【レビュー】浅井忠たちが明治の京都に持ち帰った欧州の香り 「デザインの夜明け ー京都高等工芸学校初期10年ー」展 京都工芸繊維大学美術工芸資料館で12月17日まで

オーギュスト・レーデル《夜会「流浪の芸術家」ムーラン・ルージュ》1897年

京都高等工芸学校開校120周年記念特別展 デザインの夜明け ―京都高等工芸学校初期10年—
会場:京都工芸繊維大学美術工芸資料館(京都市左京区松ヶ崎橋上町)
会期:2022年10月3日(月)〜12月17日(土)
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:日曜・祝日
アクセス:市営地下鉄烏丸線「松ヶ崎駅」下車1番出口から徒歩約8分
入館料:一般200円/大学生150円/高校生以下無料
詳しくは(https://www.museum.kit.ac.jp/)へ。

学びのために最先端のデザインを渉猟

京都市街の北部に位置する国立大学法人で、「知と美と技」の探求をモットーに、科学、芸術と幅広くユニークな人材を輩出している京都工芸繊維大学。今年は、その前身校のひとつである京都高等工芸学校が明治35年(1902)に開校してから120年の節目にあたり、本展はその記念展です。

 

同校は京都の伝統工芸の近代化を理論的、技術的にバックアップすることをめざし、地元の伝統産業の担い手たちが設置を望んで発足しました。浅井忠、武田五一、牧野克次、都鳥英喜…という当時の錚々たる教員陣の顔触れをみても、いかに力が入っていたかが想像できます。

本展で紹介される作品は、浅井ら初期の教員がヨーロッパから持ち帰ってきたポスターなどの参考資料です。折から19世紀末から20世紀初頭のベル・エポックの時代で、ロートレック、ミュシャ、ジュール・シェレらが活躍したポスターの絶頂期。見応えのある作品がたっぷり楽しめます。

ロートレック、ミュシャらスターの作品ずらり

アンリ・ド・トゥールーズ・ロートレック 『歓楽の女王』 1892年

ロートレック(1864‐1901)のポスターの代表作のひとつ。

ジュール・シェレの作品がずらり

華やかな女性を大きく描き、手描き風の文字を大胆にあらしったジュール・シェレ(1836‐1932)のポスターも一世を風靡しました。当時の教員たちもシェレの作品に注目したようで、多くの作品がコレクションされています。

ジュール・シェレ 《ル・モンド・アルティスト誌》1891年
(右)ジョルジュ・ムニエ 《ロックス/素晴らしい食前酒》1895年、(左)アルベール・アンドレ・ギョーム 《J.V.ボンの歯磨》1895年頃

おしゃれな商品広告。今見ても見事なデザインのものばかりです。

人気のミュシャの作品も見られます。さすがの存在感。

アルフォンス・ミュシャ 《リジ―》1901年頃

クリムトのポスターも

クリムトで知られるウィーン分離派展のポスターも目を引きました。建築家の武田五一(1872‐1938)がヨーロッパ留学時にウィーンに立ち寄り、その際に収集したものと見られます。さすがに洗練されたデザインです。

グスタフ・クリムト《第1回ウィーン分離派展》1898年
ヨーゼフ・マリア・オルピリヒ《第2回ウィーン分離派展》1898年

ヴェネチア・ビエンナーレのポスター

(左)アウグスト・セザンヌ《第4回ヴェネツィア市国際美術展》1901年頃、(右)ジョヴァンニ・マリオ・マタローニ《美術収集家・愛好家協会 第1回版画国際博覧会》1902年頃

上の写真の左側の作品は、1895年に始まったイタリアの芸術の祭典、ヴェネチア・ビエンナーレの公式ポスターです。こちらも浅井忠が収集したものだと考えられています。日本で掛図に仕立てられて資料として使用されたとみられ、そのままの形態で保存されています。

浅井忠らの作品も展示

当時の教員や生徒らの作品も紹介しています。浅井忠の《武士山狩図》はとりわけ見事でした。

浅井忠《武士山狩図》1905年

ヨーロッパの最新のアートを導入しつつ、明治の京都で培われた「デザインの夜明け」を想像させる展示の数々です。見応えのある作品が並びます。ぜひお立ち寄りください。

(美術展ナビ編集班 岡部匡志)