【レビュー】「博物館でアジアの旅 アジア大発見!」東京国立博物館東洋館で10月16日まで

博物館でアジアの旅 アジア大発見!
会場:東京国立博物館東洋館(東京・上野公園)
会期:2022年9月21日(水)~10月16日(日)
休館日:月曜日(ただし10月10日(月・祝)は開館)、10月11日(火)
開館時間:9時30分~17時(入館は閉館の30分前まで)
入場料:総合文化展 一般1000円、大学生500円
詳しくは博物館公式サイト

通常展示にまぎれるように展示されている作品を「発見」

コロナ禍で気軽に海外に足を運べない中、博物館で異国への旅気分を味わってみませんか?
東京国立博物館東洋館にて開催中の「博物館でアジアの旅 アジア大発見!」では、アジアの美術・工芸・考古遺物が集う東洋館を舞台に「発見」にちなんだ作品を紹介。19世紀末から20世紀初頭にヨーロッパや日本の学術探検隊が発見したものをはじめ、調査研究が進んで新たな発見があった作品や近代になって価値を見出されたものなどが並びます。

「発見」にまつわる本展の作品は、通常展示作品の中にまぎれるように展示されています。館内を巡りながら、まさに「発見」体験ができるのは、本展の醍醐味の一つ。該当作品は、キャプションボードにあるこのマークが目印です。

では、目印を手がかりに、いざ展示室へ!

まず、目を奪われたのは中国漆器の数々でした。日常的に使われていたものの中には、中国では失われてしまったものの、日本では唐物として珍重され大切に保管されてきたものもあるとのこと。古美術品としてだけでなく、学術資料としての価値も高いものが多いそうです。
貝片を文様の形にして貼り付ける「螺鈿らでん」や彩漆いろうるしを塗り重ねて文様を彫り出す「犀皮さいひ」など、さまざまな漆工技法を目にすることができます。

犀皮盆(さいひぼん) 中国 南宋時代・12〜13世紀(展示は10月2日まで)
重要文化財 花鳥螺鈿硯箱(かちょうらでんすずりばこ) 中国 明時代・16世紀(展示は10月2日まで)

そして、中国といえば龍。南宋時代末期に活躍した画龍の名手、陳容の作品と伝わる「五龍図巻」は、今にも動き出しそうな龍の姿に圧倒されます。5匹の龍が雲や岩の間で互いに絡み合うようにしてうごめく様子に、思わず見入ってしまいました。

重要文化財 五龍図巻(部分) 中国、伝陳容筆 南宋時代・13世紀(展示は10月16日まで)

近年の調査研究で、この「五龍図巻」と同じような図様を含んだ画巻が、アメリカの複数の美術館で所蔵されていることが明らかになったとのこと。もともと一つの画巻だったのかなど詳細はまだ不明ですが、当時、こうした動きのある陳容風の画龍が人気だったことがうかがえます。

高橋由一の「発見」

皇帝を象徴する五爪ごそうの龍が印象的な「緑釉龍文軒丸瓦」は、日本の近代洋画の先駆者・高橋由一が江戸時代末に遣清貿易使節団として清朝の地を訪れた際に南京で入手したもの。裏面には、初めて異文化に直接触れた「発見」の興奮が記されています。

緑釉龍文軒丸瓦 中国 明時代・14〜17世紀 高橋由一氏寄贈

シルクロード探検で「発見」

どうやら未知なる異国への憧れは、今も昔も変わらないようです。19世紀末から20世紀初頭には、欧米列強が支配地域の拡大とともにシルクロード探検に乗り出してきます。日本でも、浄土真宗本願寺派第22代法主の大谷光瑞こうずいによって「大谷探検隊」が結成され、1902年(明治35年)から1914年(大正3年)までの間、3度のシルクロード探検が行われました。本展では、各国のシルクロード探検によって発見された資料の数々も多数並び、時や場所を超えて異文化へと思いを馳せることができます。

二菩薩立像 中国、敦煌莫高窟蔵経洞 五代十国〜北宋時代・10世紀 ギメ東洋美術館交換品
フランスの東洋学者、ポール・ペリオが1908年に発見したもの

多くの発見が会場のあちこちにありますが、特に「発見」気分を味わえたものを紹介します。

垂飾 平絹綾夾纈羅裂(すいしょく へいけんあやきょうけちらきれ)縫い合わせ 中国、敦煌莫高窟 曹氏帰義軍期敦煌・9~10世紀 大谷探検隊将来品
垂飾 平絹綾夾纈羅裂 縫い合わせ(部分)

垂飾すいしょく 平絹綾夾纈羅裂へいけんあやきょうけちらきれ 縫い合わせ」は、近くで見ると、さまざまな織りや染めが施された裂が使われていることがよくわかります。当時の彩りを想像するだけでも色鮮やかだったことでしょう。

ばん 淡茶地花文夾纈平絹うすちゃじかもんきょうけちへいけん淡茶地平絹うすちゃじへいけん縫い合わせ」。文様を彫った一組の板で裂を挟み、染料を注いで染めるのが「夾纈きょうけち」。染料がにじんで、輪郭が少しぼやけたようになっているのが特徴だそうです。

如来像頭部 中国、ホータン 3~4世紀

3~4世紀の如来像の頭部です。彫りが深く、口髭をたずさえている姿は、ガンダーラ(現在のパキスタン北西部)の仏像の影響を受けているとのこと。同じ展示室内にあるガンダーラの仏像と見比べてみることをおすすめします。

「アジアの占い」体験コーナーが再開!

ちなみに、東洋館にはアジアの占いが体験できるコーナーがあります。コロナ禍で長い間、お休みしていましたが、久々に再開しているので、こちらもあわせて体験してみると、よりいっそうアジアの旅気分が楽しめるはずです。

より充実した「発見」の旅にするにはガイドブックがあると心強いものです。出発前に東洋館入口すぐのインフォメーションカウンターで「調査ノート」をゲットすることをおすすめします。調査ノートは数に限りがあるのでお早めに。博物館公式サイトからPDFをダウンロードすることもできます。


また、館内の3か所には、本展の展示作品にちなんだオリジナルスタンプが置かれているので、こちらもお見逃しなく!
(ライター・岩本恵美)