ウクライナに捧げる祈りの響き ヴァイオリンの大谷康子さんらの室内楽 千葉・市川市で12月18日に特別演奏会

ウクライナのキエフ国立フィルハーモニー交響楽団と何度もキエフ(キーウ)で共演するなど、ウクライナと深い縁のあるヴァイオリニストの大谷康子さんらが出演する「クワトロ・ピアチェーリ特別演奏会 明るい未来を願って」が12月18日(日)、千葉県市川市の市川市文化会館小ホールで開かれます。先の見えないウクライナの戦争。「美術展ナビ」のインタビューに大谷さんは「一日でも早く平和が訪れるよう願い、音楽を深く愛するウクライナの人たちにメッセージを届けるつもりで演奏したい」と思いを語ってくれました。(美術展ナビ編集班 岡部匡志)

平和を希求するプログラム

演奏会は2部構成。「今この時に」と題した第1部では、チェコの作曲家で、ホロコーストで犠牲となったエルヴィン・シュルホフ(1894‐1942)の「弦楽四重奏曲」や、旧ソ連の大作曲家で、当時の政権から弾圧を受けて苦しんだショスタコーヴィッチの「弦楽四重奏曲第8番 ファシズムと戦争の犠牲者の想い出に」などを披露。また第2部の「未来へ」では、ウクライナの国民的作曲家、ミロスラフ・スコリック(1938‐2020)の名作、「メロディー」と、ドヴォルザークの「ピアノ五重奏曲第2番」が演奏されます。

2019年11月、キーウの国立ホールで行われたコンサートで、聴衆から拍手を受ける大谷さん(写真提供:伊藤裕太さん)

国立オーケストラと何度も共演 「音楽を心から愛する人々」との絆

日本を代表するヴァイオリニストで、その豊かな表現力で「歌うヴァイオリン」として親しまれる大谷さんが、ウクライナと縁が生まれたのは2015年のこと。来日ツアーを行ったキエフ国立フィルと各地で共演したところ、同フィルから即座に「ぜひ、ウクライナでも一緒に演奏してほしい」と熱心に招聘され、2017年から2019年にかけて毎年、キーウでブルッフやチャイコフスキーなどの協奏曲を演奏。満員の観衆が総立ちになったこともあり、常に熱い拍手を送ってくれたそうです。

2017年5月のキーウの演奏会。大谷さんの演奏に、総立ちになった観客席(写真提供:伊藤裕太さん)

「オーケストラもお客さまも、ウクライナの人たちとは特別、相性が良かったようで、本当に気持ちよく演奏できました。心から音楽を愛する人たちの多い国です」と大谷さんは振り返ります。当時からウクライナへの敬意をこめて、国旗の黄色と青色をあしらったドレスをいつも身に着け、舞台に立ちました。

「戦争と隣り合わせの国」の姿にショック

リハーサルの合間などに、キーウの美しい街並みもよく歩きました。そこで大谷さんが驚いたのは修道院の塀や広場の掲示板など、いたるところに戦争や民主化運動で犠牲になった人たちの写真が飾られ、そこに佇んだり、祈りを捧げたりする人の姿が絶えなかったことです。

キーウ市内にある「聖ムィハイール黄金ドーム修道院」の塀に掛けられている過去の戦闘犠牲者の遺影(2017年5月撮影、写真提供:伊藤裕太さん)

「クリミヤ危機など、ずっと戦いが隣り合わせの場所なんだ、ということを痛感しました。しかしまさかこんなことになるとは」。今回の戦時下でもキエフ国立フィルは演奏活動を続けており、この間も大谷さんの元には「キーウで一緒に演奏しましょう」という招聘が続いているそうです。「さすがにこの情勢ではすぐにウクライナに入ることは難しいですが、必ずまたキーウで演奏します。早くそういう状況になるよう祈っています」。

将来、必ずキーウでまた演奏を

とはいえ国立フィルの団員の家族にも犠牲者が出るなどしており、「黙ってみているわけにはいかない。音楽家がすべきことはやはり音楽を通じて訴えること」と考え、仲間と相談して今回のコンサートを企画しました。プログラムについては「第一部は特に重苦しい鎮魂の響きに満ちています。一方、第二部はドヴォルザークの優しいメロディーに平和への希望を込めています。事態は長期化していますが、ウクライナへの関心を引き続きもってもらえるよう、心を込めて演奏したいと思います」と話していました。

©️尾形正茂 / ©️Masashige Ogata

「クワトロ・ピアチェーリ特別演奏会 明るい未来を願って」

出演:大谷康子(ヴァイオリン)、百武由紀(ヴィオラ)、苅田雅治(チェロ)、木野雅之(ゲスト、ヴァイオリン)、佐藤卓史(ゲスト、ピアノ)

日時:2022年12月18日(日) 開演14時(開場13時15分)

会場:市川市文化会館 小ホール(千葉県市川市大和田、JR総武線・都営新宿線「本八幡駅」より徒歩10分)

全席指定:一般は3500円、U25は1500円

詳しくは公益財団法人市川市文化振興財団(https://www.tekona.net/bunkakaikan/)へ。電話は(047‐379‐5111)