沖縄ブームの先駆け、その光と影 「タイムスリップ EXPO❜75 「望ましい未来」から海洋博を振り返る」展 那覇市歴史博物館で8月29日まで

タイムスリップ EXPO❜75 「望ましい未来」から海洋博を振り返る
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会期
2022年7月1日(金)〜8月29日(月) -
会場
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観覧料金
一般350円、大学生以下(各種専門学校含む)児童・生徒・学生は無料(要証明書提示)
※65歳以上の那覇市民は175円
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休館日
木曜日
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開館時間
10:00〜19:00 - カレンダーへ登録
今から50年前の1972年に本土復帰をした沖縄。その復帰記念事業として、1975年7月から半年間にわたって開催されたのが「沖縄国際海洋博覧会」(略称:海洋博)です。メインテーマは「海ーその望ましい未来」。那覇市の中心部にある那覇市歴史博物館では、本土の人にも大きなインパクトを与えた一大イベントを振り返る展示を行っています。
沖縄戦、そして米統治下で経済的に本土から大きく立ち遅れていた沖縄。復帰を機に「本土並みに」という声が高まる中、その先導役として大いに期待されたのが海洋博でした。ポスターの中心にもあしらわれている海洋博のシンボル、アクアポリスや、近未来的なパビリオンのユニフォームが印象的でした。
3200億円もの公共投資が行われ、道路、港湾、飛行場、上下水道などの工事が行われました。しかし大規模工事は県外企業が多くを占め、土地の買い占めによる地価や物価の上昇が発生。自然破壊も進み、オイルショックによる会期延期もありました。県民の間では疑問の声が広がり、激しい反対運動もありました。展示ではそうした「影」の部分も紹介されています。
様々な問題もはらみつつ、1975年7月20日、海洋博は開幕。大企業や海外からの参加もあり、史上最大規模の特別博となりました。会場は「民俗・歴史」「魚」「科学・技術」「船」というゾーンに分かれ、それぞれに関連したパビリオンが立ち並びました。

沖縄県が出展した沖縄館は、「海やかりゆし(海ぞめでたき)」がテーマ。太古から大交易時代、沖縄戦などを振り返りました。
約半年間にわたり開催された海洋博は1976年1月18日に閉幕。入場者数は当初目標の450万人を大きく下回る約349万人で、観光客を見込んで作られたホテルや土産品店などの倒産が相次ぎました。「海洋博不況」とも呼ばれたそうです。
しかしマイナスばかりではありませんでした。沖縄の豊かな自然や歴史、文化が観光資源になる、ということを内外に示したのが海洋博だったのです。その後、航空会社がマリンリゾートとして沖縄キャンペーンを行い、90年代に入ると首里城の復元を契機に「沖縄ブーム」が起きます。
コンパクトな展示ながら、復帰後の沖縄の歴史で大きな節目となった海洋博を振り返ることができます。円谷プロで「ウルトマラン」の脚本家として名をはせ、海洋博では開・閉会式の演出に関わった金城哲夫氏(1938-1976)の資料も目を引きます。
なお同博物館では、特別展示室で「国宝 琉球国王尚家関係資料」を中心に美術工芸品や文書・記録類の展示も行っています。


同博物館は那覇市中心部の大型商業施設「パレットくもじ」の4階という便利なロケーション。観光の途中に立ち寄って、復帰後の沖縄の歩みを知るのはいかがでしょう。
(読売新聞美術展ナビ編集班 岡部匡志)