【開幕】「旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる」東京都庭園美術館で、11月27日まで

戦前期の絵葉書によるインスタレーション

旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる
会期:2022年9月23日(金・祝)~2022年11月27日(日)
会場:東京都庭園美術館
開館時間:10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(ただし10月10日は開館)、10月11日(火)
入館料:一般1,400円/大学生(専修・各種専門学校含む)1,120円/中・高生700円/65歳以上700円
詳しくは公式HP

コロナ禍によって、この2年半余り、世界中の人々が旅行を制限されました。この期間に、旅への思いが募ったり、旅とはいったい何だろうかと考える機会も増えたのではないでしょうか?

東京都庭園美術館で、9月23日から始まった企画展「旅と想像/創造 いつかあなたの旅になる」では、偉大な旅の先人の足跡をたどったり、現代アーティストのインスタレーションを通じて、<旅>について色々と考えるきっかけを提供してくれます。

絵葉書の拡大図
戦前期の絵葉書によるインスタレーション

入口近くの「香水塔」前では、戦前の様々な絵葉書によるインスタレーションが出迎えてくれます。懐かしくも、美しい風景や名所などを眺めていくと旅情が高まります。

アール・デコ博覧会の会場視察のイメージを再現した展示

まず、取り上げられるのは庭園美術館の本館建築に大きな影響を与えた朝香宮夫妻の100年前の欧州旅行、いわゆるグランドツアーです。1925年、朝香宮夫妻は、パリで新時代の装飾のあり方をテーマとした「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」(通称「アール・デコ博覧会」)を公式に視察。これに強い影響を受けて、旧朝香宮邸が作られました。その鮮烈なイメージを収蔵品や映像などで再現しています。

民族衣装を取り入れたフォークロアシリーズ
《ポーランドルック 1982-83秋冬》

続いて、旅から影響を受けた世界的なファッション・デザイナーの高田賢三(1939-2020)と、鉄道関連資料収集家の中村俊一朗(1941-)を、偉大な先人として紹介しています。高田は、最初の東京五輪が開かれた1964年、朝香宮が1922年にたどったのとほぼ同じ航路で、横浜港からフランスに渡りました。この旅で得た見聞は、世界各地の民族衣装を取り入れた「フォークロアシリーズ」へとつながっていきます。様々な作品を並べることで、ファッションで世界を旅することができます。

再現された中村俊一朗のホビールーム

一方の中村は40歳代から、20世紀前半の鉄道ポスターの収集を始めました。今では鉄道にまつわる書籍、パンフレットから鉄道パーツにまでコレクションの幅は大きく広がっています。「旅には興味ない」という中村の収集品が、見るものに旅行の記憶などを呼び起こすのは興味深いことです。

《「旅」と「土」》

最後に現代アーティストによるインスタレーションが展開されます。20歳代半ばから、バックパッカーとして世界各地を回り、人間と自然に対する思考を深めてきた栗田宏一(1962-)は、日本各地で採取した土を並べて展示しています。ふだん見慣れている土が、場所によって、こんなにも多種多様な色彩を持っていることに新鮮な驚きを感じます。また、約300日間の採取を記録した絵葉書も飾られています。

宮永の作品

宮永愛子(1974-)は、常温で気化するナフタリンや川で採取した塩など、周囲の影響を受けやすい素材を使い、時間とともに形が変容していく作品を発表しています。トランクに、ナフタリンでかたどられた白いカギが閉じ込められている作品は、コロナ禍で移動の自由を奪われた自分たちを見ているような気持にもさせられます。これから時間が経つに従って、どのように変容していくかも気になります。

そのほか、世界各地で録音した音源を、立体音響システムを使って、新たな聴覚体験に誘うインスタレーションなど、意欲的な作品が揃っています。旅行へ格別な思いを抱いていた人々の熱に触れることで、鑑賞し終わった後は、自分の中で新たな旅への思いが膨らんでいるのでないでしょうか。(読売新聞美術展ナビ編集班 若水浩)