【プレビュー】「マン・レイのオブジェ 日々是好物|いとしきものたち」DIC川村記念美術館で10月8日から オブジェに特化した国内初の展覧会

《破壊されざるオブジェ》1923/75年 メトロノーム、写真 11.5×11.5×22.2 cm 東京富士美術館 © MAN RAY 2015 TRUST / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 G2928

マン・レイのオブジェ 日々是好物|いとしきものたち

20世紀にアメリカとパリで活躍した芸術家マン・レイ(1890~1976年)は、ユダヤ系アメリカ人として生まれ、言葉の壁、そして大戦に翻弄されながらも、多くの芸術家や愛する人との出会いと別れによって、自身の世界を広げていきました。

マン・レイはその生涯で、絵画をはじめ写真、オブジェ、映画など多岐にわたる作品を手掛けていますが、本展では、活動の後期より「我が愛しのオブジェ」と称したオブジェ作品に注目します。

オブジェに特化した展覧会は国内初となり、国内所蔵のオブジェおよそ50点を軸として、関連する作品や資料を合わせた約150点が紹介されます。

1章 アメリカのマン・レイ(1890–1921)

アメリカのフィラデルフィアで生まれ、高校卒業後には両親の反対を押し切り画家を志し、初期はキュビスムに傾倒した絵画を描きました。最初の結婚や、フランス出身の芸術家マルセル・デュシャンとの出会いを通して世界を広げる中で、前衛的なオブジェの制作も始めます。

初めての個展の際に、自身の作品を記録しようと撮りはじめた写真。これがきっかけとなり、マン・レイは思いがけず写真家としての才能を開花させることとなりました。

この章では、マン・レイ最初期の油彩や実験的な絵画作品、オブジェ、写真などが紹介されます。

《ニューヨーク 17》1917/66年 鉄、万力 45.0×24.0×24.0 cm DIC川村記念美術館 © MAN RAY 2015 TRUST / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 G2928

2章 パリのマン・レイ(1921–1940)

1921年、憧れの地であるパリへ。その卓越した写真技術はパリでも有名になりました。マン・レイの代表作のひとつ《アングルのヴァイオリン》が制作されたのもこの頃。同時代の芸術家との交友や、恋人たちと過ごした日々は、生活と作品に影響を与えました。

本章では、パリにおける初めての個展で制作した、アイロンに鋲(びょう)を一列に取り付けたオブジェである《贈り物》や、《破壊するべきオブジェ》から名前を変奏させ生涯繰り返し制作していくメトロノームに瞳の写真を付したオブジェなど、マン・レイが、パリでの暮らしを謳歌した1920–30年代の作品が紹介されます。

《贈り物》1921/74年 アイロン、鋲 16.5×10.0×10.0 cm 個人蔵 © MAN RAY 2015 TRUST / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 G2928

ほかにも、カメラもレンズも使わずに「もの」の像をそのまま映し出した写真である「レイヨグラフ」、単なる記録を超えた象徴的でオブジェのような写真、1920年代に取り組んだ「動く写真」である映画など、多岐にわたる作品を展望します。

3章 オブジェの展開(1940–1976)

第2次世界大戦の戦禍をまぬがれ、マン・レイはアメリカに戻ります。パリに置いてきた作品たちを取り戻すかのように、自ら撮影した写真をもとに過去の作品の再制作にも励みました。

「創造するのは神聖な行為、複製するのは人間的な行為」として作品が生まれるアイデアを重視したマン・レイ。同じ主題のオブジェを繰り返し制作するなかでも、オリジナルの再現にとどめず、それぞれ個性を与えて増殖させました。

本展では、メトロノーム作品4点、アイロン作品3点、さらに写真とオブジェなど、同じモチーフが複数展示されることにより、彼が作品に与えたそれぞれの個性を対比して見ることが出来ます。

1951年には再度パリに渡ります。創作意欲は衰えず、遊び心とウィットにあふれたオブジェを多く生み出しました。

《ミスター・ナイフとミス・フォーク》1944年 木、ネット、ナイフ、フォーク、ビロード 34.3×24.1×4.4 cm 東京富士美術館 © MAN RAY 2015 TRUST / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 G2928
《アストロラーベ(天体観測器)》1957年考案(1964年までに再制作) 木製の台座、真鍮、銅、彩色されたスティール、拡大鏡 高さ67.5 cm 石橋財団アーティゾン美術館 © MAN RAY 2015 TRUST / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 G2928
《ブルー・ブレッド》1958年 青く塗られたフランスパン、鉄の秤 バゲット全長73 cm 島根県立美術館 © MAN RAY 2015 TRUST / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 G2928

本展では、ストックホルム近代美術館の協力で、マン・レイが「我が愛しのオブジェ」と題して約30点のオブジェを取り上げた、日本初公開となる手書きのアルバムの内容が、全ページ日本語字幕とともにスライドショーにて紹介されます。

《セルフ・ポートレイト/ソラリゼーション》1932/77年 ゼラチン・シルバー・プリント 30.0×21.7 cm 東京富士美術館 © MAN RAY 2015 TRUST / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2022 G2928

「我が愛しのオブジェ」の数々から、生涯を通して認められたいと切望した絵画や、高く評価されながらも「写真は芸術でない」と突き放した写真とは違った、純粋で軽やかな制作の楽しみを感じることが出来るでしょう。
(読売新聞デジタルコンテンツ部)

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