【レビュー】「特別展 独眼竜 伊達政宗」福岡市博物館で11月27日まで 伊達家の秘宝が仙台から九州上陸!

奥州・仙台藩62万石の基礎を築き「独眼竜」の名で知られている伊達政宗(1567~1636年)。今でも人気の高い、この戦国武将をテーマにした展覧会「特別展 独眼竜 伊達政宗」が、10月8日から11月27日まで福岡市博物館で開催されています。

「特別展 独眼竜 伊達政宗」
会期:2022年10月8日(土)~11月27日(日)
会場:福岡市博物館(福岡市早良区百道浜3-1-1
開館時間:午前9時30分~午後5時30分(入館は午後5時まで)
観覧料:一般1,600円/高大生1,200円/小中生500円
休館日:月曜日
詳しくは展覧会公式サイト(https://rkb.jp/event/masamune/)へ
専門学校生たちが本展公式キャラクターとして制作した伊達政宗と黒田長政、立花宗重がお出迎え

伊達政宗のお膝元である仙台市博物館とかねてから交流があったという福岡市博物館。現在長期休館している仙台市博物館の大規模改修中に、伊達政宗と伊達家の”お宝”を借り受けて実現したのが、今回の展覧会です。福岡初公開となる政宗所用と伝わる甲冑「黒漆五枚胴具足」をはじめ、政宗直筆の手紙や愛用の武具、家臣である支倉常長が持ち帰ったとされる国宝などが展示されています。

織田信長の密書も! 伊達の存在感が伝わる史料

冒頭には、奥州の名家であった伊達氏にまつわる展示がずらり。伊達氏の第一世が奉納したとされる軍配や、織田信長が伊達輝宗(政宗の父)に送ったとされ、「天下布武」の朱印もみえる密書「織田信長朱印状」など、伊達氏の戦国大名としての存在感の高さをうかがわせます。

「金塗軍配団扇」室町時代 仙台市博物館蔵
重要文化財「織田信長朱印状」天正5年(1577)閏7月23日 伊達輝宗宛  仙台市博物館蔵

ゴールドがまばゆい! 「派手好み」で知られる秀吉と伊達政宗の交流

天下人と何度となく渡り合ってきた伊達政宗。なかでも深い関係だったのが豊臣秀吉です。本展では、1590年に北条氏を降伏させた際、奥州平定のために会津に向かった豊臣秀吉が、政宗の出迎えを受けた際に与えたとされる具足なども展示。セットの金色の扇と合わせて、派手好きな秀吉の好みが感じられます。

重要文化財「銀伊予札白糸威胴丸具足」「金地卍文軍配団扇」「日の丸文軍扇」 桃山時代・天正18年(1590) 豊臣秀吉所用・伊達政宗拝領  仙台市博物館蔵 展示期間:前期(10/8~10/30)

そのほか、秀吉の命を受けて朝鮮出兵に行った際、奥州にいる母に送ったとされる自筆の手紙も紹介。内容は、母の手紙を受け取ってうれしかったことや、お返しに上質の木綿を贈ったことなど。流れるように美麗な政宗の筆跡を間近で眺められます。

重要文化財「伊達政宗書状」文禄2年(1593)7月24日 保春院宛 仙台市博物館蔵

福岡初公開の伊達政宗の武具

展示の中盤には、政宗が愛用したという甲冑「黒塗五枚胴具足」も登場。ちなみにこの甲冑が福岡で公開されるのは初めてなのですが、かつて朝鮮出兵の際に政宗が名護屋城(佐賀県唐津市)に入った際、もしかしたらこの甲冑を身に着けていた可能性もあるのだとか。そうだとすると、この甲冑は400年ぶりの九州上陸を果たしたのかもしれません。

重要文化財「黒漆五枚胴具足」桃山時代 伊達政宗所用 仙台市博物館蔵

伊達家のトレードマークといえば、大きな金の三日月の前立。実は黒い月形の前立もあったようで、金と黒を使い分けていたとの説もあるそうです。

「弦月形前立」江戸時代 仙台市博物館蔵 展示期間:前期(10/8~10/30)

そして、今回の特別展では伊達政宗と同世代の武将で筑前福岡藩主の黒田長政と筑後柳川藩主の立花宗重の甲冑も同時公開!いわば戦国時代の”同級生”ともいえる3人の武将の甲冑を見比べられるのも見どころです。

左:重要文化財「銀箔押一の谷形兜・黒糸威五枚胴具足」桃山時代 黒田長政所用 福岡市博物館蔵 右:「鉄皺革包月輪文最上胴具足」桃山時代 立花宗茂所用 立花家史料館蔵

和歌も茶道具も作った文化人としての政宗

伊達政宗は武芸のみならず、和歌や書、茶の湯や香道にも造詣が深い文化人でした。そんな風流な政宗の一面が伝わる、自筆の和歌や自作の茶杓(ちゃしゃく)、愛用の屏風なども並びます。

仙台市指定文化財「茶杓」 江戸時代初期 伊達政宗作 仙台市博物館蔵

世界を目指した政宗と家臣の支倉常長が持ち帰った宝

伊達政宗の偉業といえば、忘れてはならないのが慶長遣欧使節です。1613年、当時スペイン領だったメキシコとの交易などを目指し、家臣の支倉常長をヨーロッパに派遣しました。

国宝「十字架像」(慶長遣欧使節関係資料) 17世紀初期 仙台市博物館蔵

「慶長遣欧使節関係資料」として国宝に指定されている、日本初の油絵と呼ばれる「支倉常長像」(展示は前期のみの10月30日まで、後期は「ローマ教皇パウロ五世像」が展示)や迫害の痕跡が残る十字架などが展示。また、政宗がローマ教皇にあてた親書(複製)も紹介されています。かつて世界に一番近かった政宗の”ワールドワイド”ぶりが伝わってきました。(ライター・藤村はるな)