【プレビュー】中将姫とは誰? 特別展「中将姫と當麻曼荼羅―祈りが紡ぐ物語―」奈良国立博物館で7月16日から

貞享本當麻曼荼羅修理完成記念 特別展「中将姫と當麻曼荼羅―祈りが紡ぐ物語―」 |
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会場:奈良国立博物館 西新館 |
会期:2022年7月16日(土)~8月28日(日) |
開館時間:午前9時30分~午後6時(毎週土曜日は午後7時まで) ※入館は閉館の30分前まで |
休館日:毎週月曜日(※7月18日(月・祝)・8月15日(月)は開館)、7月19日(火) |
観覧料: 一般 1,600円(1,400円)、高大学生 1,000円(800円)、小中生500円(300円)*()は前売り |
詳しくは奈良博のHPへ。 |
「皆さんは、
2022年7月16日から奈良国立博物館で開幕する
一夜にして蓮華の糸で曼荼羅を織りあげ、女人として生身のまま極楽往生(女人往生)したという不思議な伝承が残る奈良時代の女性「中将姫」。彼女が織りあげ、約1250年前に現れた“奇跡の曼荼羅”として伝わる霊宝が
本展は、中将姫が製作に関わったと伝わる根本曼荼羅(国宝・綴織當麻曼荼羅)に最も近い写しと名高い、江戸時代に製作された「當麻曼荼羅(貞享本)」の修復完了のお披露目と、あらためて中将姫がいかなる人物であったかを知ることの2本柱を中心に、全4章で構成されています。
仏教における男女平等の先駆けとなった中将姫

近代以前は全国的に有名だったにもかかわらず、現代では、知っている方もいれば、まったく知らない方もいるのが中将姫の物語。
姫が出家するきっかけとなった継母による継子いじめなど、その数奇な人生は、浄瑠璃、謡曲、文楽、歌舞伎などの題材になり、鎌倉時代から語り継がれてきました。本展を訪れる際に予備知識として知っておきたいのが、現代では知る人が少なくなっている、この説話のあらすじです。
<あらすじ>
奈良時代、藤原不比等の孫である
父と偶然再会して、一度は都に帰るものの、その後、奈良県葛城市の當麻寺にて出家(中将法如尼)。
極楽浄土への思いを募らせ仏道修行に励んでいると、阿弥陀如来と観音菩薩の化身が現れ、たった一晩のうちに蓮華の糸で當麻曼荼羅を織りあげ、極楽の姿を示しました。そして、29歳で女人の身で阿弥陀の来迎を受け、極楽往生しました。


「女性が極楽往生」の意義
この物語のポイントとなるのが、クライマックスの「女人往生」の部分です。當麻寺の

當麻寺にある「写し曼荼羅」3幅
根本曼荼羅に描かれているのは、阿弥陀如来を中心とした
當麻寺には、根本曼荼羅だけでなく、写し曼荼羅3幅が所蔵されています。室町時代に製作された重要文化財「當麻曼荼羅(文亀本)」、本展で注目の江戸時代に製作された重要文化財「當麻曼荼羅(貞享本)」、奈良県重要文化財「當麻曼陀羅(延宝本)」(絵画)です。
このうち文亀本は、當麻寺の本堂(曼陀羅堂)で公開されています。
江戸時代の大プロジェクト「二大當麻曼荼羅の修理と貞享本製作」

江戸時代(延宝5年)、

このプロジェクトに関わった当時の人々の名前や貞享本成立までの経緯は、このたびの修理で本図の下軸内から確認された40点ほどの文書のうち「奉納願文」に記されています。
今回、この軸内納入品である「奉納願文」が初公開されます。当時の信仰や製作状況がリアルに伝わってくる資料として注目です。
奈良県内各地には中将姫ゆかりの地

當麻寺では、会期にあわせ、秘仏「裏板曼荼羅」特別開帳と国宝「東塔・西塔」初層特別開扉がおこなわれる予定。「裏板曼荼羅」とは、中世に修復され板貼りだった奈良時代の根本曼荼羅を江戸時代に再び軸装にした際、はがした板面にうっすらと曼荼羅の図様が残ったもので、ある意味もう一つの根本曼荼羅とも言える貴重なものです。また、国宝の三重塔(東塔・西塔)は、西塔修理完成後の初公開になります。
奈良県内には、奈良市の旧市街「奈良町エリア」に姫の生誕の地として伝わる誕生寺、父・豊成公の墓と伝わる塚がある高林寺、邸宅跡と伝わる徳融寺や姫が隠れ住んだと伝わる宇陀市日張山の
(ライター・いずみゆか)