【プレビュー】「祈り・藤原新也」11月26日(土)から、世田谷美術館で

写真家の藤原新也さん(1944年~)の50年以上に及ぶ表現活動を俯瞰する初の大規模個展「祈り・藤原新也」が11月26日(土)から、東京・世田谷美術館で開かれます。主要な仕事を時系列で紹介する回顧展ではなく、「祈り」というキーワードに沿って、現在の視点から藤原さん自身が改めて厳選・編集し、新たなストーリーを持たせた展示となっています。大きいものでは3㍍の大画面に引き伸ばされた写真に、本展のために書き下ろされた文章が美しいレイアウトで添えられています。広い空間に大迫力の写真と言葉が並び、書籍や写真集で<読む>のとは一味違う鑑賞体験ができそうです。
藤原さんは、東京藝術大学在学中に旅したインドを、写真とエッセイを組み合わせて紹介した『インド放浪』で1972年にデビューし、若者たちから熱い支持を集めました。続いてアジアを旅した『西蔵(チベット)放浪』、『逍遥游記(しょうようゆうき)』を発表。1983年に出版された単行本『東京漂流』は、鋭い視点で社会をえぐりベストセラーとなり、同年に発表された『メメント・モリ』も、若者を中心に多くの人から受け入れられました。

1989年には、アメリカを起点に西欧へと足をのばし、帰国後は自身の少年時代を過ごした福岡県の門司港で撮影した『少年の港』をはじめ、日本を被写体に選んできました。

そして最近にかけては、2011年の東日本大震災直後の東北を歩いたり、コロナ禍で無人となった街に立ったりして、これまでの道程と人への思いを「祈り」というタイトルに込めました。

藤原さんの表現活動で特筆すべきは、写真、文筆、絵画、書と様々な表現方法を縦横無尽に使い、それぞれの領域で秀でていることです。本展は、祈りをキーワードに、初期作から最新作までの作品を一堂に展示して、<藤原新也>の多彩な仕事を立体的に振り返ることができそうです。(美術展ナビ編集班)


<藤原新也 プロフィール>1944年福岡県門司市(現 北九州市)生まれ。東京藝術大学絵画科油画専攻に入学後、アジア各地を旅し1972年に処女作『インド放浪』を発表。第3回木村伊兵衛写真賞、第23回毎日芸術賞を受賞。著書に『全東洋街道』、『東京漂流』、『メメント・モリ』、『アメリカ』、『渋谷』、『コスモスの影にはいつも誰かが隠れている』、『日々の一滴』など。写真集に『少年の港』、『千年少女』、『花音女』、『神の島 沖ノ島』(共著)などがある。
「祈り・藤原新也」 |
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会場:世田谷美術館(東京都世田谷区砧公園1-2) |
会期:2022年11月26日(土)〜2023年1月29日(日) |
休館日:毎週月曜日。年末年始(12月29日~1月3日) ※ただし2023年1月9日(月・祝)は開館、1月10日(火)は休館 |
開館時間:10:00〜18:00(最終入館時間 17:30) |
観覧料:一般:1,200円、65歳以上:1,000円、大高生:800円、中小生:500円 |
詳しくは同展サイト |