【レビュー】でっかい、すっごい、中央アジアにはロマンがいっぱいだ――国立科学博物館で「化石ハンター展 ~ゴビ砂漠の恐竜とヒマラヤの超大型獣~」

パラケラテリウムの全身骨格(国立科学博物館蔵)の展示風景

化石ハンター展 ~ゴビ砂漠の恐竜とヒマラヤの超大型獣~

※詳細情報は公式サイト(https://kaseki.exhn.jp/)で確認を

ロイ・チャップマン・アンドリュース(18841960)。20世紀初頭に活躍したこの探検家/古生物学者の業績を見ていると、映画やドラマでおなじみ「インディアナ・ジョーンズ」の姿が脳裏に浮かぶ。聖櫃や聖なる石を求めて世界中を飛び回ったインディアナ・ジョーンズは様々な危機に遭遇し、奇想天外な冒険を繰り広げたわけだが、1922年から30年にかけて「中央アジア探検隊」を率いてゴビ砂漠の発掘調査を行ったアンドリュースも、なかなかの経験をしたらしい。そのエピソードはともかくとして、史上に残る「化石ハンター」としてのアンドリュースの業績にスポットを当て、彼に続く「ハンター」たちが中央アジアで見出したものをまとめたのが、「探検隊」のスタートから100周年を記念した今回の展覧会だ。

ロイ・チャップマン・アンドリュース ⓒAmerican Museum of Natural History – Research Library
イワシクジラの頭骨(国立科学博物館蔵)の展示風景

展覧会は7章構成。第1章は「伝説の化石ハンターの誕生」で、アンドリュースの生い立ちと、ゴビ砂漠への探検に至るまでが解説される。本来、アンドリュースは「人類を含む哺乳類誕生の起源はアジアにある」という仮説を証明する化石を発見しようと考えていたのだそうだ。中央アジア探検の前、アンドリュースは日本に滞在し、クジラなどの調査も行っている。上に掲げたのは、研究対象だったイワシクジラの頭骨。不思議なもので、化石には何かヒトの心を揺さぶるような神秘的な存在感がある。この頭骨にも、凡百のアーティストには作れないオブジェとしての魅力が漂っている。

展示風景
展示風景

1922年に「中央アジア探検」を始めたアンドリュース。彼が調査をする前は、ゴビ砂漠が「化石の宝庫」だとはまるで考えられていなかったそうなのだが、まあ、何かの手応えがあったのだろう。彼の探検隊は、すぐに大きな成果を挙げることになった。特に「炎の崖」と呼ばれる発掘地からは、恐竜の卵をはじめ、プロトケラトプスやオビラプトルなど数多くの化石が発見された。アンドリュースの後を追って、いろいろな国の調査隊がゴビ砂漠へと向かい、新たな成果を挙げることになる。第2章、第3章はその紹介で、数多くの標本が並んだ展示会場は壮観そのものだ。アンドリュースの発掘調査は、そもそも「哺乳類」の化石を求めてのものだったが、もちろんその成果もある。冒頭の画像の骨格標本、史上最大級の陸生哺乳類「パラケラテリウム」の化石の発見もそう。此奴はサイの仲間だそうなのだが、どうしてこんなにでかいのか、何をどうして生きていたのか、何が楽しみだったのか、あれこれ考えてみたくなる。

展示風景
展示風景

第5章、第6章は、うってかわってチベット高原が舞台。極寒の地であるチベット高原は、哺乳類にとって厳しい寒さに対応するための「訓練の地」としての役割を持っており、そこで寒冷気候に適応できるようになった哺乳類たちが氷河時代にユーラシア大陸各地に散らばっていったという。「アウト・オブ・チベット説」といわれるこの学説が、チベットケサイの生体復元モデルの展示などとともに紹介される。チベットケサイだけでなく、アルガリ、ユキヒョウなど、展示されている哺乳類のモデルを見ていると、骨格標本の恐竜たちとはまた違った「温かい」味わいがある。皮膚や体毛があるので、「血が通った」親近感があるのである。発掘が行われたチベット高原の美しい風景も印象的だ。

展示風景

想像力を刺激する恐竜たちの骨格標本。どこか温かさを感じさせる哺乳類たちの姿。知的好奇心をくすぐり、冒険心をかき立てられる展示の数々。夏休みに親子連れで楽しむには、格好の展示だろう。中央アジアはいろいろ政治的・宗教的に複雑なところもありそうで、これだけの発掘作業の裏側には、さぞかしシロウトには分からない苦労もあったのではないか、と思ったりもする。天山山脈の辺りには、まだまだ調査の手の及んでいない場所もあるようで、「化石ハンター」たちの活躍は今後もさらに続くのだろう。まあ、凡人である私たちは、大賑わいのグッズショップでチベットケサイのぬいぐるみでも買って、冒険の夢を見ることにでもいたしましょう。

(事業局専門委員 田中聡)

グッズショップも盛況だ

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