服飾デザイナー)
森永 邦彦 (ファッションデザイナー)
辻󠄀川 幸一郎 (映像作家)
水口 哲也 (エクスペリエンスアーキテクト)
田川 欣哉 (デザインエンジニア)
田根 剛 (建築家)

(読売新聞美術展ナビ編集班・美間実沙)