【プレビュー】「光の芸術家 ゆるかわふうの世界 宇宙(そら)の記憶」11月12日から、横浜・そごう美術館で

光の芸術家「ゆるかわふう」は、建築物の内側に使われる発泡断熱材を使った、「光彫り」という世界初のオリジナル技法を駆使して作品をつくります。断熱材の背後からLED(発光ダイオード)照明を当て、表面を金属ブラシで削ったり、はんだごてやシンナーで溶かして凹凸をつけ、その彫り具合で濃淡を作り、光と陰影を表現します。

壁や床の中に埋め込まれ、ふだんは目にすることがない断熱材ですが、東京芸大で建築を学んだ「ゆるかわふう」にとっては、建築模型を作るための材料として身近なものでした。
ある時、断熱材の背後から白い光を当ててみたところ、浮かび上がった美しく鮮やかな「青」が、趣味のダイビングで魅せられていた海中の「青」のイメージに重なったそうです。絵の具では表現できない透明感のある奥行きが表現できる、この画材と技法の発見によって、絵画でも彫刻でも映像でもない、唯一無二の「光彫り」は誕生しました。
さらに昨年からは、「光彫り」を不透明なアクリルでカバーし、その光のトーンを靄がかかったようにぼかした新シリーズを発表しています。
今回の展覧会では、高さ約1.8㍍、幅約5㍍の大作をはじめ、新作を含めた約30点が展示されます。暗い会場に「光彫り」によって描き出される海や空や生き物の風景は幻想的です。
展示は、「海エリア」、「羽衣伝説エリア」、「空エリア」などで構成されます。


「海エリア」では、クジラやウミガメなど海で暮らす動物を描いた作品を展示しています。断熱材の素材が持つ色彩を活かして、青く輝く海の世界を表現しています。


「羽衣伝説エリア」では、月、天女、白鳥、松など羽衣伝説をテーマにした作品を集めています。《天の羽衣》は羽衣をまとった天女が空から舞い降りてくる姿を描いています。モデルは藤田ニコルさんで、本格的な大作品として人間の女性を初めて描いた作品です。上下を比べると、光で作品が繊細に美しく輝くのが分かります。

「空エリア」は、「光彫り」をさらに発展させて制作した新シリーズを展示します。種類の違う断熱材を組み合わせて、時間や季節によって変化する空を緻密に表現しています。

そのほかオレンジ色の断熱材は光を当てると黄金のように美しく輝きます。
「ゆるかわふう」の「光彫り」への探求は続きます。(読売新聞美術展ナビ編集班・若水浩)
光の芸術家 ゆるかわふうの世界 宇宙の記憶 |
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会場:そごう美術館(横浜駅東口・そごう横浜店6階) |
会期:2022年11月12日(土)~12月25日(日) |
休館日:会期中無休 |
開館時間:午前10時~午後8時 ※入館は閉館の30分前まで |
入館料:一般1,200円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料 |
詳しくは同館サイト |