【レビュー】史料から浮かぶ「政治集団」新選組の実像 「新選組展2022」京都文化博物館で11月27日まで

「幕末の京都といえば新選組!」と思う人は多いのではないでしょうか。多摩の農民出身の青年たちが刀を手に京都に上り、池田屋事件などで活躍し、やがて悲劇的な終わりを迎える。新選組をめぐるストーリーは今も多くの人々を惹きつけています。
京都文化博物館で11月27日まで開催されている「新選組展2022―史料から辿る足跡」では、数々の史料を読み解き、彼らが何を思い、どう戦ったのか、について私たちにヒントを与えてくれます。
本展は新選組にもっとも縁の深いといえる会津と京都をつなぐように開催。7月から9月までは福島県立博物館(会津若松市)で行われました。京都会場は10月1日に開幕しました。
政治集団としての新選組

浅葱色にダンダラ模様の羽織で幕末の京都を闊歩し人々を震え上がらせる。誰もが一度は時代劇や漫画、アニメで見たことがあるシーン。その描かれ方は剣豪集団ですが、本展ではそうした見方が少し変わるかもしれません。

近年の歴史研究によって、新選組は武装集団ではあったが、政治集団の意味合いが強かったということが分かってきたそうです。近藤勇の手紙などから読み解ける新選組は、「
土方歳三の「銘 和泉守兼定」 山南の死を知らせる沖田総司の手紙

言わずと知れた土方歳三の名刀「銘 和泉守兼定」は、眩しいほどの輝きを放っていました。
*京都会場での「銘 和泉守兼定」は開幕速報記事をご覧ください。

「志大略相認書」は、会津藩お預かりとなったことを近藤勇が多摩の仲間に知らせた手紙です。近藤勇と松平容保の出会いから、京都の様子、どのようにして攘夷を行っていくかについての考えが書かれています。近藤勇の政治思想や政治的な力量が分かる最も早い時期の史料です。

「伏見鳥羽戦争図草稿」は、鳥羽伏見の戦いで伏見奉行所からの脱走を図る新選組を描いた絵です。新選組がこの頃の絵画に描かれているのはとても珍しいのだとか。

数々の手紙のなかでもひときわ心に残る手紙がありました。沖田総司から江戸の仲間・佐藤彦五郎に宛てた書簡です。そこには季節の挨拶と書いてありました。そして「ついでに書くと」という前置きがあって「山南さんが死にました」とあります。その手紙からは悲しみの真っ只中にありながら筆をとる沖田総司という一人の人間が浮かび上がってきます。
簡単な現代語訳があるため、手紙を書いた人間の姿を想像することができました。隊士も多摩の人々も皆その時代を生きていたことを、ドラマやフィクションを通してではなく直筆の手紙を通して分かる。それこそが「新選組展2022」の面白さです。
幕末のキーパーソン孝明天皇
孝明天皇は、公武合体のため、妹の和宮を徳川将軍家に降嫁させますが、幕末の混乱のなかで亡くなります。孝明天皇ゆかりの品々は、京都・東山の泉涌寺で大切に受け継がれてきました。


こちらの大日如来坐像は孝明天皇が祈りを捧げたと言われている念持仏です。また、本展では中川宮朝仁親王による孝明天皇の崩御までの簡潔な手記「御別帳」が初公開されています。
石田散薬がグッズに

グッズも豊富です。新選組ファンにぜひオススメしたいグッズは「石田散薬」です。土方歳三の土方家代々の当主は漢方医術の心得があり、家伝薬として漢方・石田散薬を伝えました。グッズの「石田散薬」は薬ではなくラムネでした。

どくろのイラスト入りのTシャツも見逃せません。新選組のファンにおなじみの「どくろ」は近藤勇の妻つねが稽古着の背中に縫いつけたものと言われています(諸説あり)。
京都には壬生寺など新選組ゆかりの場所も多いので、合わせて巡るとさらに楽しめるはずです。(ライター・若林佐恵里)
新選組展2022―史料から辿る足跡 |
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会期:2022年10月1日(土)~11月27日(日) |
会場:京都文化博物館(京都市中京区三条高倉) |
開室時間:10:00~18:00(金曜:10:00~19:30) ※入場は閉室の30分前まで |
観覧料:当日一般1,500円/大高生1,000円/中小生500円 |
休館日:月曜日 |
詳しくは展覧会公式サイトへ |
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