アートが果たす大きな役割 豊かな個性の発露を楽しむ 「あの子と一緒~vol.2~」&小山このか個展 文京シビックセンターで8月30日まで

「行きたいところ」をテーマに、実に多彩な表現が見られます

展覧会「あの子と一緒~vol.2~」&小山このか個展
会場:文京区役所アートウォールシビック(東京都文京区春日1-16-21 文京シビックセンター地下1階吹き抜け周囲)
会期:2022年8月2日(金)~8月30日(火)
時間:9:00~17:00
入場無料
会場についてはサイトへ。
小山このかさんと、自作の「ママ!モンスターが来たよ!」2021年

遊びを通して小さな声を届けるアート作品を創作している美術作家、小山このかさんの活動を紹介する展示です。小山さんは文京区総合福祉センターに通う知的障がい者を対象にワークショップを展開しており、今回はそこで子どもたちが制作した作品を紹介しています。

自分の顔、をテーマにした仮面(今年6月18日のワークショップ)

東京藝大で美術を学び、現在は東京大学大学院学際情報学府でマイノリティ当事者理解に向けた研究を行っている小山さん。重度の自閉症の弟と一緒に過ごした経験などを生かし、以前から放課後に同福祉センターへ通う10~19歳の子供たちとワークショップを重ねています。絵画や立体など、様々なジャンルや画材に挑戦しています。

「行きたいところ」をテーマにした段ボール作品(今年6月4日のワークショップで作成)

コミュニケーションのツールとしてのアート

小山さんは「ウチの弟もそうですが、言葉でコミュニケーションを取ることが難しい子たちにとって、アートはコミュニケーションの手段のひとつとして有効です。『自分の気持ちが伝えられない』というストレスを発散する、という効果があります。アートに限らず、音楽なども同じような役割を果たします」と説明します。

みんながみんな、すぐに制作に取り掛かるわけではなく、「自分は絵なんかいやだ」という態度を示す子も珍しくないそうです。そういう時には小山さんがテーマに沿ったモチーフを即興で描いたり、その子が好きなものを描いてあげたりして、促すなどしますが、「描きたくなければ描かなくていい。友達が作っているのを見ていてもいいし、それでだんだんやる気になる時もあります」。

ファッションをテーマにしたワークショップ(今年3月7日開催)の作品。「自分が着たいものを描く」というテーマが理解されています

アートが果たす多彩な効果

うまく描かなくていい、ということが重要、と小山さん。「学校ではどうしても上手に描ける子がほめられ、上手くない子はつまらない。それが理由で段々アートが嫌になってしまう事が珍しくありません。ワークショップでは、自分が伝えたいものを作る、ということがすべてです」。

言葉のコミュニケーションが取れない子が、与えられたテーマに沿った作品を描き始めることで、「この子は周辺のやりとりの内容を理解している」ということが分かり、スタッフが驚くという場面もあります。今回のようにパブリックなスペースに作品が掲示される効果は大きく、実際に会場を訪れたり、家族やスタッフから褒められたりすることで、より制作に前向きになる事が多いそうです。

小山このか「ママの正体は?」 2021年

会場では2歳の子供を子育て中の小山さんが、自らをアマビエになぞらえたユニークな作品や、プログラムしたゲームの紹介などもあります。「自作の制作はもちろん、ワークショップも大切な活動なのでこれからも長い目で続けていきます」と話していました。

会場の「文京シビックセンター」は東京メトロ丸の内線・南北線の後楽園駅や都営三田線・大江戸線の春日駅、JR総武線の水道橋駅などから近く、都心からも便利です。高層ビルの吹き抜けの気持ち良い空間に展示されています。ちょっと足を伸ばしてみてはいかがでしょう。来場を考えている方へのメッセージとして、小山さんは「同じテーマでも実に多様で、自分が描きたい、という気持ちが伝わってくる作品が並んでいます。そうしたところを楽しんでいただければ嬉しいです」と話していました。

(読売新聞美術展ナビ編集班 岡部匡志)

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