草刈民代さん、パリ・オペラ座展に感銘 「私たちの感覚を刺激してくれる舞台芸術の最高峰の姿」 BS朝日で12月11日放送

オペラ座を描いたマネの作品と草刈民代さん

番組『アーティゾン美術館「パリ・オペラ座ー響き合う芸術の殿堂」』でナビゲーターを務める草刈民代さんと、番組コンシェルジュの市川猿之助さん

番組名:アーティゾン美術館「パリ・オペラ座ー響き合う芸術の殿堂」
放送時間:BS朝日 2022年12月11日(日)21:00~23:00
番組ホームページ(https://www.bs-asahi.co.jp/artizon2022/

東京・京橋のアーティゾン美術館で開催中の「パリ・オペラ座ー響き合う芸術の殿堂」を紹介するBS朝日の番組に、ナビゲーターとして出演する草刈民代さんにインタビューしました。オペラ座でバレエのレッスンを受けた経験もある草刈さんは「すべてにおいて最高峰である劇場の姿を、たくさんの方に見てほしい」と語りました。(聞き手・美術展ナビ編集班 岡部匡志)

「価値の理解」こそが文化

Q 展覧会をみた感想はいかがでしたか?

A 普通の展覧会とは違い、ヨーロッパにおける舞台芸術の最高峰であるパリ・オペラ座の歴史を様々な角度から教えてくれる内容。バレエの歴史の重要なポイントに関わっているものも展示されていて、とても興味深く拝見しました。

Q やはりオペラ座と言えばまずバレエですね。

A まず、そもそも劇場の成り立ちの違いを改めて感じました。日本だと劇場とは多目的ホールであるところが多く、舞台芸術は上演が終われば消えてなくなってしまいます。その点、ヨーロッパの劇場は資料を所蔵して歴史を記録する役割も果たしています。オペラ座はその意味でも最高峰。例えばロマンティック・バレエの時代を代表するプリマ、マリー・タリオーニ(1804-1882)の自筆の手紙が見られたのには驚きました。彼女は初めてトゥ・シューズを履き、つま先で立って踊ったことで知られていますが、「劇場にトゥ・シューズを頼んだのだけど、期日までにもらえなかったので、自費で頼んだ靴を履かなければならなかった」などという内容でした。

エドガー・ドガ《踊り子》1873年頃 石橋財団アーティゾン美術館

Q 細かいやり取りの手紙まで残しているのには驚きました。

A 彼女のトゥ・シューズもありました。それを見ることで、後世の私たちは彼女がどんな感じで踊っていたかを想像することもできるのです。芸術の価値、人の価値を分かっていることが、一世を風靡したスターの資料をきちんと残していることに現れていると思いました。価値の理解が文化なんだ、と実感しますし、保存してくれたから、こういう展覧会も開くことができるのです。

Q ロマンティック・バレエの時代に続く、20世紀初頭の「バレエ・リュス」の時代の展示も充実していました。

A 天才興行師のディアギレフの資料や、「火の鳥」、「シェエラザード」などの舞台の絵画が印象的でした。先立つ印象派の時代とは違って、絵画は具体的で色彩は華やか。当時の時代や舞台の雰囲気をよく表していると思いました。リュスの時代はココ・シャネルなど色々なアーティストが舞台に関わっています。短期間の間に、どれだけ表現の幅が広がったかもよく分かります。

展示風景。左はジャック=エミール・ブランシュ《『火の鳥』のタマラ・カルサヴィナ》1910年頃 パリ、フランス国立図書館蔵

あらゆることが「最高峰」の劇場

Q 草刈さんは実際にパリのオペラ座でレッスンを受けたことがあります。いかがでしたか。

A 2007年の終わりごろ。キャリアの終わりの時期で、「瀕死の白鳥」という短い作品を習いました。3人の先生にレッスンを付けてもらい、まさかオペラ座で稽古できると思わなかったので、中を見られてよかったです。実際に稽古してみて、最高峰とは何か、ということが分かりました。システムがすべてが整っていて、その整い方のレベルが違う。着替えるときの更衣室や、鍵を戻す場所は、というような日常的なひとつひとつが徹底的に整っているのです。

レッスンのレベルの高さも素晴らしかったです。オペラ座の先生はほとんどがオペラ座のバレエ学校を出ており、みんな同じ教育を受けてきているのに、クラスはひとつひとつ個性が全然違う。土台は一緒なのに個性が違う、というのが明らかにわかって。それがフランスのオペラ座の強固な土台の上に成り立っているバレエの文化なのだと。

エドガー・ドガ《踊りの稽古場にて》に見入る草刈さん

バレエファン、オペラファンは必見!もっと幅広く楽しめる

Q 番組を楽しみにしている方に向けてメッセージをお願いします。展覧会の予習や復習で視聴する人も多いと思います。

A まずバレエやオペラが好きな方には特におすすめです!本や舞台で目にしたことがあるようなテーマでも、充実した絵画や資料を見ることで、さらに深く理解することができます。特にバレエを学んでいる人は必見だと思います。

さらに「美術館で作品を鑑賞する」というと、「鑑賞」ということの幅を狭くとらえがちな方が多い気がします。今回はテーマとなった劇場自体にいろんな要素がありますから、単にアートという領域だけでなく、広がりをもって知識を得られると思います。舞台芸術、西洋史、西洋美術などに関心がある方も、ぜひみてほしいです。また、こちらのアーティゾン美術館も絵を見るだけでなく、ここにいることを自体を楽しめる空間になっています。私たちの感覚を刺激してくれる展示であり、美術館。ぜひ番組をみて、美術館にも足を運んでほしいです。

ジュール=ウジェーヌ・ルヌヴー《ミューズと昼の夜の時に囲まれ、音楽に魅せられた美の勝利(パリ・オペラ座円天井の最終案)》1872年 パリ、フランス国立図書館

<番組キャスト>
番組ナビゲーター 草刈民代
番組コンシェルジュ 市川猿之助
解説 三浦篤(東京大学大学院教授)