【京のミュージアム #6】福田美術館 また次が見たくなる「開館3周年記念 福美の名品展」~まだまだあります未公開作品~

杉山寧らの作品が並んだ会場

京都画壇を中心に、江戸時代から近代にかけての多くの名品を所蔵する福田美術館で、「開館3周年記念 福美の名品展」~まだまだあります未公開作品~が開かれています。同美術館の開館3周年を記念した企画展で、横山大観の《富士図》や上村松園の《長夜》、下村観山、東山魁夷、加山又造など同館所蔵の作品、前後期合わせて97点が展示されます。杉山寧の《慈悲光》は35年ぶりの公開です。59点が同美術館では初公開で、見応えのある展覧会となっています。また、近くにあり協力関係にある美術館の嵯峨嵐山文華館では、福田美術館所蔵の作品を中心とした「どうぶつ美術館」が開かれています。こちらには円山応挙や大橋翠石、奥村土牛、池田遙邨、川合玉堂、速水御舟、前田青邨らの動物の絵が並んでいます。2館の共通券もあります。 

企画展 「開館3周年記念 福美の名品展」~まだまだあります未公開作品~ 

  • 会期

    2022年7月16日(土)10月10日(月) 
  • 会場

    福田美術館
    https://fukuda-art-museum.jp/
    京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町3-16
  • 観覧料金

    一般・大学生1300円、高校生700円、小中学生400円、障がい者手帳をお持ちの方と介護者1人は700

    嵯峨嵐山文華館との2館共通券:一般・大学生2000円、高校生1000円、小中学生550円、障がい者手帳をお持ちの方と介護者1人は1000

  • 休館日

    火曜日

  • 開館時間

    10:00〜17:00 (入館は午後16時30分まで)
  • アクセス

    JR「嵯峨嵐山」駅下車徒歩12分、阪急「嵐山」駅同11分、嵐電「嵐山」駅同4分
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前期:7月16日(土)~8月29日(月)
後期:8月31日(水)~10月10日(月・祝)

詳しくは福田美術館ホームページ

 

第1章 近代絵画の名品と初公開作品

この章では横山大観始め川合玉堂、山元春挙、上村松園と言った東京、京都画壇で活躍した近代画家や、戦後日本の画界に新たな境地を開いた東山魁夷、秋野不矩、杉山寧ら現代画家の名品の中から同館未公開作品を中心に紹介されています。

横山大観 《富士図》 1945年頃 紙本着色  通期展示

会場に入るといきなり横山大観の大作が目に飛び込んで来ます。雲海の中にそびえる雪をかぶった富士山。右隻には旭日が輝いて、圧倒的な迫力です。横山大観は茨城県出身の日本画の巨匠で、線描を抑え輪郭をぼかして描く「朦朧体」と呼ばれる独特の画法を確立しました。「大観と言えば富士山絵」と言われるほどたくさんの富士山を描いています。

川合玉堂 《長閑/驟雨/斜陽/吹雪》 1926年頃 絹本着色(長閑・吹雪)紙本墨画(驟雨・斜陽) 前期展示

展示は右から川合玉堂の長閑/驟雨/斜陽/吹雪です。春夏秋冬を主題として描いているのですが、風景だけを描くのでなく、その中に生きる人々の営みが表現されているのが特徴です。だからでしょうか、彼の絵はどれを見ても、ほっとするものがあります。1930年にローマで開かれた日本美術展に出品された作品です。

(右)上村松園 《長夜》 1907年 絹本着色 前期展示  (左)伊藤小坡 《お花見》 昭和時代 絹本着色 前期展示

「西の松園、東の清方」と並び称された美人画の上村松園。日が暮れても読書に夢中の娘と、その娘を気遣うような年上の女性。表情や着ているもので年齢の違いが表現されています。左は松園と同世代で共に美人画の研鑽を積んだ伊藤小坡。こちらも年齢の違う二人の女性を描いていますが、松園とはまた違った味わいがあります。並んだ絵を見比べるのも面白そうです。

杉山寧 《慈悲光》 1936年 紙本着色 通期展示

杉山27歳の時の作品です。奈良・室生寺金堂の十一面観音像と十二神将を描いています。制作にあたり杉山は生命観や霊的なものまで表現しようとしました。しかし、陳列された絵を見てそれが表現されていないと感じ、「もう一度描けばできる」と言ったそうです。表現方法を見直す転機となった作品です。後に描かれた《西瓜》《静物》《花》(いずれも同館初公開)も展示されています。表現方法の変化が見て取れそうです。ところで、絵の右上と左下に蛾が描かれています。速水御舟の《炎舞》を思い出してしまいました。ひらひらとした蛾の飛翔は、画家に生命の揺らめきを感じさせるのでしょうか。

左から いずれも秋野不矩 《瓶花》 1970~79年 紙本着色、 《テラコッタ壁画Ⅲ》 1985~99年 紙本着色  前期展示、 東山魁夷 《静けき朝》 1962年 紙本着色 通期展示

秋野不矩は静岡県出身の画家で京都の西山翠嶂塾で学び、京都の女性日本画家の会を結成しています。54歳の時に訪れたのをきっかけにインドに魅せられ、現地に取材した作品を多数残しています。

下山観山 《降魔図》 1919年 絹本着色 後期展示

第2章 新しい表現を求めて

ここでは新しい日本画の創造の場を求めて1918年に「国画創作協会」を設立した、京都画壇の新鋭画家たち土田麦僊や榊原紫峰、村上華岳、野長瀬晩花、小野竹喬らや、没後50年の美人画の巨匠である鏑木清方、その弟子の伊東深水らの作品が展示されています。

(右)小野竹喬  《遅日》  昭和時代 絹本着色 前期展示 (左)野長瀬晩花  《初夏の奈良》  大正~昭和時代 絹本着色 通期展示

独自の画風を築き一世を風靡した国画創作協会のメンバーの作品には、西洋古典絵画や後期印象派の影響もあるそうです。「遅日(ちじつ)」とは日暮れが遅くなった春の日のことですが、暮れなずむ空の色合いが印象的です。近くに伊東深水14歳の時の作品《秋晴》が展示されていますが、一見すると西洋画のようです。友人の洋画家と一緒に写生したりして勉強した頃の作品です。色付いた草木を丁寧に描き分けて鮮やかで、国画創作協会の影響が大きいということです。伊東がこんな絵を描いていたとは初めて知りました。逆に彼に影響を与えた小野竹喬らの作品の中に、印象派の影響を捜すのも面白いかも知れません。

(右)入江波光 《臨海の村》 1919年 絹本着色 通期展示 (左)同 《浄天》 1920年 絹本着色 前期展示

入江波光は国画創作協会の顧問を務めた竹内栖鳳らに師事し、自分も1919年に同協会に参加します。晩年は古画の模写に精力を費やし、法隆寺金堂壁画の模写にも参加しています。《臨海の村》はごつごつとした海岸の丘に家が建ち並び、奥行きを感じさせます。一方、《浄天》は薄い光の中で天人が浮遊しています。並んだこの2点の作品は同時期のものですが、画風は異なります。入江の画力の高さを示していると言えるでしょう。

小川芋銭、上村松園、冨田渓仙らの近松全集の付録版画の原画も

1923年に刊行された、近松門左衛門の作品集『大近松全集』の付録となった版画13点と、その原画5点もあります。鏑木清方、上村松園、小川芋銭などの当時を代表する日本画家と洋画家の、いつもとはちょっと違った作品も面白く感じられます。

第3章 又造の部屋

加山又造の作品の第3章 中央奥は《猫ト牡丹》1985年 以下すべて紙本着色 通期展示

加山又造の作品9点を展示したパノラマギャラリーです。加山は1927年に西陣の和装図案家の家に生まれます。幼い頃から画才を発揮し、京都市立美術工芸学校、東京美術学校へと進学します。ここでは江戸琳派に傾倒した1960年代、裸婦に取り組んだ70年代、水墨画に転向した80年代と、変わっていく絵を見てほしいとのことです。

(右から) 《荒野ノ朝》 1960年頃、 《白い鳥》 1965~84年
(左から) 《月光山稜》 1988年、  《雪》 1971年

今回展示された作品の多くが、福田美術館にとっては初公開だったということです。タイトルにもあるように、まだまだ未公開作品があるのでしょう。それぞれに見応えがあって、次はどんな絵が公開されるのか楽しみになる展覧会でした。

◆福田美術館

2019年に開館した新しい美術館。渡月橋を望む大堰川(桂川)沿いの景勝の地にある。古来、多くの貴族や文化人に愛された嵯峨嵐山で、受け継がれてきた日本美術を次世代に伝え、さらに発展させることをコンセプトに江戸時代から近代までの主要な画家の作品約1800点を所蔵。年4回の企画展を開いている。

★ ちょっと一休み ★

美術館内にあるカフェ「パンとエスプレッソと福田美術館」。目の前を大堰川(桂川)が流れ、向こうには渡月橋という絶景のロケーションだ。コーヒーや抹茶ラテ、フルーツジュースといった飲み物から、ティラミスなどの手作りのスイーツまで。ランチセットにワインやビールもあって、眼前の景色を眺めながらゆったりとした時間を過ごすことができる。企画展の期間に合わせた季節限定の「福パフェ」も。今回はマンゴーやマンゴーのソース、プリン、ホイップクリーム、ウーロン茶ゼリーなどで作った3色のマンゴープリンパフェ(1200円)。通常は上面には「福」の字が描かれているのだが、3周年記念ということで「Ⅲ」の字が。甘すぎず、たっぷりのマンゴーの味を堪能しました。午前10時~午後5時営業(ラストオーダーは午後430分)。火曜が休み。

(ライター・秋山公哉)

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