「ボテロ展 ふくよかな魔法」音声ガイドの伊東健人さん「太陽か月のどちらかと言うと月」 

東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムを会場に7月3日(日)まで開催されている「ボテロ展 ふくよかな魔法」。音声ガイドのナレーションを務める声優の伊東健人さんに会場を訪れた印象や思いを聞きました。
南米コロンビア出身のボテロは、人も物もふっくらとさせるユーモラスな造形と色彩の鮮やかさが特徴ですが、伊東さんは「太陽と月のどっちかと言われると、月」と話します。その心は?

――音声ガイドでは、ボテロ役を演じています。だいぶ落ち着いた印象になっていますね。

ボテロの作品をすごいざっくりと分けると、「太陽」と「月」のどちらかと言われると「月」。どの作品もちょっとグレーなイメージがあります。そうしたイメージとBGMの音楽に乗せて、自然とそうなりました。
中南米から南米にかけての底抜けに明るいイメージがありますが、ボテロの作品は、例えばダンスをしているものでも、そういった意味での「明るさ」に光をあてていないのではないでしょうか。

フェルナンド・ボテロ《踊る人たち》 2002年 パステル/紙

私がボテロ作品で印象に残った色は「肌色」です。肌色っておおまかなくくりになりますが、ボテロ作品は細かい血色までそれぞれ違う。大きく陰影を付けているわけでもないのに、光があたるところと陰のところの描き方は見事だなと思いました。

フェルナンド・ボテロ《通り》 2000年 油彩/カンヴァス

ボテロ作品の特徴に、人物が無表情であることがあります。作中の人物が正面を向いていても鑑賞者と目が合わないようになっている。ボテロがなにかを表現をするうえで、人物の表情ではなく、体のちょっとした動きなどで表現しているのです。
見る人は、「無表情」の絵に秘められたなにかを探す、それも秘められたものは一つだけじゃないんですね。見ていると、考える「余白」なようなものが自分の中に生まれてくる。そして、その余白が「腑に落ちる」瞬間がくる。音声ガイドを聞いていただくと、この「腑に落ちる」までの時間をより楽しむことができると思います。

――実際に作品を見た感想は?

実際に作品を会場で見た印象は、思っていたよりも大きいなということ。タイトルに「ふくよかな魔法」とあるように、絵の中のボリューム感も含めて、圧倒されました。絵自体も大きいので、遠目で見たときと、近寄って見たときの印象がだいぶ違う。服のしわ、肌や髪の質感など、細かいところの情報が多いけど、近くで鑑賞すると自然にそうした情報も目に入ってくる。

ここまでボテロについて語っておいて申し訳ないですけど、音声ガイドは答えを限定するのではなく、ひとつの提示。ボテロを見た感想は、あくまで私の「個人の感想」です。美術展の鑑賞の良いところは、不正解がないこと。これって美術鑑賞に限らず、アニメやゲームも、見る側の答えは一つでない。そのことをあらためて感じました。(聞き手・読売新聞デジタルコンテンツ部 岡本公樹)

伊東健人さんプロフィール
声優。東京都出身。主な出演作に「2.43清陰高校男子バレー部」(小田伸一郎役)、「ヲタクに恋は難しい」(二藤宏嵩役)、「アイドルマスターSideM」(硲道夫役)、「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」(観音坂独歩役)など。

「ボテロ展 ふくよかな魔法」はBunkamura ザ・ミュージアムにて7月3日(日)まで開催中。開館時間:10:00〜18:00、毎週金・土は21:00まで(入館は各閉館の30分前まで)。会期中の土日は【オンラインによる入館日時予約】が必要です。当日予約枠に余裕があれば、予約なしでも入場できます。詳しくは展覧会HPへ。