芸術新潮10月号 特集は「利休生誕500年記念 闘う茶の湯」 千利休の革新のヴィヴィッドさとは?

芸術新潮10月号が9月24日に刊行されました。今年は千利休が生誕して500年の節目の年で、今号の特集は「闘う茶の湯」です。
歴史学者の磯田道史さん(国際日本文化研究センター教授)と、茶人で日本美術史研究者の千宗屋さん(武者小路千家家元後嗣)が、茶室でお道具を挟んで向き合い、歴史と茶の湯について縦横無尽に語り合います。
担当した編集部の天野祐里さんは
「千利休によるわび茶の成立というと、いかにも大昔という感じがしますが、従来なかった価値観を打ち出す人が出現して、それが社会に定着するということはもちろん近現代にもあることです。
柳宗悦の民藝はもちろんそうですし、もっと身近なところでは藤原ヒロシによるストリートファッションの発見もある。
それらに比べ、時代が遠いためにわかりにくくなっている、利休の革新のヴィヴィッドさを伝えられればと思いながら特集を作りました。
特集の柱は、武者小路千家の千宗屋さんと、歴史学者の磯田道史さんの対談です。
場所は大阪の藤田美術館。
磯田先生は、ガラスケース越しに茶器を眺めながらお話するのだろうと思ってお越しになったのですが、藤田美術館のご厚意により、館内の茶室に並べたお道具をお二人でためつすがめつしながらの対話がかないました。
磯田先生にとってはほとんど初めて見るものばかりで、とても興奮しておられたのが印象的でした。特に古井戸茶碗「老僧」のかいらぎには、「まるでマグマのようだ」「知ってしまう悲しみというのもあるんだよ」と。
「老僧」には秀吉を感じるし、「本手利休斗々屋茶碗」には利休を感じる、という感想は歴史研究者ならではですよね。
利休のご子孫である千宗屋さんは、利休をシティボーイというふうにも言っておられるんですが、私自身、今回、利休ゆかりの数々のお道具を拝見させていただく中で、その捉え方にとてもしっくりする感じを持ちました」
と話しています。
第2特集「風狂、スティーブ・ジョブスが愛した日本」は、ジョブスと日本文化の関係を解き明かすアメリカ在住ライターの柳田由紀子さんによるルポです。ジョブズは利休のように禅にはまっていた人でした。第1特集と第2特集の組み合わせは偶然だそうですが、日本と20世紀のアメリカの禅が出会う形となり、読み応えがあります。
また、第1特集で登場する茶の湯の写真は、対談場所となった藤田美術館の名品だけでなく、キャプションに★が付いているものは、特別展「京(みやこ)に生きる文化 茶の湯」(10月8日~12月4日、京都国立博物館)に出品される作品です。特別展の予習や復習にも使える1冊です。
定価1500円。購入は、書店や芸術新潮のサイトから各インターネット書店で。
(読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)