人物、錦絵、遺構と見どころ豊富 「鉄道開業150周年記念 人物でみる日本の鉄道開業」 港区立郷土歴史館で12月18日まで

《東京汐留鉄道御開業祭礼図》(左)歌川広重(三代) 明治5(1872)年など、鉄業開業を描いた華やかな作品が並びます

鉄道開業150周年記念 人物でみる日本の鉄道開業
会期:2022年10月14日(金)~12月18日(日)
会場:港区立郷土歴史館(東京都港区白金台4‐6-2 ゆかしの杜内
開館時間:午前9時~午後5時(土曜日のみ午後8時まで)※入館受付は閉館の30分前まで
観覧料:特別展のみ  大人400円/小・中・高校生200円
常設展セット 大人600円/小・中・高校生200円
アクセス:東京メトロ南北線・都営三田線 白金台駅 2番出口徒歩1分
休館日:10月20日(木)、11月17日(木)、12月15日(木)
詳しくは同展ホームページ(https://www.minato-rekishi.com/exhibition/railway150.html)へ

明治5年(1872)年、新橋~横浜間に日本の最初の鉄道が開業してから今年で150年の節目。各地で記念の催しや展示が行われています。新橋駅などの鉄道発祥の地である東京・港区にある同歴史館でも、興味深い展覧会が開催されています。

昭和13年に建てられた「旧公衆衛生院」(港区指定文化財)の中に港区立郷土歴史館があります。ゴシック調の建築も見応えがあります。
建設当初の姿がよく保存されている中央ホール。床や石に石材が多数使われていて、高級な仕上げになっています。

一大国家行事だった鉄道開業

「人物でみる」というタイトルのとおり、日本の鉄道の黎明期に関わった人たちにスポットを当てた展示です。

福沢諭吉や江藤新平、大隈重信、伊藤博文、岩倉具視、渋沢栄一、井上勝ら大立者が鉄道に関わりました。当初は鉄道より軍備を優先すべし、という声も多く、西郷隆盛は鉄道建設反対派の中心人物だったそうです。

鉄道開業式の特別列車の座席表も目を引きます。明治天皇をはじめ有栖川宮熾仁親王、三条実美、西郷隆盛、大隈重信、板垣退助、江藤新平、井上馨、山形有朋、勝海舟、陸奥宗光、渋沢栄一など錚々たるものです。アメリカやイタリア、オーストリア、スペイン、フランスなどの公使らも乗っていました。まさに国家的行事だったことがよく分かります。

賑やかな鉄道錦絵も豊富に

月岡芳年や小林清親、歌川芳虎らの鉄道錦絵が豊富に展示されています。

《東京名勝高輪 蒸気車鉄道之全図》月岡芳年 明治4(1871)

「明治4年」作で、つまり鉄道が開業する前に名手・芳年が想像で描いた作品。鉄道は絵師の創造力を刺激し、また鉄道の絵へのニーズが高かったということなのでしょう。それほど鉄道開業は人々にとって大きな出来事だったということが実感できます。

当時の地図も展示されています。東京湾が大規模に埋め立てられた現在では想像しにくいですが、当時の路線がいかに海沿いを走っていたかがよく分かります。

「高輪築堤」、特に手厚く

高輪築堤は、日本で最初の鉄道の開業した際、海上に線路を敷設するために築かれた構造物です。鉄道建設に反対する兵部省が高輪周辺の土地の測量を拒んだため、約2・7㎞の区間は海上に築堤を建造し、その上に列車を走らせました。東京湾の埋め立てで姿を消していましたが、高輪ゲートウェイ駅新設に伴う開発で約100年ぶりに姿を現しました。調査の状況などを紹介しています。

築堤のジオラマ。当時の様子がリアルに想像できます。

発掘調査の状況が写真付きで詳しく報告されています。

高輪築堤から出土したレールや枕木も。

屋外には築堤を構成した杭や石材も展示されています。創成期の鉄道はこうした素材に支えられていたのですね。

プラレールの展示もあります。

150年前の鉄道をとりまく熱気が伝わってくる展示。リアルなテーマに沿って明治の元勲らも次々と登場し、歴史の学びにも大いに生かせそう。大人はもちろん、お子さんも一緒にいかがでしょう。(美術展ナビ編集班 岡部匡志)