【プレビュー】浮世絵と「百人一首」って、どんな関係?――すみだ北斎美術館で企画展「北斎かける百人一首」 12月15日から

企画展「北斎かける百人一首」 |
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会場:すみだ北斎美術館(東京都墨田区亀沢2-7-2) |
会期:2022年12月15日(木)~2023年2月26日(日) |
休館日:月曜休館、ただし1月2、3、9日は開館し、4、10日が休館。年末年始は12月29日~1月1日が休館 |
アクセス:JR両国駅東口から徒歩9分、都営地下鉄大江戸線両国駅A3出口から徒歩5分 |
観覧料:一般1000円、高校生・大学生700円、65歳以上700円、中学生300円、障がい者300円、小学生以下無料 |
※前期(~1月22日)、後期(1月24日~)で展示替えあり。 詳細情報はホームページ(https://hokusai-museum.jp/)で確認を。 |
江戸時代の半ば頃には、庶民の一般教養となっていた「百人一首」。その歌の数々は、狂歌のモチーフとなり、草双紙や浮世絵の「見立て」に使われるようにもなり、より人々に親しまれるようになったのである。葛飾北斎最後の大判錦絵シリーズ「


〈『百人一首』の成立〉を序章とする展覧会は、〈第1章 『百人一首』の普及〉〈第2章 『百人一首』の発展〉〈第3章 描かれた『百人一首』〉の3章構成。江戸時代中期、解説付きの書物が数多く出回るようになった「百人一首」は、手習いの見本に取り入れられるなど、一般教養として広く浸透した。さらにポルトガルから伝来した「カルタ」と結びつき、より親しまれる存在となった。第1章では、教材やかるたなどを通じ、江戸時代の人々がどんなイメージを「百人一首」に抱いていたか、「百人一首」とどのように親しんでいたか、を紹介する。『日用雑録婦人珠文匣 秀玉百人一首小倉栞』は『百人一首』の絵入りの注釈書で、女性の教養書として出版された。挿絵を担当したのが、浮世絵師の溪斎英泉だ。北斎の「美人カルタ」には、 6人の美女が百人一首かるたの「散らし取り」をしている様子が描かれている。下は、北斎の門人・抱亭五清による肉筆画。美人の着物の帯はかるた札を散らしたような文様が描かれており、「百人一首」や「拾遺和歌集」の歌が確認できる。


一般庶民にも浸透した『百人一首』は、様々な形でさらに広く、世間へ浸透していく。収録されている歌をもじった狂歌や、歌人の姿になぞらえて描かれた作品、1つのジャンルで優れたものを100選ぶ形式を利用した書物……。第2章では、これら「百人一首」から派生した作品を特集する。上に挙げた北斎の「楊枝屋店先」は、楊枝屋の店先の様子を描いた申年の摺物(すりもの)。摺物とは、趣味人がお金を出し合い制作したプライベートな配り物だ。当時、楊枝屋を「さるや」と呼んでいたことに因んで、店の奥には楊枝を持った猿が描かれ、「百人一首」の歌人・猿丸大夫をもじった狂歌も添えられている。


「百人一首乳母かゑとき」は、「冨嶽三十六景」や「諸国名橋奇覧」に続いて制作された北斎最後の大判錦絵シリーズだ。「百人一首」の歌の意味を大人が子どもに説明する主旨で企画され、「乳母が絵解きをする」という意味で、名前が付けられている。第3章ではこのシリーズのうち、すみだ北斎美術館が所蔵する錦絵23図を前期・後期にわけて展示。さらに、北斎や門人が、紫式部や西行など『百人一首』の歌人をモチーフに描いた作品を紹介する。
北斎の「百人一首乳母か絵説 在原業平」は、在原業平の歌を主題に、江戸時代の人々が、紅葉の名所として知られる竜田川の景観を楽しむ様子が描かれる。北斎は水面のうねりを誇張し、山や橋の曲線と呼応するように表現。和歌では「紅葉が流れる竜田川の景色」に主眼がおかれているが、この絵では人々の表情や動きに焦点が当てられる。

また、「五歌仙 月」は、北斎が
オリジナル・リーフレットの販売、スライドトークの実施など、展示以外の「お楽しみ」も目白押し。詳しい情報は、上記ホームページで確認を。
(「美術展ナビ」取材班)
