深~くリラックスしてOK! 国立能楽堂で初めて能楽鑑賞して分かった初心者の楽しみ方

サウナ人気で最近よく聞くようになったのが「チル」。「落ち着く」の英語「Chill out」が語源で、単にリラックスではなく、「ととのう」のような、特に深くリラックスすることを意味します。伝統芸能の能楽も「チル」であると聞き、サウナ好きな記者が、国立能楽堂(東京・千駄ヶ谷)で、能を初体験しました。(読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)

現代建築と和風様式を活かした建築家・大江宏の代表的建築

驚きポイント1 かしこまった服装でなくていい

日本の伝統芸能の中でも、能は難しいと思ってきました。イメージとしては、「ネクタイを締めて正装。難解だけど途中で寝たらダメ」でした。一言で言うと、敷居が高そう。

記者は普段の服装はTシャツが多いのですが、4月に初めて能鑑賞で国立能楽堂に行ったときは、Yシャツを着て、さらにカバンにはネクタイを忍ばせていました。周りの様子を見てネクタイを締めようと思っていたのです。ところが、ほかの観客を見て、ちょっと驚きました。普段着の人が多かったのです。むしろ、歌舞伎のほうが、和服でばっちり決めている人が多いのではないか?というくらいでした。

中庭

驚きポイント2 一人一人に液晶画面がある

あらすじを予習したほうが初心者には楽しめるというのは、歌舞伎や文楽でも同じです。初めての能は、「俊寛」でした。平家への謀反を疑われて遠い島に流罪になった3人が、のちに平清盛に許されるものの、3人のうち僧侶の俊寛だけは許されず、島に置いてかれるという話です。ちょうどNHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」やアニメの「平家物語」で見たばかりの話だったので、あらすじは分かっていたものの、内容が分かるか不安を抱きながら席につくと…。

各席にある液晶画面

なんと、席の前に液晶画面があるではないですか! ここに、あらすじやセリフが表示されるのです。席ごとについているので、不要な人は画面をオフにすることもできます。

驚きポイント3 笑ってもいい

能の公演の前には、狂言があります。狂言はおもしろおかしい動作や言葉まわしが特徴なので、笑っていいと知っていました。ですが、能になったら、笑ってはいけない、能面のように無表情で鑑賞しないとダメと思い込んでいたのです。ところが、能も「だじゃれ」やおかしい動きなどが結構盛り込まれていました。観客の人がそうしたシーンで笑っているのを見て、「能で笑っていいのだ」と、ここでも少し驚きました。

開演日以外の平日昼は誰でも使うことができる御食事処

驚きポイント4 ウトウトしてもいい

とにかく「寝ないように。寝ないように」と、ある意味でずっと緊張していました。能の楽器は、笛・小鼓・大鼓・太鼓の4種類で、弦楽器の無いゆっくりとした音楽は、どうしても眠気を誘います。ウトウトして「はっ」と姿勢を正すことが何度かありました。
ところが、公演の終了後に、売店で『まんがで楽しむ能の名曲七〇番』という本を買いました。そこには「それでも眠くなったら、無意識下の鑑賞という奥の手!」(9ページ)と書いてあるではないですか。
思い切って国立能楽堂の方に聞きました。「もしかして、寝ちゃってもいいのですか?」。
「お客様が非日常を味わっていただければ」との返事でした。
もちろん、イビキをかくほど熟睡してほかの観客に迷惑をかけてはダメですが、ウトウトしても良いようです。

能舞台

2回目の鑑賞で「チル」を体感

1回目は緊張しており、リラックスして鑑賞するということが出来ませんでした。そして、約3か月後の7月に、2回目の能の鑑賞をしました。「籠太鼓」という演目でした。籠(牢屋)に閉じ込められた夫の代わりに妻が牢屋に入れられて、という物語です。俊寛と違い、こちらのあらすじは初めて。

今回は、普段どおりにTシャツを着て、液晶でセリフを時々確認しながら、笑えるところでは笑い、分からないところは分からないままで、自然体で鑑賞しました。笛・鼓・謡いのリズムは、気持ちがあがるのと同時に眠くなっていく……。ここで、「寝てはダメだ」と無理に起きようとせずに身をゆだねていると……。

熱いサウナのあとに水風呂に入り、外気浴している時の「ととのう」や「チル」と言われるあの感覚に近い、深~いリラックス感を抱いたのです。
「これが幽玄だ」なんて大それたことを言うつもりはありません。ですが、ひととき、とても気持ちの良い「非日常」を味わえました。

壁はコンクリートと大江宏ならでは

国立能楽堂では、8月4日(木)午後6時30分から、わかりやすい解説付きで大人の初心者向けの「働く貴方の能楽公演」が開催されます。鬼女で有名な「安達原」などが演目です。ディープなリラックスを試してみたらいかがでしょうか。

国立能楽堂のHP
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