【BOOKS】西川明彦『正倉院宝物の構造と技法』(中央公論美術出版) 正倉院事務所の調査研究成果を多くの図版で紹介

「第74回正倉院展」が奈良国立博物館で10月29日から11月14日まで開かれます。1300年にわたって大切に伝えられてきた宝物をまもる正倉院事務所は、ただの宝物庫ではなく研究機関でもあることをご存じでしょうか。前正倉院事務所長の西川明彦さん『正倉院宝物の構造と技法』(中央公論美術出版)は、あまり知られることがなかった正倉院事務所における研究活動の一端を知ることができる一冊です。
本書には詳細な文献・実態調査と科学分析によって、正倉院宝物が「どう」作られたか、「どこで」作られたかをひとつひとつ解き明かして、正倉院宝物の正体に迫ります。1000年以上も昔、世界のあちこちで作られた多種多様な品々が、時を越えて今、目の前にあることが、とても素晴らしいことであることに改めて気づかされるでしょう。
こうした調査は、著者の西川さんによると「古代のことばや外国語を通訳する役割を担って」きました。この先の1000年も正倉院宝物を伝えていく、重要な活動を本で知ってみてはいかがでしょうか。正倉院宝物が200点以上、部分写真を含めてフルカラーで多数(図版総数690点)掲載されています。もちろん今年の正倉院展の出陳物も多く載っています。
価格は6,600円。購入は中央公論美術出版のサイトやネット書店などで。また、正倉院展が開かれる奈良博のミュージアムショップでも購入することができます。
(読売新聞美術展ナビ編集班)