【レビュー】友禅絵師の技が琳派・若冲とポップカルチャーを融合 「響きあうジャパニーズアート」展 京都・細見美術館で12月4日まで

響きあうジャパニーズアート ー琳派・若冲×鉄腕アトム・初音ミク・リラックマ―
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会期
2022年9月6日(火)〜12月4日(日) -
会場
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観覧料金
一般1400円 学生700円
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休館日
月曜日 祝日の場合、翌火曜日
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開館時間
10:00〜17:00 (最終入場は16:30) - カレンダーへ登録
アクセス 地下鉄東西線東山駅2番出口から北へ徒歩約10分
平安神宮のおひざ元で、岡崎公園や京都市動物園が立地する岡崎エリアは京都市民の憩いの場です。文化ゾーンとしても魅力あふれるスポットで、京都国立近代美術館や京都市京セラ美術館、ロームシアター京都など古都を代表する施設が集まっています。

そんな岡崎エリアで、日本の古美術を中心とするコレクションで独自の存在感を放っているのが細見美術館。「響きあうジャパニーズアート」展が開催中です。この美術展では、尾形光琳をはじめとする琳派の絵師による絵画と現代のポップカルチャーを代表するキャラクターがコラボレーションした作品が展示されています。
この作品を世に送り出したのはアートプロジェクト「琳音(りんね)」。細見美術館館長の細見良行氏監修のもと、京都の呉服メーカーであり日本画の工房でもある豊和堂のアートディレクターである山田晋也氏と、友禅絵師である平尾務氏により制作されました。琳派や若冲の絵に現代のキャラクターを融合させた作品を世に送り出すという試みです。2021年11月にドイツの五大陸博物館で企画展が行われて人気を博し、本展はその帰国展です。
火の鳥が舞い、アトムが飛ぶ「富士・三壺図屛風」
第一展示室の中に入ると、まず目に飛び込んでくるのは屛風絵です。冠雪の富士が描かれているのは「富士・三壺図屏風」。江戸時代中期の尾形光琳の作品です。近年発見された幻の名作として注目されています。
それに向かい合うようにしてあるのが、「鉄腕アトム×富士」と「火の鳥×三壺」です。富士山の上空を元気に飛ぶ鉄腕アトムと、古来、仙人が住むと伝えられている蓬莱山に黄金に輝く火の鳥が羽ばたいています。

特筆すべきは江戸時代の絵画に現代のキャラクターが見事に調和していることです。実は、この絵は友禅絵師がオリジナルの絵画とキャラクターを見て、一筆一筆写したものとのこと。手間と時間がかけられているからこそ、この調和の美が生れているのです。
若冲の世界に初音ミクがいろどりを添える
第二展示室でも、江戸時代絵画と、キャラクターがコラボした作品が並べて展示されています。2つの作品を見比べていると、昔も今も日本人が大切にしている美意識が感じられました。見比べることで感じるものがある。それが「響きあうジャパニーズアート」展の面白さです。
思わず目が釘付けになってしまったのは鈴木守一による「業平東下り図」と「リボンの騎士×業平東下り」です。旅の愁いが感じられる作品です。松の木や富士山もリボンの騎士の旅を演出しているようです。


思わず誰かに「どれが好き?」と尋ねてみたくなるのもこの美術展の魅力です。お子さん連れや友人同士など誰かと来ている人も多くいました。
ぜひお気に入りの作品を探してみてください。
また、こちらでは2021年のドイツでの展示会の様子がモニターで見られるようになっています。ドイツの人々が興味深く作品を眺めている様子を見ているとうれしくなりますね。
神坂雪佳×リラックマでデフォルメの極致を知る

続いて第三展示室には近代の琳派、神坂雪佳の作品とリラックマがコラボした作品が展示されています。
広報の大塚みなみさんはこう話します。「もともと琳派の絵師は写実的に描くのではなくデフォルメしてデザイン的に表すことが多いのです。そういう点で現代のキャラクターとの共通点があります。有名な風神雷神なども当時の想像上のキャラクターとも言えます。日本には簡略化することで美を表現し、それを受け取る美意識がありました。いつの時代も人間はキャラクターを愛でて楽しんいるのかもしれませんね」
神坂雪佳の図案も、色鮮やかでおおらかな感じがして、親近感を覚えます。その点でリラックマとの相性も抜群です。「そんなに頑張らなくてもいいじゃない?」そんなふうに言っているように感じます。
思わず手にとってしまうグッズの数々
最後のお楽しみはグッズ売り場です。「かわいい!」と思わず手にとってしまうグッズがずらりと並んでいます。
特に目を引くのはタペストリーです。これを部屋にかけておけばいつでも響き合うジャパニーズアートが自宅で楽しめるのではないでしょうか。お気に入りの作品があるかどうか探して見てください。
そのほかにも定番のクリアファイルやポストカードはもちろんのこと、携帯立てや手ぬぐいもあります。手ぬぐいは使ってもいいし飾ってもいいサイズ感です。
まさに歴史の中の日本の絵画と現代のキャラクターがそれぞれの良さを持ち寄り作品となって音楽を奏でているかのような「響きあうジャパニーズアート」展でした。
新しいアートの楽しみ方を感じられる「響きあうジャバニーズアート展」の会期は12月4日までです。会期中に展示替えを行い、10月12日からは後期展示となります。ぜひ足を運んでみてください。(ライター 若林佐恵里)