【開幕】「鉄道と美術の150年」展 近現代の日本社会を鮮やかに映す 重厚な作品揃う 東京ステーションギャラリーで2023年1月9日まで

鉄道と美術の150年
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会期
2022年10月8日(土)〜2023年1月9日(月) ※会期中、一部展示替えがあります -
会場
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観覧料金
一般1,400円、高校・大学生1,200円、中学生以下無料
※障がい者手帳持参の方は100円引き(介助者1名は無料)
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休館日
月曜日(10月10日、1月2日は開館)、10月11日、12月29日~1月1日
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開館時間
10:00〜18:00 (金曜日は20:00まで)※入館は閉館30分前まで - カレンダーへ登録
今年は、明治5年(1872年)に日本で初の鉄道が開業してから150年の節目。日本の鉄道の中心、東京駅構内にある東京ステーションギャラリーでは10月8日、「鉄道と美術の150年」展が開幕しました。前日に行われた内覧会を取材しました。場所柄、列車や駅を描いた作品が並ぶかと思いきや、歴史的な意義も含めて見応えあるアート作品を多数揃えた重量級の本格展。日本の近現代史を「鉄道」と「美術」が交錯した地点で振り返る、見事な内容です。(美術展ナビ編集班 岡部匡志)
冒頭に紹介した写真作品は、笑顔の復員兵や米軍専用車の凛々しい女性車掌を捉えて印象的です。女性車掌のショットは日本初の女性報道写真家、笹本恒子さん(1914-2022)が撮影したもので、被写体、撮影者とも新しい時代を象徴するかのような一枚です。
戦後の混乱期、上野駅の地下道で眠る人々をおよそ10年にわたり描き続けた佐藤照雄の《地下道の眠り》。これには目を奪われました。確かに後世に残すべき、鉄道と美術の歴史の記録でしょう。

もちろん、日本の鉄道絵画の記念碑的作品である赤松麟作《夜汽車》もじっくり見られます。東海道線の下り列車の名古屋手前あたりを描いた、とする解説は読み応えがあります。

梶原緋佐子の《帰郷》。駅を舞台に女性の人生を描いて鮮やかです。

150年に合わせて150点が展示されます。目にする機会が少ない、貴重な作品も多いです。

宮中からの依頼で勝海舟らが参内し、鉄道に関する説明を行いました。その際に宮中から提供された紙に勝が揮毫した作品。幕末、明治と日本を支えた大人物は筆を持たせても達者だったのですね。

京都画壇で活躍。竹内栖鳳らとともに、幸野楳嶺門下の四天王とも称された都路華香(つじ・かこう)の作品です。列車を乗り降りする大勢の客の様子を巧みに描き分けました。100人以上の老若男女が描かれているそうです。一等、二等、三等という等級によって、その身なりや佇まいは明らかに違います。アイヌの人や外国人の姿も見えます。プラットホームという場所を借りて、当時の日本社会を象徴的に描こうとしたようです。

富士山を中央に、日本列島の中央部を俯瞰するスケールの大きな作品です。手前は太平洋、奥には日本海が見えます。富士山のふもと、画面の中央に汽車と駅舎が描かれており、日本の中核には鉄道がある、というイメージが伺われます。今なら新幹線が描かれるのでしょうか。

近年、人気の杉浦非水のポスターも登場します。大都会のおしゃれな雰囲気と、地下鉄がマッチしています。最先端の象徴だったのでしょう。

染織で、斬新なモチーフを描いた作品。描かれているのは満鉄の特急列車「あじあ」です。スピード感や重量感の表現が見事です。戦時中、「アジアで躍進する日本」というイメージを鉄道と美術が鼓舞し、補強していたことを伺わせます。
戦後では香月泰男、立石大河亞らの大作が目を引きます。鉄道に絡んでいく前衛美術の動きも。「鉄道と美術は一筋縄ではいかない、ただならぬ関係にある。」というキャッチコピーに納得します。「美術」という言葉が日本で初めて使われたのは、鉄道開業と同じ明治5年でした。ずっと日本の近現代に寄り添ってきた「鉄道」と「美術」。その様々な姿を見ることができます。




重要文化財の東京駅にある東京ステーションギャラリー自体も立派な作品です。足を運ばれる方、こちらもじっくりご覧ください。

