【ルポ】東海道の町並みと現代アートの出会い 国際芸術祭あいち2022 有松地区

のれん状の絵画が家々の軒先に吊るされ、会場を彩っています

愛知県内の4会場で開催中の「国際芸術祭あいち2022」。東海道の古い町並みが残る名古屋市緑区の有松地区はそのひとつ。伝統的な日本家屋が織りなす落ち着いた景観と現代アートの出会いが新鮮です。(美術展ナビ編集班 岡部匡志)

東海道の池鯉鮒宿(ちりゅうじゅく)と鳴海宿(なるみしゅく)の間に、慶長13年(1608年)に開村した有松。絞り染めの有松・鳴海絞りの産地として栄え、伝統工芸として今も受け継がれています。緩やかに曲がったおよそ800メートルの旧街道沿いに、間口の広い絞商の家屋や門・塀が残り、町並みが継承されています。国から「重要伝統的建造物群保存地区」に選定され、同地区の文化・伝統を語るストーリーから「日本遺産」にも認定されています。

名鉄線で名古屋市中心部から30分ほど。会場は有松駅の周辺で、気軽に回れます

あちこちの家屋の軒先を彩っているカラフルな作品は、タイの少数民族出身、ミット・ジャイインの《ピープルズ・ウォール(人々の壁)2022》。人々の暮らしに絵画を共存させるとともに、権威主義や君主制に抗う市井の人々のちからを象徴するメッセージも込められています。

サモア出身の注目のアーティスト、ユキ・キハラの《サーモアのうたーFanua(大地)》(2021)。日本人の父とサモア人の母をもつユキ・キハラ。サモアの伝統的なテキスタイルと振袖が融合した作品にはサモアが直面する文化や環境、社会経済の諸問題が描かれています

AKI   INOMATAの映像作品《彼女に布をわたしてみる》(2022)。旧家の重厚な環境と不思議とよくマッチしていました。

徳川14代将軍、家茂が寄られたと伝えられ、有松を代表する建物のひとつである竹田家住宅の茶室「栽松庵」には、メキシコ生まれのガブリエル・オロスコの《ロト・シャク(回転する尺)》。日本を含む東アジアで広く使われる長さの単位「尺」に触発されたもの。

ドイツを拠点にするアーティスト・デュオ、プリンツ・ゴラームは、竹田家住宅の壁や欄間に奇妙な顔の仮面をかけました。コロナ禍によって、マスクや仮面が持つ意味合いや重みも変わったことを感じます。竹田家住宅には河井寛次郎や棟方志功と竹田家の人々が一緒に撮影した写真も残されていて、文化的にも厚みのある地域だったことが伺えます。

鮮やかなリボンのような布が天井から舞うように展示されていました。マレーシア出身のイー・イランの《ティカ・レーベン(マットのリボン)》。

愛知県生まれで、三重県を拠点に活動する宮田明日鹿は、芸術祭開幕のひと月半前から「有松手芸部」を立ち上げました。地域の人々や来場者とともに、編み物とおしゃべりをつうじて新たなコミュニティを作る試みです。

伝統的な建築空間を生かして、有松地区では屋内外12か所で展示が行われています。建物や町並みと作品がよく調和していて、落ち着いて鑑賞できます。時事性に富んだ問題意識の作品が並び、刺激的でもあります。名古屋市中心部から30分ほどという距離。名古屋に立ち寄りの際、町並みを楽しむこともあわせてぜひ足を運んでほしいです。「国際芸術祭あいち2022」は10月10日まで。

新着情報をもっと見る