【プレビュー】「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」 夭折の天才、激動の人生に迫る 東京都美術館で1月26日開幕

エゴン・シーレ《ほおずきの実のある自画像》1912年 油彩、グワッシュ/板 レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ天才
Egon Schiele from the Collection of Leopold Museum -Young Genius in Vienna 1900
会場:東京都美術館(東京・上野公園)
東京都台東区上野公園8-36
会期:2023年1月26日(木)~4月9日(日)
開室時間:9:30~17:30、金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
観覧料:一般2,200円/大学生・専門学校生1,300円/65歳以上1,500円
※チケットは日時指定制
アクセス:JR上野駅公園口から徒歩7分、東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅から徒歩10分、京成電鉄京成上野駅から徒歩10分
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館、朝日新聞社、フジテレビジョン
詳しくは公式サイト(https://www.egonschiele2023.jp
公式Twitter:@schiele2023jp
問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル) ※全日9:00~20:00

1月12日(木)午前10時からチケットの発売が始まります。詳しくは公式サイト(https://www.egonschiele2023.jp/ticket.html)へ。

見る者の心に否応なく迫ってくる激烈な作品群で、高い人気を誇るエゴン・シーレ(1890-1918)。大規模回顧展が開催されるのは30年ぶりです。エゴン・シーレの有数のコレクションで知られるウィーンのレオポルド美術館の所蔵作品を中心に、ウィーンが生んだ夭折の天才の生涯を振り返ります。

《エゴン・シーレの肖像写真》 アントン・ヨーゼフ・トルチカ撮影 1914 年 レオポルド家コレクション Leopold Museum, Vienna

1906年、シーレは最年少の16歳でウィーンの美術学校に入学しますが、保守的な教育に満足できませんでした。そのころ、ウィーン美術界の中心人物であったグスタフ・クリムトと知り合い、才能を認められます。当時の作品はクリムトの影響を感じさせる華やぎの一方、大胆な表現はその後のシーレの姿も予見させます。

エゴン・シーレ《装飾的な背景の前に置かれた様式化された花》 1908年 油彩、金と銀の顔料/カンヴァス レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

結局、ウィーン芸術アカデミーを退学し、若い仲間たちと新たな芸術集団を立ち上げます。しかし、その当時の常識にとらわれない創作活動により逮捕されるなど、生涯は波乱に満ちたものでした。孤独と苦悩を抱えた画家は、ナイーヴな感受性をもって自己を深く洞察し、ときに暴力的なまでの表現で人間の内面や性を生々しく描き出しました。

自画像に見るその内面

エゴン・シーレといえばやはり自画像。今展でも印象的な作品が紹介されます。

エゴン・シーレ《自分を見つめる人Ⅱ(死と男)》 1911年 油彩/カンヴァス レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna
エゴン・シーレ《悲しみの女》1912年 油彩/板 レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

純粋な自画像ではありませんが、当時の恋人をモデルにした女性像の裏に怪しげな表情のシーレの顔がのぞきます。2人の関係を表すように緊張感が漂います。

独特の人物画

エゴン・シーレ《背を向けて立つ裸体の男》1910年 グワッシュ、木炭/紙 レオポルド家コレクション
エゴン・シーレ《母と子》1912年 油彩/板 レオポルド美術館 Leopold Museum, Vienna

こちらも名高い作品。キリスト教絵画の伝統的な聖母子像の構図ながら、恐怖におののくような子供の面持ちに目が離せなくなります。外の世界を遮断するかのような母のきつく閉じられた目も印象的。何かから逃れているのでしょうか。

エゴン・シーレ《縞模様のドレスを着て座るエーディト・シーレ》1915年 鉛筆、グワッシュ/紙 レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

妻を描いた作品。夫婦ともに当時、大流行していたスペインかぜに侵され、1918年に相次いで亡くなりました。

エゴン・シーレ《頭を下げてひざまずく女》 1915年 鉛筆、グワッシュ/紙 レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

絵画作品ではなかなか見られない体勢の一作。シーレの独自性が際立ちます。

エゴン・シーレ《モルダウ河畔のクルマウ(小さな街Ⅳ)》 1914年 油彩、黒チョーク/カンヴァス レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna
エゴン・シーレ《菊》1910年 油彩/カンヴァス レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

風景画や静物画も静謐なのに、やはり迫るものがあります。シーレの油彩画、ドローイングなど合わせて50点を通して、画家の生涯と作品を振り返ります。

同時代の作家たちも注目

加えてクリムト、ココシュカ、ゲルストルをはじめとする同時代作家たちをあわせた約120点の作品を紹介します。当時のウィーンの空気が伝わってきます。シーレの個性を知る上でも貴重です。

グスタフ・クリムト 《シェーンブルン庭園風景》1916年 油彩/カンヴァス レオポルド美術館に寄託(個人蔵)
コロマン・モーザー《キンセンカ》 1909年 油彩/カンヴァス レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna
リヒャルト・ゲルストル《半裸の自画像》1902/04年 油彩/カンヴァス レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

夭折の天才エゴン・シーレを中心に、ウィーン世紀末美術の香りを感じることができる大規模展です。

(美術展ナビ編集班 岡部匡志)