【プレビュー】動物画だけじゃない! おうこくさんの豊かな山水画の世界にスポット「木島櫻谷 -山水夢中ー」 泉屋博古館で11月3日開幕 

《寒月》左隻 大正元年(1912) 京都市美術館蔵【展示期間11/3-11/16】

特別展 木島櫻谷 -山水夢中ー

  • 会期

    2022年11月3日(木)12月18日(日) 
  • 会場

    泉屋博古館
    https://sen-oku.or.jp/kyoto/
    京都市左京区鹿ヶ谷下宮ノ前町24
  • 観覧料金

    一般1,000円 高大生800円 中学生以下無料

    ※20名以上は団体割引20%

    ※障がい者手帳ご提示の方はご本人および同伴者1名まで無料

  • 主催

    公益財団法人泉屋博古館 公益財団法人櫻谷文庫 BSフジ ライブエグザム 京都新聞
  • 休館日

    月曜日

  • 開館時間

    10:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
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巡回情報 泉屋博古館東京 2023年6月3日(土)~7月23日(日)

近代の京都画壇を代表する日本画家、木島櫻谷(このしま・おうこく、1877-1938)。近年とりわけ動物画で注目され、再評価が進んだおうこくさんですが、生涯、飽くことなく描き続けた山水画もその画業の中核を成すものです。本展では多彩なその作品群にスポットをあて、豊富なスケッチなどを通じてその制作に至る歩みに迫ります。展覧会の構成にそって見どころを紹介します。

<写生に熱中したおうこくさん>

20代から30代にかけて、櫻谷は飛騨や富士、若狭、大分など全国各地へ頻繁に写生旅行に出かけています。膨大な数の写生帖が残されており、海や山、川などの風景はもちろん、民家や民具、働く人々まで鮮やかに記録されています。その高い技術と筆の速さにも驚きます。作品を見るような迫力と完成度を写生帖の展示で楽しめます。

《兵庫・明石写生》写生帖より 明治38年(1905年)櫻谷文庫蔵
《山梨・古関写生》写生帖より 明治41年(1908) 櫻谷文庫蔵
《福井・浦見川写生》写生帖より 明治38年(1905) 櫻谷文庫蔵
《福井・和田浜写生》写生帖より 明治38年(1905)櫻谷文庫蔵

高い写生技術は京都画壇の重鎮、今尾景年(1845-1924)に学びました。また晩年を京都で過ごし、櫻谷も親しく交流した明治洋画の先駆者、浅井忠(1856-1907)の影響も考えられます。

《岐阜・飛騨 写生中の画友》写生帖より 明治39年(1906) 櫻谷文庫蔵
《富士山写生》写生帖より 明治41年(1908) 櫻谷文庫蔵

<写生から山水画へ>

写生を踏まえた山水画も若い時期から制作しています。その集大成と言えるのが明治43年に制作した二つの大作で、幅11メートルの大屏風《万壑烟霧(ばんがくえんむ)》(株式会社千總)と、南禅寺塔頭の南陽院本堂5室にわたる障壁画(11月から限定特別公開)です。部分部分には元になった写生のモチーフを確認できるところもあります。しかし全体としてはどこにも存在しない、櫻谷の豊かな想像上の空間が創作されています。

《万壑烟霧》左隻 明治43年(1910) 株式会社 千總蔵
《万壑烟霧》右隻 明治43年(1910) 株式会社 千總蔵

南陽院の障壁画について詳しくは下記のルポ記事をご覧ください。


西洋絵画的な遠近感の表現も特徴です。こちらも浅井忠の影響が感じられます。

《富士図屛風》左隻 明治 個人蔵【展示期間11/3-12/4】
《富士図屛風》右隻 明治 個人蔵【展示期間11/3-12/4】

<写生の深化 ーー色彩の時代>

壮年期、さらに表現が深まった時代の代表作である《寒月》を紹介します。一見シンプルな水墨画のようにみえて、様々な色彩を駆使しています。技法といい、自然の本質を見極める眼力といい、比類のない境地に達しています。

《寒月》左隻 大正元年(1912) 京都市美術館蔵 【展示期間:11/3-11/16】
《寒月》右隻 大正元年(1912) 京都市美術館蔵 【展示期間:11/3-11/16】
《幽渓秋色》大正時代 泉屋博古館東京蔵 【展示期間:11/17-12/18】

<画三昧へーー理想郷を求めて>

櫻谷は50歳前後から公職を退き、衣笠の自邸で文人的な暮らしを実践するようになりました。まさに画三昧の境地だったといえるでしょう。

《画三昧》昭和6年(1931) 櫻谷文庫蔵
《峡中の秋》 昭和8年(1933) 櫻谷文庫蔵

おうこくさんの作品世界への理解を一層深めることになりそうな大規模展。初公開の作品も多数登場します。おうこくさんが写生した眺望が具体的にどこの場所であるかを、SNS上で特定していくハッシュタグ、「#おうこく足跡探訪」など楽しい企画も始まっています。南陽院障壁画の特別公開も含めて、ぜひ秋の京都で「おうこく三昧」を体験してほしいです。

(美術展ナビ編集班 岡部匡志)