【プレビュー】現代日本を代表するアーティスト、半世紀近くにおよぶ創作活動を一挙に紹介――東京国立近代美術館で「大竹伸朗展」 11月1日開幕

©︎Shinro Ohtake, photo by Shoko

「大竹伸朗展」
会場:東京国立近代美術館(東京都千代田区北の丸公園3-1)
会期:2022年111日(火)~2023年25日(日)
休館日:月曜休館、ただし1月2、9日は開館。年末年始(12月28日~1月1日)と1月10日は休館
観覧料:一般1500円、大学生1000円、高校生、18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその介添者(1名)は無料
※本展の観覧料で入館当日に限り、同時開催の所蔵作品展「MOMATコレクション」もご覧になれます。
アクセス:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口から徒歩3分
※愛媛県美術館(2023年5月3日~7月2日)、富山県美術館(8月5日~9月18日)(仮)に巡回予定
詳細情報は公式サイトで。
問い合わせ:ハローダイヤル(050-55541-8600)へ

大竹伸朗(1955―) は、1980年代初めに華々しくデビューして以来、絵画、版画、素描、彫刻、映像、絵本、音、エッセイ、インスタレーション、巨大な建造物に至るまで、旺盛な創作意欲でおびただしい数の仕事を手掛け、時代のトップランナーであり続けてきた。近年ではドクメンタ(2012年)とヴェネチア・ビエンナーレ(2013年) の二大国際展に参加するなど、現代日本を代表するアーティストとして海外でも高い評価を得ている。また国内でも「東京2020 公式アートポスター展」への参加、国指定重要文化財「道後温泉本館」の保存修理工事現場を覆う巨大なテント幕作品《熱景/ NETSU-KEI》の公開など、精力的に活動を続ける。開館70周年を迎える東京国立近代美術館で開かれるこの展覧会は、大竹にとっては2006年に東京都現代美術館で開催された「全景  1955–2006」以来となる大規模な回顧展。国際展への出品作品を含む約500点を7つのテーマに基づいて構成、1982年の初個展から40年、半世紀近くにおよぶ大竹の創作活動を一挙に紹介する。

《ミスター・ピーナッツ》 1978-81年 91×72.5cm 個人蔵

あらゆる素材、あらゆるイメージ、あらゆる方法。作者が「既にそこにあるもの」と呼ぶテーマのもとに半世紀近く持続してきた制作の軌跡。今回の展覧会は、7つのテーマ「自/他」「記憶」「時間」「移行」「夢/網膜」「層」「音」に基づいて構成されている。作品が制作された時代順にこだわることなく、テーマに沿って作品は並べられ、小さな手製本から巨大な小屋型のインスタレーション、作品が発する音など、様々な「もの」と「音」が空間を埋め尽くす。

《モンシェリー:自画像としてのスクラップ小屋》 2012年 Commissioned by dOCUMENTA(13) Photo:山本真人

「全く0の地点、何もないところから何かをつくり出すことに昔から興味がなかった」と語る大竹の表現は、彼が「既にそこにあるもの」と呼ぶ他者との共同作業であり続けてきた。自画像やこれまで大竹を形成してきた人物や風景などのイメージの群れがずらりとひしめく壁。9歳の頃の作品から近年の大作《モンシェリー:自画像としてのスクラップ小屋》(2012年)まで、大竹の創作活動の歳月を凝縮したのが「自/他」のセクションだ。

「自/他」の共同作業によってゆらぎ変容する自己をつなぎとめるのは「記憶」。たわいもない印刷物やゴミとされるようなものまで、ありとあらゆるものを貼り付け、作品にとどめていく大竹の制作は、それ自体が忘却に抗う記憶術だといえる。その作品が喚起する光景は、大竹個人の記憶にとどまらず、物質に刻まれた記憶の可能性をも問いかけるもの。「記憶」のセクションは「時憶」「憶景」「憶片」など、記憶に対する大竹の関心を示すシリーズを中心に構成される。

《憶景 14》 2018年 153×133×9.2cm

そのときどきに形を変えるものとして「記憶」を捉えている大竹にとって、「時間」は他の物質とならぶ素材のひとつ。このセクションでは30年もの刻をかけて変化した素材を用いた作品や、30分間の制限を設けて全く無計画に描きあげた作品などを紹介する。

「時間」は拾い、集め、貼り合わせて厚みを増す材料であり、ときには不確定な偶然を呼び寄せてくれる道具でもある。半世紀近い活動を通じて作品の中に折りたたまれた「時間」は、大竹自身の様々な場所への「移行」によって彩られる。「移行」のセクションで現れるのは、大竹が世界各地、日本の津々浦々から集めたローカルな図像。模写や切り貼りによって、元々あった場から何かを転移させることで作品を成り立たせる大竹にとって、「移行」とは作者の身体的な移動だけでなく制作方法をも意味する。

《ひねもす叫び 新宿/新潟/熊本》 1999年 46.1×70.2cm

「移行」という制作方法を、物質的ではないやり方で試みたのが「網膜」シリーズ。捨てられていたポラロイド写真が、漠然と思い描いていた夢のようなイメージを「あまりに忠実に再現している」ことを発見した大竹は、その上にどろどろの透明な樹脂を乗せた。樹脂の質感と写真の色彩は独立したまま重なり、見る者の目の網膜や脳の中で場所を移し、混ざり合うことで、作品が完成した。

「夢/網膜」において重なり合うのは実体のないイメージだが、大竹の制作の基本となるのは、物質の寄せ集めと切り貼り。「層」のセクションでは、印刷製本技術の粋を凝らした豪華本と、主に既製印刷物のカラーコピーを編集して綴じた手製本を一挙に紹介する。

《網膜 (ワイヤー・ホライズン、タンジェ)》 1990-93年 274×187×20cm 東京国立近代美術館

大竹が積み重ねる「層」の素材は音も含む。1982年の初個展よりも前から、大竹にとって音は重要な要素であり続けた。「音」のセクションでは、初期のサウンド・パフォーマンスや、ステージそのものを作品化した大作《ダブ平&ニューシャネル》(1999年)など、音にまつわる作品を紹介する。

《ダブ平&ニューシャネル》 1999年 公益財団法人 福武財団

展覧会を締めくくるのは、最新作《残景  0》(2022年)と最新のスクラップブック。前者は2019年以降大竹が取り組む「残景」シリーズの最新作で、その制作過程を追ったドキュメンタリー「21世紀のBUG男 画家・大竹伸朗」(BS8K、2022年6月放送)も会場内で上映される予定になっている。また、大竹がライフワークとしてほぼ毎日制作しているスクラップブックも1977年の1冊目から最新の71冊目まですべて展示される。

《残景 0》 2022年 212×161×16cm Photo:岡野圭

スナックの看板をモチーフにした代表作《ニューシャネル》(1998年)をはじめとした「大竹文字」Tシャツなどで人気を博している大竹伸朗グッズだが、今回の展覧会ではオリジナルのニューグッズが続々登場することにもなっている。

(読売新聞美術展ナビ編集班)

 

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