【プレビュー】3000年前の古代中国で生み出された奇想と超絶技巧の数々――「不変/普遍の造形―住友コレクション中国青銅器名品選―」 泉屋博古館東京で1月14日から

《虎卣(こゆう)》殷後期(前11世紀)泉屋博古館蔵

不変/普遍の造形―住友コレクション中国青銅器名品選―
会場:泉屋博古館東京(東京都港区六本木1-5-1)
会期:2023年1月14日(土)~2月26日(日)
休館日:月曜日
アクセス:東京メトロ南北線の六本木一丁目駅北改札正面 泉ガーデン1F出口から徒歩3分、日比谷線の神谷町駅4b出口から徒歩10分、銀座線・南北線の溜池山王駅13番出口から徒歩10分
観覧料:一般1000円、高校生・大学生600円、中学生以下無料
※問い合わせはハローダイヤル(050・5541・8600)へ。
※詳細情報はホームページ(https://sen-oku.or.jp/tokyo/)で確認を。

泉屋博古館東京のリニューアルオープンを記念する展覧会のパート4。世界屈指の呼び声高い住友コレクションの中国青銅器を一堂に会し、古代中国で生み出された奇想と超絶技巧の数々、さらにはその造形が後世の工芸に与えた影響まで、中国青銅器の「不変/普遍の造形美」を紹介する。難解なイメージをもたれがちな中国青銅器について、種類・用途・文様・モチーフ・金文・鑑賞の歴史など、さまざまな角度から丁寧に解説。かわいい動物の姿をかたどった器から一分の隙も感じさせないほど完璧に構築されたフォルムの器まで、予備知識なしに楽しめるポイントが目白押しだ。

《饕餮文平底爵(とうてつもんへいていしゃく)》殷前期(前14世紀)泉屋博古館蔵
《円渦文敦(えんかもんたい)》戦国前期(前5世紀)泉屋博古館蔵

展覧会は4章構成。第1章は、「神々の宴へようこそ」。今から約3000年前、日本では長かった縄文時代も終わりにさしかかった頃、中国大陸では殷や周といった古代王朝が栄え、高度な青銅器文化が発達した。中国の青銅器文化の最大の特徴は、神々に捧げるまつりのための器が発達したこと。なかでも、もっとも重視されていた祖先神をもてなす各種の器をつくるために、当時貴重だった青銅が惜しげもなく使われた。この章では、こうした性格をもつ中国青銅器のさまざまな種類を、その用途に着目して紹介する。日常生活ではまず使われることのない難読漢字も出てくるが、そうした名前がなぜつけられたのか、どういう意味があるのか、という点も詳しく解説する。

《戈卣(かゆう)》殷後期(前 12 世紀)泉屋博古館蔵
《螭文方炉(ちもんほうろ)》春秋前期(前8-7世紀)泉屋博古館蔵

第2章は「謎多き文様の世界」。中国青銅器の最大の特徴のひとつは、器の表面を埋め尽くすようにあらわされた文様やモチーフの数々。器の機能という観点からは説明しがたい繊細複雑な造形には、中国古代の人々の思想や信仰があらわれている。まつりのための器の表面を飾る文様であれば、さぞかしめでたい意味合いがあったと考えたくなるところだが、実は中国青銅器の文様は、後世に流行する吉祥文様とは違って異なり、人間にとって危険であるがゆえに聖性を帯びているという、「二面性」が特徴となっている。しかも、実在の動物をそのままあらわすのではなく、動物のパーツをさまざまに組み合わせて、この世ならざる文様をつくりあげるという、「キメラ」としての性格も認められる。この章では、中国青銅器の文様を「二面性」と「キメラ」という2つのキーワードで読み解き、中国古代の人々の豊かなイマジネーションの世界を探っていく。

《虎鴞兕觥(こきょうじこう)》殷後期(前13-12 世紀)泉屋博古館蔵
《犠首方尊(ぎしゅほうそん)》殷後期(前12-11世紀)泉屋博古館蔵

第3章は「古代からのメッセージ 金文」。青銅器の造形、文様の数々を一通り見た後は、器の内側を見てみよう。そこに深々と鋳込まれた文字は金文と呼ばれ、現在の私たちが使用している漢字の直接の祖先にあたる文字だ。この金文を通じて、中国古代の人々がどのような思いをこめて青銅器を鋳造していたのかを知ることができる。王から褒美をもらったこと、いくさで手柄を挙げたこと……そこに記されているのは、後世にまで伝えようと当時の人々が考えた事柄の数々。展示会場では釈文・現代語訳もつけて、それを丁寧に解説する。

《金銀錯獣形尊(きんぎんさくじゅうけいそん)》北宋(10-12世紀)泉屋博古館蔵
《鴟鴞尊(しきょうそん)》殷後期(前13-12世紀)泉屋博古館蔵

最終第4章は「中国青銅器鑑賞の歴史」。殷周青銅器に対する関心が高まったのは、宋の時代。徽宗皇帝の命で宮中の青銅器コレクションの調査がおこなわれ、その成果をまとめた図録『宣和博古図録』(泉屋博古館の名称の由来)が刊行されるなど、研究も大いに進展した。殷周青銅器を模した「倣古銅器」も数多く製造され、それらは交易を通じて中世日本にももたらされ、「唐物」として珍重されるようになった。この章では、中国青銅器の鑑賞の歴史と、それが日本の美術工芸品に与えた影響について詳しく見ていく。

《方格規矩四神鏡(ほうかくきくししんきょう)》前漢末(前1世紀)泉屋博古館蔵

今回の展覧会にあわせて、中国青銅器の3D 計測を実施。そのデータを用いたデジタルコンテンツを制作。現代のテクノロジーを活用した新たな中国青銅器の展示を公開する。また、国内では希少な中国青銅器の入門書も刊行予定。担当学芸員によるスライド解説トークや、講演会、実際に鋳造を体験することのできるワークショップまで、中国青銅器をさらに楽しむための各種イベントも予定されている。

(「美術展ナビ」取材班)

《饕餮文方罍(とうてつもんほうらい)》殷後期(前12-11世紀)泉屋博古館蔵