【プレビュー】特別展「京に生きる文化 茶の湯」京都国立博物館で10月8日から

“茶の湯”をテーマにした特別展「
・世界に3碗現存する曜変天目のひとつで京都・龍光院所蔵の国宝「曜変天目」(展示期間:10月8日~23日)
・茶を楽しむ人々を狩野秀頼が色鮮やかに描いた国宝「観楓図屏風」(展示期間:10月8日~23日)
・宋の皇帝・徽宗筆と伝わる宮廷絵画の傑作、国宝「桃鳩図」(展示期間:11月3日~6日)
・茶の湯の茶碗の最高位ともよばれる国宝「大井戸茶碗 銘喜左衛門」
・桃山時代を代表する名碗、国宝「志野茶碗 銘卯花墻」
など、京都にゆかりのある各時代の名品を通して、茶の湯文化を紹介する展覧会です。主な展示作品を各章ごとに紹介します。(前売券は8月26日から販売)
序章 茶の湯へのいざない
現在、私たちが親しんでいる茶の湯が、どのように根付き、時代とともに変化していったかを、数々の名品でひも解きます。ここでは、国宝「大井戸茶碗 銘喜左衛門」(京都・孤篷庵蔵)が展示されます。

清らかにわびた禅の精神を語った名僧・虚堂智愚の法語。茶人たちに珍重され、武家茶人・松平不昧が所蔵していた。

重々しく堂々した姿をみせる大井戸茶碗。松平不昧が「天下の三井戸」と称した一碗。

徳川家康が所持し、後に酒井忠世が拝領し、姫路酒井家で伝えられてきた大名物の茶入。
第1章 喫茶文化との出会い
奈良時代に中国から日本へと持ち込まれた喫茶文化。平安時代後期になると、中国・宋代の点茶法による飲茶が始まったことで、喫茶文化は大きな変化をとげ、そして広まり、現在の茶の湯にまで繋がります。

建仁寺を開山した栄西禅師が喫茶の風習を日本に伝えた書。

禅宗とともに中国からもたらされた「四頭茶礼 (よつがしらされい)」の道具。
第2章 唐物賞玩と会所の茶
禅宗寺院における規範としての茶が続けられる一方、武家社会では唐物を賞玩するなかで茶を楽しむ文化が生まれました。足利将軍家が所持し、その後も織田有楽(信長の弟)、前田利家、徳川家康と名だたる武将が所有した唐物茶入や、平重盛や足利義政が所持したと伝わる青磁茶碗もならびます。

信長も愛蔵した、牧谿の作と伝わる墨一色で豊かな情景を描き出した名品。

足利将軍家が所持し、その後も織田有楽、前田利家、徳川家康と名だたる武将が有した唐物茶入。

会所の茶会などで賞玩されてきた、中世以降の美の規範・東山御物の名品。

平重盛、足利義政が所持したと伝わる青磁茶碗。鎹(かすがい)留めを蝗(いなご)にみたて、馬蝗絆と名付けられた。
第3章 わび茶の誕生と町衆文化
唐物道具がもてはやされるなかで、日々の暮らしのなかにある道具を用いた、わびの精神を取り入れた「わび茶」が生み出されます。この章で紹介される作品で描かれているように、わび茶は多くの町衆の経済活動により発展していきました。

洛北の高雄で茶を楽しむ人々の姿が色鮮やかに描かれている。

門前に茶屋が設けられ、参詣に訪れた人々が炙り餅と茶を飲む様子が描かれている。
第4章 わび茶の発展と天下人
信長、秀吉をはじめとした天下人を魅了した千利休の「わび茶」。武将たちは、こぞって名物となっていた茶道具の収集を行いました。それは茶の湯が日本全国に拡がりながら、独自の道具を生み出し、大きく形づくられていくことにも関係していきます。
この章では、秀吉が愛用したとされる天下の名碗、重要文化財「大井戸茶碗 銘筒井筒」や、千利休の存命中に描かれた、唯一の肖像画も展示されます。

利休の存命中に描かれた唯一の肖像画。

利休の創意によって生み出された黒茶碗。

秀吉の三回忌に制作された肖像画。

秀吉愛用とされる天下の名碗。

歌舞伎小屋の前に茶屋が設けられ、歌舞伎を楽しみながら茶が飲まれていたことがわかる。
第5章 茶の湯の広まり 大名、公家、僧侶、町人
利休や秀吉が活躍したのちには、武家、公家、僧侶、町人などそれぞれの立場において、茶の湯の文化が形成されていきました。この章では、それぞれの茶の湯文化の形成過程や独自の茶道具などが紹介されます。

名工・野々村仁清による、漆黒の地に色鮮やかに描き出した茶壷。丸亀藩京極家伝来。

大胆な箆削り、形を歪ませた様子などみどころ満載の桃山時代を代表する名碗。
第6章 多様化する喫茶文化 煎茶と製茶
現代人にも馴染みの深い「煎茶」は、江戸時代の中国との交流の中でもたらされた文化の一つです。江戸時代中期頃には、京都府南部の宇治地域における製茶技術の向上により、より良質な茶が作られるようになりました。

萬福寺を開山した隠元禅師が愛用した茶器。
第7章 近代の茶の湯 数寄者の茶と教育
近代になると、文明開化の名のもとに日本の伝統文化は、大きく変化していきました。茶の湯も例外ではなく、多くの茶道具が海外に流出することとなります。その一方で、近代の数寄者たちの間で茶の湯が流行し、学校教育にも茶の湯が導入されるなど、茶の湯は日本文化として継承され続けていきます。
この章では、野々村仁清による重要文化財「色絵鱗波文茶碗」など、江戸から現代、時代を超えて愛された茶碗を見ることができます。

江戸から現代、時代を超えて愛された茶碗。
ほかにも、豊臣秀吉の「黄金の茶室」や千利休の「わびの茶室」の再現展示や、宋の皇帝・徽宗筆と伝わる宮廷絵画の傑作、国宝「桃鳩図」が11月3日~6日の4日間の期間限定で公開されるなど、見どころが満載。今なお「茶の湯」が生きる、千年のみやこ・京都で守り継がれた歴史と、茶人たちの美意識の粋を感じることのできる特別展です。
(読売新聞デジタルコンテンツ部)