週末いきたい!蒔絵・漆工の名品が並ぶ美術展・展覧会

この秋は、蒔絵展が各地の美術館・博物館で開催されます。漆器のことを英語で「japan」と言うのは有名ですが、漆器の中でも、漆で描いて金粉を蒔く「蒔絵」は日本で独自に発達した工芸で、日本美術に欠かせません。また、東京国立博物館で10月18日から始まる「国宝 東京国立博物館のすべて」の予習にもなります。東博の国宝の漆工は4件あります。
大蒔絵展ー漆と金の千年物語 (三井記念美術館)
10月1日から11月13日まで、特別展「大蒔絵展ー漆と金の千年物語」が三井記念美術館(東京・千代田)で開かれています。同館、MOA美術館、徳川美術館の私立3館が主催するもので、国宝7件、重要文化財32件を含む平安時代の王朝美から現代の蒔絵の名品までがそろう豪華なラインナップです。
いずれも東博の国宝「片輪車蒔絵螺鈿手箱」(平安時代)と尾形光琳「八橋蒔絵螺鈿硯箱」(江戸時代)が10月1日~23日の前期に展示されています。2つは東博の特別展では11月15日~12月11日に同時に展示されますが、大蒔絵展では、同時代の蒔絵作品とともに鑑賞できます。
「東京国立博物館の模写・模造ー草創期の展示と研究ー」 (東京国立博物館)
東京国立博物館の総合文化展(常設展)で10月30日まで行われている特集「東京国立博物館の模写・模造ー草創期の展示と研究ー」では、現品は東博が所蔵する国宝の「片輪車螺鈿手箱」(模造)(現品は鎌倉時代)や「舟橋蒔絵硯箱 本阿弥光悦作」(模造)(現品は江戸時代)が10月2日から展示されています。10月前半は特別展が開催されていないので、ゆったりと自分のペースで見ることができるはずです。
「蔵出し蒔絵コレクション」(根津美術館)
「蔵出し蒔絵コレクション」が根津美術館(東京)で10月16日まで開かれています。根津嘉一郎が集めた蒔絵の粋をまとめて紹介します。根津が好んだ蒔絵は、細かい技術が秀でたものだったそうです。蒔絵の超絶技巧を知ることができる展覧会です。緻密さを楽しむために、単眼鏡の持参がオススメされています。
なお、館の公式ツイッターによると、「蒔絵しか勝たん!」そうです。
【「蒔絵しか勝たん!」です】
皆さまのご感想、ありがたく拝見しております。RTしてもよろしければ、どうぞ投稿の際「#秋は蒔絵」をお付けください。(展示室内での撮影は引き続きご遠慮ください。)
当館展は10/16終了ですが、日本橋方面ではまだまだ続きます。今年の秋は、蒔絵です。#根津美術館 pic.twitter.com/zPB5U2RJQ8— 根津美術館 (@nezumuseum) October 5, 2022
「永青文庫漆芸コレクション かがやきの名品」(永青文庫)
熊本藩細川家のコレクションからなる永青文庫も注目の展覧会を開催します。「漆芸コレクション かがやきの名品」が10月8日から永青文庫(東京・目白台)で始まります。蒔絵のほか、貝殻をはめ込む「螺鈿」や塗り重ねた漆を彫る「彫漆」など、日本とアジアで制作された漆芸の名品が並びます。国宝「時雨螺鈿鞍」(鎌倉時代)は永青文庫では16年ぶりの展示で、10月8日から11月13日までの限定公開です。本展と大蒔絵展(三井記念美術館)は半券提示で割り引きがあります。
「響きあう名宝―曜変・琳派のかがやき―」静嘉堂@丸の内
10月1日に世田谷から丸の内に移転オープンした静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)の「響きあう名品」展では、尾形光琳「住之江蒔絵硯箱」や「花蝶存星菊花形盒」(中国・清時代)など漆芸ジャンルでも「三菱」の至宝が並びます。12月18日まで。
「美をつくし―大阪市立美術館コレクション」 サントリー美術館
大阪市立美術館の大規模改修に伴う長期休館を機に、同館所蔵の8500件越えのコレクションから選ばれた143件(重要文化財14件)が一堂に会する「美をつくし」展はサントリー美術館(東京・六本木)で11月13日まで。第4章「江戸時代の粋 世界が注目する近世工芸」では、印籠や硯箱など蒔絵の美品が並びます。
企画展「秋の風 能楽と日本美術」国立能楽堂資料展示室
国立能楽堂(東京・千駄ヶ谷)資料展示室で開催されている企画展「秋の風 能楽と日本美術」では、秋のモチーフが描かれた蒔絵も多く展示されています。なかでも、原羊遊斎の蒔絵の印籠などは見ものです。入場無料です。10月21日まで。
(読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)