【開幕】空間を自在に満たす「有」と「無」のリズム 「国立新美術館開館15周年記念 李禹煥」展 11月7日まで

《関係項ーアーチ》2014/2022年 石、ステンレス 作家蔵 背景は東京ミッドタウン

国立新美術館開館15周年記念 李禹煥
会場:国立新美術館 企画展示室1E[東京・六本木]
会期:2022年8月10日(水)~11月7日(月)
休館日:火曜日
アクセス:東京メトロ千代田線 乃木坂駅 青山霊園方面改札6 出口(美術館直結)、東京メトロ日比谷線 六本木駅 4a 出口から徒歩約5 分、都営地下鉄大江戸線 六本木駅 7 出口から徒歩約4 分
入館料:一般1,700円、大学生1,200円、高校生800 円
※中学生以下は入場無料。
※障害者手帳をご持参の方(付添の方1名を含む)は入場無料。
詳しくはhttps://leeufan.exhibit.jp/へ。

戦後日本美術で最も重要な動向のひとつである「もの派」を牽引した作家として広く知られ、国際的にも高く評価される李禹煥(リ・ウファン)(1936~)。東京では初めてとなる大規模な回顧展がはじまりました。

《関係項ーエスカルゴ》2018/2022年 石、ステンレス 作家蔵 こちらの背景には六本木ヒルズ

初期作から新作まで、半世紀を超える作家活動を代表する61点を紹介。2つの野外展示がまず印象的です。六本木の東京ミッドタウン、六本木ヒルズという日本を代表する超高層ビルを背景に、埋没するでもなく、自己を強く主張するでもなく、しかし明らかにその空間全体を別のものに変える不思議な魅力に満ちています。《関係項ーアーチ》は2014年にヴェルサイユ宮殿に設置された作品のヴァリエーション。今度は東京の空の下で天気や湿度、時刻などに応じて様々な表情を見せてくれるでしょう。

《関係項ー鏡の道》2021/2022年 石、ステンレス 作家蔵
《関係項ー棲処(B)》2017/2022年 石 作家蔵

上を歩くと小石がポンと跳ねたり、石が音を立ててずれたりする作品もありますが、監視員さんに怒られることはないので心配ご無用です。そうした事も含めて作品とその周辺が形作る空間やその変化について、自然と注意深くなる展示の数々です

会場の壁面のところどころに李禹煥の著作などから取られた本人の言葉が記してあります。著述でも優れた業績を残す作家だけに、詩的で含みのある言語表現が巧みです。鑑賞の補助線にもなるので、ぜひチェックしてみてください。

(手前)《点より》1973年 いわき市立美術館蔵 (右)《点より》1977年 東京国立近代美術館蔵
(左)《線より》1978年 公益財団法人 福武財団/李禹煥美術館(右)《線より》1979年 公益財団法人アルカンシエール美術財団/原美術館コレクション
(右)《対話》2020年 作家蔵 (左)《応答》2021年 作家蔵

展示の後半は絵画作品が中心。1970年代は点と線を執拗に繰り返す作品が目立ちます。それがだんだんと点や線の間にある空間を意識するようになり、近作では1つ、2つの単純な点で構成されるようになりました。それでも作品の周辺の空気が変わるのを感じます。熟達の技を感じます。

開幕前日に行われた開会式では李禹煥さんが元気そうな姿を見せ、「これからも頑張っていきたいと思います」と軽妙に挨拶。86歳ながらこれからも大いに活躍が期待されます。

李禹煥(リ・ウファン) 1936年、韓国慶尚南道生まれ。ソウル大学校美術大学入学後の1956年に来日し、その後、日本大学文学部で哲学を学ぶ。1960年代末から始まった「もの派」を牽引。近年ではグッゲンハイム美術館(ニューヨーク、アメリカ合衆国、2011年)、ヴェルサイユ宮殿(ヴェルサイユ、フランス、2014年)、ポンピドゥー・センター・メッス(メッス、フランス、2019年)で個展を開催するなど、ますます活躍の場を広げている。国内では、2010年に香川県直島町に安藤忠雄設計の李禹煥美術館が開館している。

(読売新聞美術展ナビ編集班 岡部匡志)

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