【レビュー】水木ワールド、分かりやすく楽しく満喫――「水木しげるの妖怪 百⻤夜行展〜お化けたちはこうして生まれた〜」展 東京シティビューで9月4日まで

会場風景

水木しげるの妖怪 百⻤夜行展〜お化けたちはこうして生まれた〜

  • 会期

    2022年7月8日(金)9月4日(日) 
  • 会場

  • 観覧料金

    一般2200円(事前購入1900円)、シニア(65歳以上)1900円(事前購入1600円)、高校生・大学生 1600円(同1300円)、4歳〜中学生1000円(同700円)

  • アクセス

    東京メトロ日比谷線「六本木駅」1C出口から徒歩3分(コンコースで直結)、南北線「麻布十番駅」4出口から徒歩12分、千代田線「乃木坂駅」5出口から徒歩10分。都営地下鉄大江戸線「六本木駅」3出口から徒歩6分
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※来館は、事前予約を推奨

※詳細情報は公式サイト(https://mizuki-yokai-ex.roppongihills.com/)で確認を

※キャラクターなどはすべて、ⓒ水木プロダクション

水木しげる(19222015)の名前を知らない日本人はまずいないだろう。『ゲゲゲの鬼太郎』、『悪魔くん』、『河童の三平』といった代表作は、子供からお年寄りまで、幅広い世代に愛され続けている。「妖怪漫画」というジャンルのパイオニアでもあり、第一人者でもある水木翁。その生誕100周年を記念して開かれているのが、この展覧会だ。水木翁の漫画には南方熊楠の伝記や戦記物など、妖怪以外をモチーフにした作品もあるのだが、ここではそのメインフィールドである「妖怪」にスポットを当て、翁の作品世界とともにその作品に影響を与えた人物などを紹介している。

展示風景
「泥田坊」の展示風景

水木翁の「業績」(というと何だか上から目線で申し訳ないが)としてすぐ思い浮かぶのは、妖怪に「姿」を与えそれを世間に知らしめたことだろう。何しろ「妖怪」は「妖しい」「もののけ」であり、そもそもは曖昧模糊とした人智の及ばぬものなのだから。その造型が絶妙でどこか日本人たちの心の奥底をくすぐるものだったため、世の中がそれを受け入れていったわけである。「人外のモノ」の雰囲気を漂わせながら、怖さだけでなくどこかに愛嬌がある。もともと江戸時代の黄表紙本のころから、日本人はそういうスーパーナチュラルな存在をキャラクター化することに長けていたが、そういう感覚を水木翁は見事に受け継いでいるとも言える。またしても、上から言っているようで申し訳ないが。

展示風景
展示風景

そういう日本人の感性を十分理解していた翁の妖怪の造型には様々な「過去の記憶」が詰め込まれている。鳥山石燕や竹原春泉斎ら先人たちの妖怪画、井上円了や柳田国男らの文献を参考にしながら、個々の妖怪の姿を作り上げられた。「古書店妖怪探訪」のコーナーでは、水木翁が集めた書籍などを展示し、「水木ワールド」の源流が分かりやすく示されている。それに続く「水木しげるの百鬼夜行」のコーナーでは、数々の妖怪を描いた水木翁の原画を展示。ぬらりひょんやべとべとさん、アマビエや大入道などのキャラクターが「山」「水」「里」「家」の項目別に並べられている。おなじみの存在もあり、「こんな妖怪もいるのね」と思わせるものもあり、これだけでもファンなら「お腹いっぱい」になりそうなボリュームだ。

ARでは、こんな画像も撮影できる
「妖怪の森Cafe」で提供されている「大かむろバーガー」

夏休みということもあって親子連れが目立つ会場だが、展覧会的にもそこは十分意識しているのだろう。来場者を楽しませるための「仕掛け」もたくさんある。上に掲げたのは、現実の風景にデジタルデータを重ねる拡張現実(AR)機能を使った「妖怪カメラAR」で写したがしゃどくろ。スマホのアプリで特定のマークを写すと、何にもない空間に妖怪の姿がこんなふうに浮かびあがる。併設のコラボカフェでは、妖怪にちなんだメニューも多数用意。「大かむろバーガー」は人気商品のひとつだという。グッズショップも充実していて、Tシャツからマグカップ、スーパーボールのガチャガチャに至るまで、70種類以上の商品が並ぶ。個人的に気に入ったのは、下の「一反もめんカフェオレマグ」。カップの作り出す微妙なライン、それと眼だけでおなじみの妖怪を表現するデザインセンスが、何ともいえずおしゃれ。

ショップで販売されている一反もめんのカフェオレマグ

〈妖怪は昔の人の残した遺産〉。水木翁は『妖怪なんでも入門』(小学館)で書いている。『週刊少年マガジン臨時増刊 水木しげる日本妖怪大全』(講談社)では〈妖怪の中にむかしの人々の気持ちが、いろいろ込められているような気がしてならない〉とも述べている。古来日本人が育んできた自然や人生に関する想い。潜在意識の中に埋め込まれたその感覚が生み出した、現実と空想の狭間にいる存在。翁がいう妖怪とはそういうものなのだろうか。過去と未来をつなぐポップカルチャーとしての妖怪漫画。この展覧会では、そういう水木翁の「業績」を十分に踏まえながら、より分かりやすく、楽しく、観覧者を「水木ワールド」にいざなう。鬼太郎も猫娘も、翁が描いたキャラクターは令和の今も生き続けている。この展覧会を見ていると、それがなぜなのかが分かってくるような気がするのだ。

(事業局専門委員 田中聡)

グッズのスーパーボールには、鬼太郎たちが封入されている

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