【探訪】長野・小布施「北斎館」 肉筆で描かれた北斎の「浪」の大迫力! この土地ならではの傑作を楽しむ

葛飾北斎が93回もの引っ越しを繰り返しながら、その生涯のほとんどを現在の東京・墨田区で過ごしたのはあまりに有名な話である。

そんな北斎だが、決して旅に出なかったわけではない。北斎研究者である永田生慈氏の「北斎旅行考」には、彼が江戸から離れて様々な場所へ赴いた様子が記されている。

中でも信州(長野県)の小布施(おぶせ)には4度も訪れており、最初に足を運んだのが北斎83歳の頃、最後に滞在したのは89歳の頃だった。車も新幹線も無い時代である。いかにバイタリティに溢れた北斎であっても、ひときわ思い入れがなければ訪れるのは難しい距離だろう。

 その小布施にあるのが、「北斎館」だ。

北斎館

北斎を援助した北信の豪農商・髙井鴻山との交流

北斎と小布施を繋ぐのが、地元の豪農商であった髙井鴻山の存在だ。江戸の日本橋で呉服商を営んでいた人物を介し、鴻山と北斎は出会ったと言われている。自身も絵を描き、商人というよりも文化人としての気質のあった鴻山は、北斎を小布施へ招き、丁重にもてなした。鴻山の助けもあり、北斎は晩年の大作をこの地にいくつか残している。

肉筆展示室

肉筆画のコレクションも充実 白眉は祭屋台の装飾

北斎館は、この髙井家の屋敷のあった場所から、歩いてすぐの場所に在る。

1976年、町内に残されていた北斎作品の散逸防止、収蔵・公開を目的とした美術館として開館。幾度かの増改築を重ね、現在の姿となった。

同館は北斎最晩年の傑作《富士越龍》をはじめ、多数の肉筆画を所蔵しているのが特徴だ。中でも注目したいのが、鴻山が私財を投じて制作したといわれる「上町祭屋台」と「東町祭屋台」。この屋台の天井を飾るのが、北斎が描いた「男浪」と「女浪」、「龍」と「鳳凰」である。

東町祭屋台の天井を飾る「龍」と「鳳凰」

118cm×118.5cmの桐の板を支持体として、二面一対のセットとされているこれらは、実際に間近で見ると驚くほど大きく鮮やかだ。この時北斎は80代半ば。全く年齢を感じさせない力強く生々しい筆遣いは、まさに「画狂老人」の名にふさわしい。

上町祭屋台の細部

東町祭屋台は唐子や陰陽思想をモチーフにした中国風、上町祭屋台は当時人気のあった「水滸伝」がモチーフとなっており、天井画以外の装飾も北斎のカラーがよく出ている。屋台は全体をぐるりと見て回ることができるので、細かいところまでじっくり鑑賞したい。

北斎の魅力を深堀りできる企画展

2022年4月2日から6月12日まで開催された「読本が結ぶ縁 ─馬琴と種彦─」展。滝沢馬琴と柳亭種彦、性格も作風も違うそれぞれの作家と北斎との仕事や、交流が紹介された。

これらの屋台や同館所蔵の肉筆画の他に、趣向を凝らした企画展の存在も充実している。企画展は年に5つほど組まれており、いずれも北斎の作品を特集したもので着眼点が面白い。

会場風景

大型展では紹介しきれない北斎の魅力、仕事仲間との関係や逸話がふんだんに盛り込まれた内容は充実。キャプションもわかりやすく丁寧で、北斎の人柄に触れたものなどは、思わず笑ってしまうほどユニークだ。

また、展示室へ入る前に映像ホールが用意されており、北斎と鴻山の出会いから小布施での滞在の様子が、再現ドラマ風に紹介されている。この映像を見てから展示へ進むと、北斎と小布施の関係への理解が深まるので、ぜひ見ておきたい。

エントランスから展示室へ続く回廊では、北斎の画号ごとに絵の特徴とできごとを紹介。画業の変遷がよくわかる。

そのほか館内には、北斎や浮世絵に関する書籍やグッズが並んだミュージアムショップも作られている。ここでしか買えないものから、手頃な値段のものまで揃っており、迷いながら選ぶのも楽しい。

ちなみに北斎館のすぐ近く、髙井鴻山が住んでいた敷地内にある「髙井鴻山記念館」では、北斎が小布施に残した作品をはじめ、北斎の娘・応為が描いたとされるものや、鴻山自身の作品、髙井家にまつわるものが展示されている。ぜひ北斎館とあわせて訪れたい。

髙井鴻山記念館

江戸っ子北斎が慕い訪れた小布施。その景色とともに、ここでしか見ることのできない北斎作品に触れてみてはいかがだろう。

(ライター・虹)


 

施設概要

  • 会期

    2022年1月1日(土)12月30日(金) 
  • 会場

    北斎館
    https://hokusai-kan.com/
    〒381-0201 長野県上高井郡小布施町大字小布施485
  • 観覧料金

    企画展 一 般1,000円 高校生500円 小中学生300円 小学生未満無料

    ※その他各種割引あり

  • 休館日

    1231

    企画展の切り替え期間中は展示内容が異なります

  • 開館時間

    09:00〜17:00 入館受付は閉館30分前まで。1月1日は午前10時~午後3時
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