谷原章介さん「兵馬俑と古代中国」で東京展限定・音声ガイドを担当 「作り手の思いを会場で」

11月22日(火)に上野の森美術館で開幕する「兵馬俑と古代中国」。東京展限定で展覧会ナビゲーター&音声ガイドを務めるのは、俳優、ニュースキャスターなど幅広く活躍する谷原章介さんです。谷原さんは、2014年に「台北 國立故宮博物院ー神品至宝ー」の音声ガイドも担当し、古代中国にはとりわけ関心を抱いてきたそうです。谷原さんに本展への期待を聞きました。
(聞き手 読売新聞美術展ナビ編集班・美間実沙)
幼いころ憧れた古代中国

――古代中国にはどんな印象を?
古代中国は、子供の頃に憧れた世界です。PC-98版のシュミレーションゲーム「三國志」シリーズにハマって、その世界観をどんどん好きになっていきました。秦の始皇帝について学校で習ったときは、「こんなにすごい人がこの世にいたんだ」と感動したと同時に、畏怖の念を抱いた覚えがあります。
――始皇帝陵の兵馬俑だけ等身大だったのはなぜだと想像する?
開幕前日に監修者の先生と一緒に鑑賞する予定なので、その点は第一人者にとことん聞きたいですね(笑)。
あくまで僕の想像ですけど、あの広大な国を初めて統一した始皇帝ですから、きっと自分の偉大さを死後も喧伝し続けたかったのだと思います。等身大かつ精巧な兵馬俑は、絶大な権力を誇示する方法の一つだったのではないでしょうか。兵馬俑を見ると、これだけのことを成し遂げられた権力、財力がひしひしと伝わってくるでしょうね……。鑑賞するのが楽しみです。

――兵馬俑のほかに見てみたいものは?
「王精」龜鈕金印です。「印」といえば『キングダム』で登場する玉璽を連想します。皇帝の「印」ですからとても大事なもので、反乱のときに隠したり、複製されたりするんですよ。キングダムの玉璽と「王精」、どちらもロマンを感じます。

落ち着いた語りを意識

――収録で気をつけたことは?
鑑賞している方の耳元で、「これはね、こうこうで、こうですよ」と静かに語りかけるイメージで収録しました。本展で展示されるのは、悠久のときを経て生き残った国宝級の文物で、一級の美術品でもあります。静謐な環境で鑑賞したい方に寄り添うために、落ち着いたトーンを意識しました。
約30年前に見たヘンリー・ダーガーが記憶に
――印象に残っているアート体験は?
約30年前、世田谷美術館で開催された「パラレル・ヴィジョン―20世紀美術とアウトサイダー・アート」(1993年)を訪れたことです。特にヘンリー・ダーガー『非現実の王国で』(※)の挿絵など、西洋のアウトサイダー・アートが印象に残りました。どことなくキリスト教的な要素を含んでいて、作り手がそこに救いを求めていると感じずにはいられなかったのです。「作る」という衝動を昇華させたいだけではなく、救われたいんだなと思うと、切なくなりました。
※子供奴隷制をもつ軍事国家と7人の少女戦士が死闘を繰り広げる物語。約300枚の挿絵と1万5000ページ以上のテキストからなる。ヘンリー・ダーガーが19歳のときから約60年かけて書き上げた本作は、死後に発見された。
作り手の思いの「結晶」
――読者にメッセージを。
モノを作った人たちの思いは、今回展示される文物の中にも注ぎ込まれているはず。作り手の思いの結晶を、会場で直接見ていただきたいです。また中国は、当時の世界でとりわけ国力が強く、僕たちの文化の一端を作った国でもありますから、そのスケールの大きさも実感していただきたいです。
歴史背景を理解しなくてもいいと思うんです。「なんかすごい!」でもいい。とにかく楽しんでいただきたいです。もちろん、深く知りたい方には音声ガイドがおすすめです(笑)。鑑賞の妨げにならないよう頑張りましたので、ぜひ聞いてください!

【谷原章介プロフィール】
1972年7月8日生まれ、神奈川県出身。 A型。 1992年に雑誌『メンズノンノ』の専属モデルとして活動を始める。1995年に俳優デビュー。以降、数多くのドラマ、映画に出演するだけでなく、CM、ナレーション、司会などでも大活躍。フジテレビ系「めざまし8」のメインキャスターとしても人気を博している。趣味は、料理、スポーツ観戦など。
日中国交正常化50周年記念 兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~ |
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会期:2022年11月22日(火)〜2023年2月5日(日) |
会場:上野の森美術館 (東京都台東区上野公園1-2 ) |
開館時間:9:30~18:00 ※入館は閉館の30分前まで |
観覧料:一般:2,100円/高校・専門・大学生:1,300円/小・中学生:900円 |
休館日:2022年12月31日(土)、2023年1月1日(日) |
アクセス:JR 上野駅 公園口より徒歩3分 |
詳しくは展覧会公式サイトへ。 |
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