【レビュー】「イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき」Bunkamura ザ・ミュージアムで11月10日まで

イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム(東京都渋谷区道玄坂2-24-1)
会期:2022年9月17日(土)~11月10日(木)
アクセス:JR渋谷駅、東京メトロ銀座線、京王井の頭線渋谷駅から徒歩7分、東急東横線・田園都市線、東京メトロ半蔵門線・副都心線渋谷駅から徒歩5分
入館料:一般1700円、高校・大学生1000円、小・中学生700円ほか
開館時間:10:00-18:00、金・土は21:00まで(※入館はそれぞれ閉館の30分前まで)
会期中すべての日程でオンラインによる事前予約が可能。予約なしでも入場できるが混雑時には待つ場合がある
※詳しくは展覧会ウェブサイト
問い合わせは、050-5541-8600(ハローダイヤル)へ。
巡回展情報(詳細情報は巡回展共通HPで確認を)
2023年4月22日~6月19日  島根県立石見美術館
2023年7月1日~9月3日 長崎県美術館 (予定)
2024年2月17日~ 3月31日 美術館「えき」KYOTO(予定)

イッタラ創業140年を記念した展覧会

日本では北欧のテーブルウェアや雑貨、インテリアが人気です。一過性のブームではなく、生活の中に根付いているように思います。今回は北欧製品の中でも人気が高いフィンランドのライフスタイルブランド、イッタラの創業140年を記念した日本で初めての大規模な巡回展です。フィンランド・デザイン・ミュージアムとイッタラのアーカイブから作品450点以上が紹介されています。

《アアルト ベース》のためのドローイング アルヴァ・アアルト 1936年

イッタラは1881年にフィンランド南部イッタラ村のガラス工場からスタートしました。その歴史は、伝統の技を継承しつつ、革新も行うものでした。ガラスという素材に職人とデザイナーがひたむきに向き合うものでもありました。

イッタラ創業当時の製品

またイッタラは、得意分野の違うガラス工場と合併したり、カトラリーや陶磁器製造を行う企業(日本でも人気のある)アラビアやロールストランドなどと統合したりしてきました。その後、ウェッジウッド、ロイヤルコペンハーゲンなどの高級ブランドも擁するフィスカ―スグループの一員となり現在に至ります。
最初のエリアでは2021年に創立140周年を迎えたイッタラの創業からの歩みが紹介されています。

展示風景

イッタラを作り上げたデザイナー

次のコーナーではイッタラを語る上では欠かせない8人のデザイナーについて、代表的な製品とともに紹介されています。

アアルト

アイノ・アアルトは当時珍しい女性建築家。《ボルゲブリック(水紋)》シリーズは日常的に使うことを想定して手になじむような形状にデザインされました。
夫のアルヴァ・アアルトはイッタラの代名詞ともいうべき《アアルト ベース》をデザインしました。

展示風景

 

カイ・フランク

カイ・フランクは「同じ食器でいろいろな使い方ができるなら、食器をそれほど持つ必要がない」と語り、現在イッタラの看板製品となる《ティーマ》と《カルティオ》を生み出し、カラーガラスの開発にも力を入れました。

展示風景

《i-ライン》シリーズを生み出したティモ・サルパネヴァは、このシリーズのために赤い「i」のロゴマークを作りましたが、これが現在イッタラ全体のロゴマークにもなっています。このデザインは、ガラス職人が使う吹き竿と竿の先の熱せられたガラスの玉を表しています。ほかにタピオ・ヴィルカラ、オイバ・トイッカ、アルフレッド・ハベリ、ハッリ・コスキネンが紹介されています。

型の素材を使い分け木型にこだわる

会場風景

こちらの一角には型や道具が置かれています。ガラスの製法には吹きガラスとプレス加工があります。吹きガラスの中でも木型や金型を使わず、空中で成形する方法を「宙吹き」といい、ひとつひとつ個性がある製品ができます。

《アアルト ベース》の木型(手前)と製品(左奥)

型には木型とスチールやグラファイト製などのものがあります。木型は水に浸して使いますが、すぐ焼けたり焦げたりしてしまいます。イッタラには専属の木工職人がいて木型を作り、メンテナンスしながら使っています。木型とスチールの型で作ったベースが展示されていますので比べてみてください。木のほうは表面に少し凹凸があり、ガラスを通して見たときの屈折も違うように感じました。

ガラスの色へのこだわり

展示風景

こちらのコーナーにはカラフルなガラス製品が並んでいます。色彩豊かなカラーガラスの数々の中で、特に目を引いたのが、赤くて丸いフォルムのタンブラー《マルヤ(ベリー)》(上の写真の下段右から2つ目)です。寒色系に比べると赤や黄色の暖色系の色を安定して出すのは難しいそうですが、こだわって美しい色を出しています。

展示風景

展示されているカラーパレットは、グラデーションが美しく、同じ色でもガラスの厚みによってとても色が変るのがよくわかります。イッタラ製品はガラスの色彩が美しくバリエーションが豊かです。過去のものを含めると数千ものカラーレシピがあるそうです。あふれる色の洪水に魅了されます。

イッタラと日本のデザイナー

フィンランドと日本のデザイン界の関係は1950年代に始まりました。デザイナーのカイ・フランクは1950~60年にかけて度々来日し、製品のデザインに生かしています。

最近では、日本のデザイナーとのコラボレーション製品が発売されています。2016年にはイッセイミヤケとのコラボレーション、2020年にはミナ ペルホネンの皆川明さんとコラボレーションした製品を発売しています。また、2021年には表参道に東京発の旗艦店「イッタラ表参道 ストア&カフェ」をオープンしましたが、店舗の設計は日本を代表する建築家の隈研吾さんが担当しました。会場内で皆川さんと隈さんのインタビュー映像が流れていますのでぜひご覧ください。

ショップでは復刻したアアルト ベース「クリア1937」も

展覧会限定アイテム《アアルト ベース「クリア1937」》 ©Iittala

1937年に発売された当時の特別な色の「クリア1937」が本展を記念して復刻され、イッタラを象徴するアアルト べースとなりミュージアムショップで販売されています。

ミュージアムショップ

そのほかのイッタラ製品も一部購入できます。鑑賞後に見るとあれもこれも欲しくなってしまいそうですね。

Bunkamuraの正面エントランスには、《カステヘルミ》キャンドルホルダーのオブジェも特別展示されています。イッタラの人気ラインナップ《カステヘルミ》のキャンドル325個を使用したタワーです。館外ですので、どうぞお見逃しなく。

【ライター・akemi】 きものでミュージアムめぐりがライフワークのきもの好きライター。きもの文化検定1級。Instagramできものコーディネートや展覧会情報を発信中。コラム『きものでミュージアム』連載中(Webマガジン「きものと」)

展覧会に合わせたコーディネート。今回は、イッタラの特別な色「クリア1937」の緑がかったクリアな色に似た江戸小紋に、ガラスのきらめきのイメージの日本刺繍の帯を合わせて。小物は鳥(バード)の帯留にガラスの根付です。