【レビュー】「絵本原画の世界2022」山梨県立美術館で8月28日まで 『こどものとも』から51タイトル354点

宮城県美術館所蔵 絵本原画の世界2022
会場:山梨県立美術館 (山梨県甲府市貢川1‐4‐27)
会期:2022年7月16日(土)~8月28日(日)
開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日 *8月15日(月)は開館
観覧料:一般1000円 大学生500円
そのほかの観覧料など詳細は同館の展覧会ホームページで

夏休みが始まりました。子どもを連れてどこへ行こう? 孫たちが来たら一緒に何をしよう?と考えている人も多いのでは。山梨県立美術館で開催されている「宮城県美術館所蔵 絵本原画の世界2022」はそんな大人や子どもにぴったりの展覧会です。
宮城県美術館が1998年から収集・整理・保存を始めた月刊絵本『こどものとも』(福音館書店)の原画の巡回展で、1950年代から現代までの作品51タイトル、354点もの原画が展示されています。子どもだけでなく、親世代やおじいさん、おばあさんの世代もきっと親しんだことのある名作に出会えるでしょう。

『こどものとも』から51タイトル

『こどものとも』は1956年創刊の月刊絵本。雑誌でありながら、1冊に1作品という形式を取ります。『こどものとも』の生みの親は、後に福音館書店の社長を務める編集者松居ただし。子どもにこそ芸術性の高い絵本を届けたいと、日本画や洋画の第一人者に作画を依頼。同時に、新しい才能の発掘にも力を入れ、当時まだ無名だった若い画家やイラストレーターを次々に起用し、育てていきました。

「ぐりとぐら」「そらいろのたね」

山脇百合子「ぐりとぐら」26-27頁原画 宮城県美術館蔵

そんな一人が山脇(当時は大村)百合子です。大学生の時に、姉の中川李枝子のお話に絵を描いた「ぐりとぐら」はあまりにも有名で、このシリーズを親子3代で楽しんだという人も多いのではないでしょうか。
山脇は、美術の専門教育を受けたわけではありませんでした。しかし、山梨県立美術館学芸課普及担当の高野早代子さんによると、「ねずみを描くとなれば博物館に実際に見に行き、草花でも野菜でも、嘘のないようにという気持ちが非常に強い人。何にでも誠実に向き合って描く作家」なのだそうです。

原画の楽しみは、画家の筆致や創作の過程がじかに伝わってくること。画家自身による修正の跡、鉛筆の書き込みなど、完成された本には現れない舞台裏の試行錯誤が手に取るように分かります。

山脇百合子「そらいろのたね」2-3頁原画 宮城県美術館蔵

この「そらいろのたね」(1964年)の原画では、男の子の足元のタンポポを切り抜いて右にずらし、左側の雲の位置も下に移動させたことが分かります。高野さんは「印刷で表現できる色には限度があるので、原画で本来の色を見てもらうと同時に、原画から感じられる作家の息づかいを味わってほしい」と話していました。

第1号は日本画家

堀文子「ビップとちょうちょう」 宮城県美術館蔵

『こどものとも』の記念すべき第1号は、日本画家・堀文子の「ビップとちょうちょう」(1956年)でした。堀は、透明感のある色彩をちりばめた草花や動物の絵が印象的な画家です。これからビップと一緒に、ちょうを探す夢のような冒険に本当に出かけられそうな幻想的な雰囲気が漂います。

「おおきなかぶ」の画家

佐藤忠良「ババヤガーのしろいとり」 宮城県美術館蔵

ロシア民話「ババヤガーのしろいとり」(1973)の佐藤忠良。やはりロシア民話で、小学校1年生の国語教科書でも採用されている「おおきなかぶ」の挿絵の画家と言えば、すぐにその絵が思い浮かぶのではないでしょうか。戦後、シベリアに抑留された経験からロシアの風土を知る佐藤に、松居がロシア民話の作画を託したそうです。

634種類もの鳥が1冊に

三好碩也「てんからふってきたたまごのはなし」 宮城県美術館蔵

三好碩也せきやの「てんからふってきたたまごのはなし」は1962年刊。この本のすごいところは、全部で634種類もの鳥が、地域別や生態別に細かく描き込まれていることです。子どもの頃、この絵本で一羽一羽の鳥の姿と名前をたどったことを思い出しました。確か途中で挫折したと思います。でも、子どもは意外とそんな図鑑的な楽しみ方が好きなんです。子どもの本だからこそ質の高いものを、という松居の当初からの姿勢と、三好のこの作品に対する強い思い入れが生み出した名作です。

「そらいろのたね」は山梨県立美術館だけ

山脇百合子の「そらいろのたね」の原画は、各地の美術館を巡回している本展覧会で、山梨県立美術館だけの特別出品。各館がその館に関連のある絵本原画を1作品展示した中で、ミレーのコレクションで知られるこの美術館では所蔵する《種をまく人》にちなんで「そらいろのたね」が展示されました。《種をまく人》はコレクション展(常設)で鑑賞できます。

ジャン=フランソワ・ミレー《種をまく人》1850年 山梨県立美術館蔵

原画展ではほかにも、長新太、林明子、馬場のぼるなど、みんながきっと読んだことがある作品や、えっ、これがこの人の絵?と意外に思うような作品、そして画家の名前は知らなくても絵は見たことがあるというような作品がたくさん展示されています。

馬場のぼる「ぴかくんめをまわす」(1960年) 宮城県美術館蔵
長新太「三びきのライオンのこ」表紙・裏表紙原画(1961年) 宮城県美術館蔵
林明子「はじめてのおつかい」表紙・裏表紙原画(1976年) 宮城県美術館蔵

展示室内は撮影禁止ですが、最後のフォトスポットでは写真が撮れます。ぐりとぐらと一緒に、たまごの車に乗ってしゅっぱーつ!

展示を見ながらクイズを解いていくワークシートも充実しています。

展示されている絵本の一部は、館内の図書室で閲覧できます。(ライター・片山久美子)

本展のチケットをプレゼントします。応募締め切り7月31日(日)まで。

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