【プレビュー】芭蕉自筆の《野ざらし紀行図巻》が特別公開――嵯峨嵐山文華館×福田美術館二館共催企画展「芭蕉と蕪村と若冲」 10月22日開幕

嵯峨嵐山文華館×福田美術館二館共催企画展「芭蕉と蕪村と若冲」 |
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会場:嵯峨嵐山文華館(京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場11) 福田美術館(京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16) |
会期:2022年10月22日(土)~2023年1月9日(月、祝日)、11月29日と年末年始(12月30日~1月1日)が休館 |
休館日:11月29日と年末年始(12月30日~1月1日)が休館 |
アクセス:【嵯峨嵐山文華館】JR山陰線嵯峨嵐山駅から徒歩14分、阪急嵐山線嵐山駅から徒歩13分、京福電鉄嵐山駅から徒歩5分、【福田美術館】JR山陰線嵯峨嵐山駅から徒歩12分、阪急嵐山線嵐山駅から徒歩11分、京福電鉄嵐山駅から徒歩4分 |
入館料:2館共通券は、一般・大学生2000円、高校生1000円、小・中学生550円、障害者と介添え人1人1000円、幼児無料。各館単独の入場料は下記の美術館HPを参照 |
※前期(~11月28日)、後期(11月30日~)で展示替えあり ※詳細、最新情報は、嵯峨嵐山文華館HP(https://www.samac.jp/)、福田美術館HP(https://fukuda-art-museum.jp/)で確認を。 |
「俳諧」を「和歌」とならぶ文学へと高めた松尾芭蕉(1644~1694)。その芭蕉が40代の頃に自書した《野ざらし紀行図巻》が約50年ぶりに再発見され、福田美術館で特別公開される。芭蕉に憧れて「俳画」というジャンルを創出した与謝蕪村(1716~1784)。蕪村と同年生まれの伊藤若冲(1716~1800)。この展覧会は、この三人の足跡をたどるものだ。


第1会場は嵯峨嵐山文華館。ここでは、芭蕉の俳句や絵画と共に、後世の画家たちが描いた《芭蕉図》の数々を展示する。芭蕉の死後50年が経過した1743年頃から、芭蕉を顕彰する動きが盛んになったが、この運動を京都で牽引したのが与謝蕪村。蕪村は江戸で俳諧を学んだ後、約10年間をかけて、北関東から東北地方を僧侶として遊歴。各地の歌枕や芭蕉が訪ねた場所を巡った。42歳頃から京都に定住し、中国の南宗画に学びながら山水図を描き、以後、絵と発句を書き添えた「俳画」という新しいジャンルを確立した。この会場では、蕪村の「俳画」や直筆の手紙、さらに蕪村の弟子たちの作品も紹介する。


第2会場となる福田美術館では、松尾芭蕉の《野ざらし紀行図巻》を2階展示室で特別公開するとともに、伊藤若冲の《蕪に双鶏図》や蕪村の《猛虎飛瀑図》など、若冲と蕪村の代表作を多数展示する。若冲と蕪村の交流を示す史料は確認されていないが、ふたりは同じ時期、京都・四条通り界隈の非常に近い場所に住んでいたという。綿密な写生に基づきながら、どこか幻想味をも感じさせる若冲、俳味と軽みを感じさせる蕪村、当時の最先端の技法を真摯に学びとり、独自の画風を確立させた2人の作品が多数展示される。


展覧会のハイライトとなるのが、《野ざらし紀行図巻》の展示だ。「野ざらし紀行」は、貞享元(1684)年8月に江戸を出立して、伊勢から伊賀、大和、近江、京、尾張などを巡り、貞享2(1685)年4月末に江戸に帰庵した芭蕉が、その行程と道中に詠んだ歌を記したもの。貞享2年に初稿が書かれ、「蕉風」と呼ばれる芭蕉の俳風が完成されるきっかけとなったといわれる。芭蕉自筆による「野ざらし紀行」は、これまで天理本(天理大学附属天理図書館蔵)以外、今回の展示に出される一品しか確認されておらず、書と共に紀行文全体にわたって挿絵が描かれている点が珍しい。芭蕉と交流があった山口素堂による序文が添えられており、『芭蕉全図譜』(岩波書店)記載の筆跡と比較検討しても、真筆であると確証されている。
