【プレビュー】「よみがえる川崎美術館」神戸市立博物館で10月15日から 国宝2件を含む川崎コレクションがゆかりの地・神戸で再会

神戸市立博物館開館 40 周年記念特別展 よみがえる川崎美術館ー川崎正蔵が守り伝えた美への招待ー

  • 会期

    2022年10月15日(土)12月4日(日) 会期中、一部作品に展示替えあり
  • 会場

    神戸市立博物館
    https://www.kobecitymuseum.jp/
    兵庫県神戸市中央区京町24
  • 観覧料金

    当日/一般=1600円(前売・団体=1400円)、大学生=800円(前売・団体=600円)

    ※高校生以下無料、団体は20名以上
    ※神戸市在住で満65歳以上の方は当日一般料金の半額(要証明)
    ※障がいのある方は障がい者手帳などの提示で無料(要証明)
    ※ 前売券は8月23日(火)〜10月14日(金)まで各プレイガイドで販売
    チケットの詳細・販売場所などは展覧会公式サイトをご覧ください

  • 休館日

    月曜日

  • 開館時間

    09:30〜17:30 (金・土曜日は19時30分まで)※入場は閉館の30分前まで
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展覧会公式サイト(https://kawasaki-m2022.jp

神戸市立博物館で10月15日(土)〜12月4日(日)まで「よみがえる川崎美術館」が開催されます。

巡回なし ゆかりの地・神戸でよみがえる川崎美術館

川崎美術館外観(川崎芳太郎編『長春閣鑑賞』第6集、國華社) 大正3年(1914) 川崎重工業株式会社

明治23年(1890年)、神戸市布引の川崎邸(現在のJR新神戸駅周辺)に日本初の私立美術館「川崎美術館」が開館しました。創設したのは、川崎造船所(現川崎重工業株式会社)や神戸新聞社などを創業した実業家・川崎正蔵です。川崎氏は、西洋文化の流入などにより美術品が海外へ流出することを懸念し、時代やジャンルを問わず日本・東洋美術の優品を幅広く収集しました。そのコレクションを公開する場として、川崎美術館が誕生することとなったのです。

川崎正蔵翁像 グイード・モリナーリ 明治33年(1900) 川崎重工業株式会社 通期展示

川崎コレクションは、昭和2年(1927年)の金融恐慌を機に散逸したものの、国内外で大切に守り伝えられてきました。本展では、散逸した川崎コレクションのうち、国宝2件、重要文化財5件、重要美術品4件を含む仏像、工芸品など約80件がゆかりの地・神戸で再会。川崎美術館が約100年ぶりに神戸でよみがえります。

本展の巡回はありません。神戸でしか見られない貴重な展覧会です。

重要文化財「広目天眷属像」 康円 文永4年(1267) 静嘉堂文庫美術館 通期展示
国宝「宮女図(伝桓野王図)」  伝銭舜挙 元時代・13世紀~14世紀 個人蔵 11月15日~12月4日

かつての館内を再現

水害や戦災によって美術館の建物は失われてしまいましたが、かつて川崎美術館で用いられた円山応挙の襖絵(東京国立博物館蔵)により、当時の館内の構成が部分的に明らかとなりました。

川崎美術館1階の上之間・広間・三之間の3室を再現展示。同時に、『陳列品目録』を手がかりに、当時の展観(展覧会)の様子の一部をよみがえらせます。

 

川崎美術館 1階広間 再現イメージ  ©Image:TNM Image Archives 東京国立博物館から提供の画像を加工

「海辺老松図襖」(部分)  円山応挙 天明7年(1787) 東京国立博物館蔵 通期展示 ©Image:TNM Image Archives
「雪景山水図襖」  円山応挙 天明7年(1787) 東京国立博物館蔵 通期展示 ©Image:TNM Image Archives
「麝香猫図」  宣宗 明・宣徳元年(1426) 個人蔵 通期展示

「名誉の屏風」が里帰り

明治35年(1902年)、明治天皇の神戸行幸に際して川崎氏が御用立てた5双の金屏風は「名誉の屏風」とも称されました。これらの屏風のうち3双を本展で公開。「牧馬図屏風」は海外から初の里帰り公開となります。

「牧馬図屏風」(右隻)  狩野孝信 桃山時代~江戸時代・16世紀後期~17世紀初期 個人蔵 通期展示
「牧馬図屏風」(左隻) 狩野孝信 桃山時代~江戸時代・16世紀後期~17世紀初期 個人蔵 通期展示
重要美術品「桐鳳凰図屏風」(右隻) 伝狩野孝信 桃山時代~江戸時代・16世紀後期~17世紀初期 林原美術館 通期展示 ※無断転載禁止
重要美術品「桐鳳凰図屏風」(左隻) 伝狩野孝信 桃山時代~江戸時代・16世紀後期~17世紀初期 林原美術館 通期展示 ※無断転載禁止

川崎氏が愛蔵した「寒山拾得図」

重要文化財「寒山拾得図」 伝顔輝 元時代・14世紀 東京国立博物館 10月15日~11月13日 ©Image:TNM Image Archives

一目見ると忘れられないほどの存在感を放つこちらの作品は、川崎氏が最も愛蔵した「寒山拾得図」です。その愛蔵ぶりは、睡眠中も本作品を忘れることはないといわれたほど。夜な夜なひっそりと本作品を部屋に掛けて、香を焚きながらひとり愛玩し、日露戦争時には本作品を携えて高野山へ待避することを考えていたという逸話が残っています。最終章で紹介されるので、お見逃しなく。

川崎氏の作品に対する熱意は後世のコレクターや美術館に受け継がれ、国内外で約200点の旧蔵品が現存しています。そのうち約80件がゆかりの地・神戸で再会を果たす本展で、在りし日の川崎美術館に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

(読売新聞美術展ナビ編集班)