鈴木其一「芒野図屏風」と復曲能「薄」が国立能楽堂で共に

国立能楽堂(東京・千駄ヶ谷)資料展示室で10月21日まで開かれている企画展「秋の風 能楽と日本美術」では、琳派の鈴木其一の代表作《芒野図屏風》(千葉市美術館蔵)が9月21日から10月2日まで展示されています。

9月23日には、国立能楽堂の企画公演として、復曲能「薄」が上演されました。これに先立ち、シテ方金剛流二十六世宗家・金剛永謹さんと千葉市美術館長の山梨絵美子さんが《芒野図屏風》を鑑賞しました。
金剛さんが「能は秋とススキの曲が多いのです。この作品は秋のはかなさが表現された、お能的な幽玄を感じますね」と話すと、山梨さんは「其一の作品の中でもナンバー5には入る優品です。其一は能に造詣が深く、謡曲もよく知っていました。この作品についても、能のススキをイメージしていたかもしれません」と話していました。
《芒野図屏風》は、おそらく銀が使われているため、劣化が進む可能性から、一般に展示される期間が限られています。この日は、今回が初演の復曲狂言「空腹」の上演、復曲能「薄」の上演、《芒野図屏風》の展示、さらにロビーでは京都の老舗の京菓匠「笹屋伊織」がススキをモチーフにしたオリジナルの上菓子を販売していました。其一ら江戸時代の文化人たちが楽しんだ総合芸術としての能・狂言の空気がより伝わったのではないでしょうか。

企画展「秋の風 能楽と日本美術」は10月21日まで。入場無料、月曜休室(月曜祝日の場合は火曜休室)。
(読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)
・国立能楽堂のHP