【奈良探訪】20年に一度の「式年造替」が復活した春日大社5番目の神「若宮様」とは?

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式年造替で朱塗りで鮮やかになった若宮の御本殿

奈良県奈良市の春日かすが大社の摂社・若宮わかみやで、この秋、20年に一度の式年しきねん造替ぞうたい(社殿の修復をおこない、神宝や調度品などを新調すること)が完了しました。10月28日には、祭神の若宮様が新しくなった本殿へ戻る「本殿遷座祭」が行われ、「神さまのお引っ越し」として全国に生中継されました。12月10日からは、近くの奈良国立博物館で「春日大社 若宮国宝展―祈りの王朝文化―」展が始まります。平城京の守護神や藤原氏の氏神として知られる春日大社ですが、若宮や若宮様について詳しい人はそれほど多くはないでしょう。様々な記念行事などについてレポート、さらに12月から始まる展覧会を紹介します。

平安時代に”誕生”した5番目の神様

藤原摂関家の氏神様をおまつりする春日大社本社本殿では、第一殿の武甕槌命たけみかづちのみこと、第二殿の経津主命ふつぬしのみこと、第三殿の天児屋根命あめのこやねのみこと、第四殿の比売神ひめがみと4柱の神様がまつられています。若宮様(天押雲根命あめのおしくもねのみこと)はこの4柱のうち、夫婦である天児屋根命と比売神との間に、平安時代中期の長保5年(1103年)に誕生した御子神みこがみ様です。

式年造替を終えた春日大社の「若宮」

当初は、一緒にまつられていましたが、平安時代後期の長承4年(1135年)に、長雨による飢饉や疫病が流行した際、若宮様の若々しい霊験にすがろうと、若宮が「大和の総鎮守」として平城京を見守るように西向きで創建されました。

毎年12月(12月15日~18日)に行われる若宮の例祭「春日若宮おん祭」は、創建の翌年・保延2年(1136年)から約900年間、一度も途切れることなく続いており、神楽や舞楽、田楽など古典芸能の宝庫として知られています。今でも、お渡り式(行列)がある17日は、市内の学校が午後から休み(半ドン)になるほどです。

参道の燈籠のはじまり

小西美術工藝社により奉納された戦国時代の記述に準じ、火袋が復元された燈籠

春日大社本社と若宮を結ぶ道の両脇には、鎌倉時代後半からたくさんの石燈籠が奉納されました。室町時代に奉納された全国の燈籠のうち、約3分の2がここにあり、今日までに奉納された約3000基の燈籠は質量ともに日本一です。社寺の参道に燈籠を並べる風習はここから始まったとされています。

20年に一度が復活

五所御子ごしょのみこ」と呼ばれる若宮様は、春日大社の5番目の神様であり、本社本殿にまつられる4柱と同格とされてきました。20年に一度の式年造替も、4柱がまつられる春日大社の本社本殿と同時に行われましたが、春日大社が明治政府の管理になった際に、若宮は春日大社の複数ある摂社のひとつという位置付けとなりました。

その後、若宮は20年に一度の式年造替が定まらなくなりましたが、ようやく今年から「20年に一度の式年造替」が復活することになり、さまざまな記念行事が行われているのです。「これを機に御本社格(本社本殿の4柱と同格)の神様である若宮様のことを多くの方に知っていただけたら」と春日大社広報の秋田真吾さんは話します。

さまざまな記念行事

10月1日~10日には「お砂持ち」(下の写真)が行われました。普段は神職でもみだりに立ち入ることができない若宮内院の神域に一般参拝者が立ち入って、白砂を運んで納める奉祝記念行事です。次に一般参拝者が立ち入れるのは20年後とのこと。

11月26日までの毎週土曜日には、奉祝万燈籠と夜間特別拝観がおこなわれています。春日大社では、3年前から秋の夜間特別拝観を行ってきましたが、今年は奉祝記念で初めて若宮も夜間に参拝可能に。

奉祝万燈籠では、若宮へ誘う約3000基の燈籠に灯りがともされるとともに、奈良の夏をろうそくの灯りで彩る「燈花会」とのコラボで境内にろうそくがともされます。秋田さんは、「若宮様1000年記念の奉祝行事以来、20年ぶりのコラボです。多くの方が来ています」と語ります。瑠璃色のガラス玉をつないだ六角黒漆塗りの釣燈籠「瑠璃燈籠」(下の写真の中央)が初めて若宮に吊るされており、青く清らかに輝く幽玄美も見逃せません。

「燈花会」とのコラボで若宮神社がろうそくの灯りで照らされている

開催:11月26日までの毎週土曜日
時間:17:30~20:00 (本社は17:00に一旦閉門/19:45受付終了)
特別参拝料: 無料(予約不要)
公式サイト(奈良市観光協会):https://narashikanko.or.jp/topics/syuyanonaratabi/

奈良博で初めての若宮様特別展

春日大社の旧境内地にある奈良国立博物館で特別展「春日大社 若宮国宝展―祈りの王朝文化―」が12月10日(土)から来年1月22日(日)まで開催されます。奈良博では毎年、「春日若宮おん祭」の企画展を開催していますが、若宮様にクローズアップした特別展は初めて。
春日大社には、藤原忠実ただざね忠通ただみち頼長よりながなど摂関家の奉納品が古神宝として伝わっています。平安時代最高峰の技術の粋をもって制作された、それらの奉納品を含む国宝「若宮御料古神宝類わかみやごりょうこしんぽうるい」19件すべてを含む国宝25件、重要文化財10件など、若宮様に関わる宝物が一堂に会します。

国宝 若宮御料古神宝類 金鶴及銀樹枝・銀樹枝 春日大社蔵

今回の式年造替では、平安時代作の古神宝である国宝「金鶴及銀樹枝」と国宝「銀鶴及磯形」が復元新調されました。
「金鶴及銀樹枝」を復元新調した「金鶴洲浜台」は、人間国宝(彫金の重要無形文化財保持者)桂盛仁さんと春日有職奈良人形師(一刀彫師) 太田佳男さんが制作しました。「銀鶴及磯形」(復元新調)も桂盛仁さんの制作です。この神宝は2組制作され、ひと組は神様に捧げるため誰の目にも触れず若宮に奉納され、もうひと組(下の写真)が奈良博の特別展で初公開されます。

特別展「春日大社 若宮国宝展―祈りの王朝文化―」
会期:2022年12月10日(土)~2023年1月22日(日)
会場:奈良国立博物館 東・西新館
休館日:毎週月曜日(ただし、1月2日[月・休]、1月9日[月・祝]は開館)
年末年始(12月28日~1月1日)、1月10日(火)
開館時間:9時30分~17時 ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般1600円、高大生1400円、小中生700円
展覧会公式サイト:
https://www.narahaku.go.jp/exhibition/special/special_exhibition/202212_wakamiya/

「杉本博司」展も春日大社国宝殿で

さらに春日大社国宝殿では、12月23日(金)から特別展「杉本博司-春日神霊の御生(みあれ)御蓋山そして江之浦」が開催されます。現代美術作家の杉本博司氏による春日をテーマとした大作が公開されます。仏教美術、神道美術に深い関心を持ち、なかでも春日美術への造詣が深く、春日明神への崇敬が篤い杉本氏。
「神霊は眼には映らない。それはただ気配としてあるのみだ。そしてその気配は、時に芸術に秘そむこともある」とする杉本氏が設立したアート施設「江之浦測候所」(神奈川県小田原市)には今年3月、春日大社から御祭神を勧進し「甘橘山 春日社」が創建されました。同施設は、ギャラリー棟、野外の舞台、茶室などで構成され、国内外への文化芸術の発信地として期待を集めています。
本展は、「甘橘山 春日社」の創建、そして若宮の式年造替が完了を奉祝する展覧会として開催されます。

特別展「杉本博司-春日神霊の御生(みあれ)御蓋山そして江之浦」
会期:2022年 12 月 23 日(金)~2023 年 3 月 13 日(月)
会場: 春日大社 国宝殿
休館日: 1 月 30 日(月)
開館時間:10時~17時(入館終了 16時30分)
拝観料: 一般 1000 円、 大学生・高校生 600 円、 中学生・小学生 400 円
公式サイト: http://www.kasugataisha.or.jp

(ライター・いずみゆか)