入門展「いざ、歌舞伎」国立劇場伝統芸能情報館で10月26日まで 入場無料

国立劇場の伝統芸能情報館(東京・半蔵門)で6月2日から開催されている入門展「いざ、歌舞伎」を取材しました。マンガの集中線、ヒーロー戦隊ものの登場の仕方、物語の「世界」を越境する二次創作やスピンオフ人気など、私たちが今様々なエンタメを楽しんでいる潮流に歌舞伎があることを実感しました。

物語の「世界」を二次創作やスピンオフで進化

展示解説

アニメや小説で「世界観」や「世界線」と言われますが、こうした意味での「世界」は歌舞伎用語だったのかもしれません。〈現代で言えば二次創作〉との説明も、ナルホドでした。

展示解説

リアルの赤穂浪士事件を題材にフィクションの「仮名手本忠臣蔵」が生まれ、その忠臣蔵の「世界」のスピンオフとして、お岩さんの「東海道四谷怪談」が生まれました。

見得(みえ)はスーパー戦隊シリーズやマンガにも

ゴレンジャーなど、日本の子供の定番のスーパー戦隊シリーズで、5人組の戦隊が順番に「レッド」や「ブルー」など名乗りをあげてポーズを決める登場方法。これは、歌舞伎の「白浪五人男」(青砥稿花紅彩画)の「名乗り」と「見得(みえ)」を踏襲しています。

江戸時代に、歌舞伎の名セリフを抽出した「鸚鵡(おうむ)石」という出版物がブームになりました。これは、すべてのセリフを載せた台本(シナリオ)とは違って、お客さんが帰ってから、家などで名場面のセリフを声を出して読むためのもの。案内してくれた国立劇場調査資料課の横山陽一さん曰く、「今だとカラオケでしょうか。見て楽しむだけでなく、役になりきって楽しんでいたのです」。なるほど、複数の役の掛け合いもあり、「デュエット」も楽しんでいたようです。

鸚鵡石のひとつ

赤や青の隈取(くまどり)の意味、なぜ寄り目をするのか、など歌舞伎鑑賞の基本を錦絵や衣裳、映像などで学ぶことができます。6、7月は国立劇場の歌舞伎鑑賞教室の月間(6月は21日まで、7月は3日~27日)。初めてや久しぶりの歌舞伎鑑賞とセットでいかがでしょうか。入門展「いざ、歌舞伎」は入場無料で、10月26日までの開催、7月1日をのぞき無休です。

会場風景

また、7月20日午後5時~6時半には、展示を監修した『ちゃぶ台返しの歌舞伎入門』(新潮選書)の著者で矢内賢二明治大学教授による講座「はじめての歌舞伎」が伝統芸能情報館で開催されます。受講料は1000円、定員は100人(抽選、全席指定)。件名を「第83回伝統芸能講座」として、①名前、②電話番号、③講座の開催日、④講座のタイトルを記載して dentoukouza@ntj.jac.go.jp へメールで。1通につき1人ずつの申し込みが必要で、重複申し込みは無効。締め切りは7月3日(日)。

(読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)


伝統芸能情報館のHP

同展の解説動画