【京のミュージアム #8】相国寺承天閣美術館 教科書で見た実物がここに 「武家政権の軌跡-権力者と寺」展 12月11日まで

相国寺の承天閣美術館で、室町時代の創建時から江戸時代までの武家政権との関係を示す肖像画や墨蹟、絵画、古文書などを紹介する展覧会が開かれています。相国寺は臨済宗相国寺派の大本山で、室町幕府第三代将軍の足利義満によって創建されました。京都五山の第二位に列せられ、時の権力者と深く関わって来ました。境内には本山をはじめ十三の塔頭寺院が、山外塔頭には鹿苑寺(金閣寺)、慈照寺(銀閣寺)、真如寺があります。展覧会ではこれらに伝わる、普段目にすることの出来ない室町幕府歴代将軍の肖像画や、中国絵画、中国皇帝の勅書などⅠ、Ⅱ期合わせて96件が展示されます。このうち1件が国宝、11件が重要文化財で34件が初公開です。
企画展「武家政権の軌跡-権力者と寺」展
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会期
2022年8月8日(月)〜12月11日(日) -
会場
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休館日
10月7日(金)~10月15日(土)
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開館時間
10:00〜17:00 (入館は午後16時30分まで) -
拝観料
一般800円、65歳以上・大学生600円、中高校生300円、小学生200円 -
アクセス
地下鉄「今出川」駅3番出口から下車徒歩8分、市バス「同志社前」下車徒歩6分、同「烏丸今出川」下車徒歩8分 - カレンダーへ登録
【第1展示室】 第1章 足利将軍の寺
展示は第一、第二展示室に別れ、5章からなります。第1章は「足利将軍の寺」。相国寺は足利家の邸宅・花の御所の東隣にありました。足利家の菩提寺の役割を果たし、それぞれの塔頭には義満以後13人の将軍の位牌(14代義栄を除く)が安置されていました。また、追善供養の法要で拝するための肖像画も制作されます。廃絶した塔頭に伝わった位牌と肖像画も、統合した別の塔頭などに伝わっており、足利家との深い関係を示しています。

義満は相国寺を創建した

八代将軍義政は東山文化を開花させた人です。応仁の乱が起きたときの将軍でもあります。他の将軍の肖像画は比較的穏やかな顔をしているのですが、義政は厳しい表情に見えます。背景を知りたくなって来ます。今も相国寺の塔頭である慈照院に墓が残っています。

「

義満の山荘北山殿(後の鹿苑寺)の、三層あった舎利殿(通称金閣)の最上層に掲げられていた額。後小松天皇の直筆です。かなり薄くなってはいますが、上に展示された写しと合わせてよく見ると、「
【第2展示室】 第2章 乱世の寺


公帖とは禅林官寺の住持職を任命する辞令のことです。歴代の足利将軍が発給者でしたが、天正14年5月以降は豊臣秀吉に替ります。相国寺第九十二世の
第3章 江戸幕府と寺

徳川幕府は将軍の代替わりごとに寺領安堵の朱印を発行しました。その度に籠に朱印状を入れて江戸まで行ったそうです。応仁の乱から戦国時代にかけて多くの寺が寺領を失い、存亡の危機に瀕しています。寺領を安堵してもらうのは必須のことだったのでしょう。

江戸時代の朝鮮通信使については、対馬藩が取り仕切っていたような印象があります。でも、五山の僧が深く関わっていました。五山の僧が持ち回りで2~3年ほど対馬に駐在し、外交事務や通訳・案内などの役割を果たしていたそうです。幕府も漢文など僧の高い学識を頼りにしたのでしょう。
第4章 武家に示した寺宝 第5章 武家の求めた至宝
江戸時代、相国寺はたびたび幕府に宝物の届け出をしています。今回は幕府の巡見の際に差し出した目録「本山塔頭什物記」が展示されています。「

「明永楽帝勅書」は中国・明の永楽帝が遣明使に発給した勅書です。皇帝の象徴である五爪の龍と瑞雲文が字の背後に見て取れます。足利義満を[日本国王]とした文字もあります。永楽帝は永楽元年(1403)に足利義満を[日本国王]として、中国を宗主国とする冊封貿易を開始します。義満の周辺はこうした貿易で、多くの唐物と呼ばれる大陸からの文物で溢れることになります。「後小松天皇宸翰 叢林秘事」は目録「本山塔頭什物記」の筆頭に記載されています。宸翰とは天皇の自筆文書のことで、これは当時の内大臣が写したものです。

「鳴鶴図」は相国寺第六世の
歴代足利将軍の肖像画や永楽帝の勅書など、教科書や本で見た写真の実物が目の前にあります。また多くの公帖や朱印状、朱印状櫃や通信使国書櫃など歴史の証人のような文物は、歴史に関心のある者にとっては見逃せない展示でした。
◆相国寺承天閣美術館
相国寺(正式名称・萬年山相国承天禅寺)の創建600年を記念して、昭和59年4月に建設された。本山相国寺や鹿苑寺(金閣)、慈照寺(銀閣)、その他塔頭に伝わる美術品を保存、展示公開、修理、研究調査を目的としている。伊藤若冲や円山応挙、長谷川等伯など数多くの文化財を収蔵しており、国宝は5点、重要文化財は145点に及ぶ。
★ ちょっと一休み ★
相国寺の西、烏丸通りに面してある「果物&フルーツパーラー」ヤオイソ烏丸店。果物店も兼ねていてマンゴー、パイン、グレープ、メロン、イチゴ、桃、パパイヤなどなど、それぞれの果物の食べ頃を見極めたメニューが特徴。フレッシュなジュース、パフェや季節のフルーツを挟んだサンドイッチも人気だ。いくつかを組み合わせたセットメニューもある。筆者が選んだのは桃のパフェ(1210円)。桃の上に生クリーム、下にはアイスクリーム。それぞれの甘さが出しゃばらずにマッチして、上品な甘さでした。正月を除いて定休日はなし。営業時間は午前10時から午後5時。
(ライター・秋山公哉)