万国津梁の鐘、王家の黄色! 九州国立博物館で開催中の琉球展 3人の学芸員に見どころを聞いた

九州国立博物館(福岡県太宰府市)で9月4日まで開催中の沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」。沖縄の独自の歴史と文化を育んだ琉球王国の成立や特色を、国宝の尚家宝物など沖縄が誇る多様な文化財を通じて紹介している。注目の展示品について、九博の学芸員に解説してもらった。

世界つなぐ 刻んだ梵鐘

重要文化財「銅鐘 旧首里城正殿鐘(万国津梁の鐘)」第一尚氏時代・天順2年(1458年)沖縄県立博物館・美術館蔵

三山(山北・中山・山南)に分かれていた琉球の統一を成し遂げた第一尚氏六代の尚泰久しょうたいきゅうは、仏教にあつく帰依したことで知られる。泰久の時代、首里や那覇には多くの禅宗寺院が建立され、各寺院には王府主導で鋳造された梵鐘ぼんしょうが納められた。

一連の梵鐘制作は、仏教によって国を守ろうとする、鎮護国家思想の反映と考えられる。琉球随一ともいうべきこの鐘の制作には、王府の要請に当時南方との交易を積極的に推進していた周防の守護大名大内氏が関与し、当地を訪れた豊前(現・北九州市)の小倉鋳物師による「出吹でぶき」と呼ばれる出張現地制作が行われたとみられる。

鐘身しょうしんには相国寺の渓隠安潜けいいんあんせんによる撰文せんぶんが刻まれ、特に書き出しの一文は、自らを蓬莱島ほうらいとうになぞらえた琉球が世界の架け橋(=万国津梁ばんこくしんりょう)にならんとする気概を見事に表したものとなっている。
(九州国立博物館企画課主任研究員・望月規史)


立体感と彩色 漆芸の粋

「黒漆首里那覇港図堆錦螺鈿(らでん)衝立」首里(中山門) 昭和3年(1928年)鹿児島県歴史・美術センター黎明館蔵

昭和3年11月の昭和天皇即位を祝す御大典礼に合わせて、沖縄県から献上された衝立ついたてである。制作は沖縄県工業指導所のもと名工で知られた友寄英茂ともよせひでしげが中心となり、日本画の巨匠、比嘉華山ひがかざんが原画を、宮大工の玉城たましろサンルーが木地を、友寄の弟子の亀島汝翼かめしまじょよくらが加飾かしょくを担った。

琉球漆芸の特色の一つである堆錦ついきんは、彩漆いろうるしの塊を薄く延ばして文様の形に切り、貼りつける技法だが、この衝立の堆錦は立体的で、所々に彩色も施した入念なものである。とりわけ中山門の左右に描かれる椰子やしやリュウゼツラン、ガジュマル、デイゴなどの植物の生き生きとした表現は見事で、作者たちの並々ならぬ気迫が伝わってくる。

ぜひ会場で、この強烈な存在感を放つ作品をじっくりご覧いただきたい。
(九州国立博物館企画課特別展室長・川畑憲子)


王家の黄色 格式の紅型

国宝「黄色地鳳凰蝙蝠(こうもり)宝尽(たからづくし)青海波(せいがいは)立波(たつなみ)文様紅型綾(あや)袷(あわせ)衣裳」(琉球国王尚家関係資料)第二尚氏時代(18~19世紀) 那覇市歴史博物館蔵 8月23日~9月4日展示

この紅型びんがたは琉球国王の尚家に伝わった。王家にのみ許された地色の黄と、肩に大きく表された鳳凰ほうおう、鮮やかな裾文様が目を引く。

裾文様は「海水江崖」という清代の官服に多く用いられた中国由来の文様。また、鳳凰文も中国では皇帝の龍と対になる文様として皇后が用いたものだ。本作は中国の皇后の衣裳を紅型で表そうとしたような、格式の高いものと言える。

他にも中国風の吉祥文様が散らされる一方、花の折枝や楓、七枚笹しちまいざさ文など、大和(日本)由来の文様も交じる。また、仕立ては袖口が涼やかに大きく開き、外側に返した襟の色が鮮やかな琉球らしい仕様である。

紅型の技法は、アジア諸国との文化的交流の中で成立したと考えられる。この衣裳いしょうからは、中国や日本をはじめ、広くアジアと関わりを持った海洋王国琉球の姿が見えるのである。
(九州国立博物館企画課研究員・桑原有寿子)

沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」
会場:九州国立博物館(福岡県太宰府市石坂4-7-2)
会期:2022年7月16日(土)〜9月4日(日)
休館日:月曜日 (ただし8月15日〈月〉は開館)
観覧料:一般1,900円/高大生1,200円/小中生800円
詳しくは沖縄復帰50年記念 特別展 琉球同館の公式サイトヘ。

(ささっとー編集部)
福岡ふかぼりメディア「ささっとー」(8月6日公開)の記事を再掲。

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