【プレビュー】近代のマルチアーティストの多彩な世界を紹介――「つながる琳派スピリット 神坂雪佳」展 パナソニック汐留美術館で10月29日開幕

つながる琳派スピリット 神坂雪佳

  • 会期

    2022年10月29日(土)12月18日(日) 
  • 会場

    パナソニック汐留美術館
    https://panasonic.co.jp/ls/museum/
    港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4F
  • 観覧料金

    一般1000円、65歳以上900円、大学生700円、中・高校生500円、小学生以下無料。

  • 休館日

    水曜休館、ただし11月23日は開館

  • アクセス

    JR新橋駅「烏森口」「汐留口」「銀座口」より徒歩約8分、東京メトロ銀座線新橋駅「2番出口」より徒歩約6分、都営浅草線新橋駅「JR新橋駅・汐留方面改札」より徒歩約6分、ゆりかもめ新橋駅より徒歩約6分、都営大江戸線汐留駅「3・4番出口」より徒歩約5分
  • カレンダーへ登録

※最新情報は公式サイト(https://panasonic.co.jp/ew/museum/)で確認を。

※前期(~11月29日)、後期(12月1日~)で一部展示替えあり

明治~昭和期に活躍した京都の図案家・画家、神坂雪佳(1866-1942)にスポットライトを当てた、国内美術館では約20年ぶりの展覧会である。神坂雪佳は「琳派」の影響のもと、工芸品の図案から絵画まで幅広い活躍を見せたマルチ・アーティスト。この展覧会では、珠玉の琳派コレクションで知られる京都・細見美術館監修のもと、歴代琳派の優品から“近代琳派”の名にふさわしい神坂雪佳の代表作まで、約80点を紹介する。

深江芦舟 《立葵図》 紙本墨画淡彩 江戸中期 細見美術館蔵

神坂雪佳(かみさか・せっか、本名・吉隆)は1866(慶応2)年、京都の禁裏御用武士の長男として生まれた。1881(明治14)年、四条派の日本画家・鈴木瑞彦に師事、20代半ばの時に帝室技芸員の岸光景のもとで工芸図案を学び、1890(明治23)年には初めての図案集『別好京染 都乃面影』を刊行した。彼が京都を中心に画家・図案家として頭角を現したこの時代、世界はアール・ヌーヴォー全盛だった。雪佳もまた1901(明治34)年には英国・グラスゴー万国博覧会視察と欧州各国の工芸図案取調のため渡欧する。そこであらためて認識したのが、日本の伝統的な装飾美の魅力。その後はより一層、装飾芸術の先達としての琳派研究に励むことになった。

神坂雪佳 『滑稽図案』より「美人草」 紙本木版多色摺 1903(明治36)年刊 芸艸堂蔵

琳派研究の成果は、『百々世草』(1909-10年刊)などの図案集の出版、琳派を彷彿とさせる絵画、調度品の制作へと結実していく。また本阿弥光悦や尾形光琳を理想とし、京都工芸界の活性化を使命とした雪佳は、実用を意識した図案集の出版や京都市立美術工芸学校での後進育成のほか、1907(明治40)年に図案研究団体「佳美会」(のちに「佳都美会」に改称、「京都美術工芸会」として再組織)の結成や、工芸家への図案提供など多岐にわたって活動した。

俵屋宗達《双犬図》 紙本墨画 江戸前期 細見美術館蔵

今回の展覧会は「あこがれの琳派」「美しい図案集-図案化・雪佳の著作」「生活を彩る-雪佳デザインの広がり」「琳派を描く-雪佳の絵画作品」の4章構成。最初の章では、「琳派誕生、そして開花」(17-18世紀、京都)、「光琳を継ぐもの」(18-19世紀、京都・大坂)、「江戸琳派の美」(18-19世紀、江戸)という構成のもと、京都・細見コレクションや神坂雪佳の旧蔵品を通じて、創始から雪佳へと至る琳派300年を辿る。本阿弥光悦、俵屋宗達、尾形光琳と尾形乾山、さらに酒井抱一、鈴木其一……雪佳に影響を与えたのは、こういった日本美術史を彩る芸術家たちだった。

神坂雪佳 『百々世草』より「狗児」 紙本木版多色摺 1909-10(明治42-43)年刊 細見美術館蔵

第2章では、雪佳が発表した主な図案集(デザインの素材集)を紹介。日本画を学ぶことから出発した雪佳は、30代の頃には図案家として京都の工芸界で重要な役割を担うようになる。その成果が集約されているのが、自身の活動の前半期を中心に数多く発表された図案集。『染織図案 海路』(1902年刊)や『蝶千種』(1904年刊)のような実用性の高いもののほか、『ちく佐』(1900-05年刊)や『百々世草』(1909-10年刊)は鑑賞用としても楽しまれた。特に『百々世草』は、色彩豊かで明快な雪佳様式の到達点を示す代表作とされる。

神坂雪佳図案 神坂祐吉作 《帰農之図蒔絵巻煙草箱》 木製漆塗、蒔絵、螺鈿 大正末期 細見美術館蔵(後期展示)

そうした図案の創作にあたり、雪佳が拠り所としたのが「琳派」だった。空間を彩る調度類に優れたデザインを手がけた「琳派」を手本に、雪佳は染織、漆器、陶磁器のほか、室内装飾や造園に至るまで、実に多種多様なデザインを創作した。それらの調度品、漆芸、陶芸などをまとめたのが第3章だ。雪佳は、特に活動の後半期、絵画作品を求められることも多かったという。それらをフィーチャーした最終章では、屏風、掛軸から、社寺の襖絵や能舞台の鏡板などの障壁画まで、幅広い作品が展示される。四季の草花、古典文学、動物などをテーマとし、ユニークな構図感覚とおおらかで品のある、その絵画作品には、奇抜さよりもおおらかで親しみやすく、琳派に傾倒し、日常を彩る美を大切にした、雪佳ならではの「美学」が貫かれている。

神坂雪佳《金魚玉図》(部分) 絹本著色 明治末期 細見美術館蔵

 

新着情報をもっと見る