【プレビュー】浮世絵で見る江戸っ子と動物たちのディープな関係――「浮世絵動物園」展 太田記念美術館で7月30日開幕

歌川広重「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」(前期)

浮世絵動物園
会場:太田記念美術館(東京都渋谷区神宮前1-10-10)
会期:2022年7月30日(土)~9月25日(日)
休館日:月曜休館、ただし9月19日は開館し、20日が休館。8月30日~9月1日も休館
アクセス:JR山手線原宿駅から徒歩5分、東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅から徒歩3分
観覧料:一般1200円、高校生・大学生800円、中学生以下無料
※前期(~8月28日)、後期(9月2日~)で全点展示替え
※最新情報は、公式HP(http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/)で確認を。問い合わせはハローダイヤル(050-5541-8600)へ。

浮世絵にはさまざまな動物が登場する。ペットとして愛されたネコやイヌ、日々の営みを助けたウマやウシなどの身近な動物はもちろん、おめでたいツルやカメ、舶来のゾウやヒョウ、はては地震を起こすとされたナマズまでも画題になっている。さらに浮世絵師たちは、想像力を駆使し擬人化した動物たちの姿を生き生きととらえ、「虎子石」のような「この世に存在しない珍獣」も生み出した。時にかわいらしく、時にへんてこな浮世絵の動物表現。今回の展覧会では、約160 点の作品を紹介する。

月岡芳年「風俗三十二相 うるささう 寛政年間処女之風俗」(後期)
歌川芳豊「中天竺馬爾加国出生新渡舶来大象之図」(前期)

まず描かれるのは、現代と変わらない、ペットを溺愛する人々の姿。犬に魚を盗まれる魚屋や馬に乗った旅人など、ヒトと動物の日常生活もスケッチされる。ミミズクを描いて疱瘡除けの効果を期待した「疱瘡絵」、飼い主のかわりに伊勢参りをしたと伝えられるイヌ……。動物たちは、現代人の想像を超える活躍を見せている。

歌川芳藤「兎の相撲」(前期)

動物を描いた浮世絵のなかでも人気が高いのが擬人化作品。相撲をとるウサギ、商売や勉強をするネコ、喧嘩や宴会芸をする鳥、踊るタコ――人間のように振る舞う動物たちの姿はユーモラスで、当時の生活風俗も教えてくれる。また、雨を呼ぶ霊力があるとされた龍、普賢菩薩の乗り物とされた白象、妖狐や化け猫など、伝説や物語に登場する空想上の生き物たちも浮世絵では大活躍。それだけではない。虎と石が合体した「虎子石」や、すべての干支が合体した不思議な生き物も登場するのが浮世絵だ。伝統的な「動物表現」だけでなく、絵師の自由なイマジネーションが様々な作品を生み、江戸っ子を楽しませてきたのである。

歌川芳員「東海道五十三次内 大磯をだハらへ四リ」(前期)

北斎晩年の代表作「雨中の虎」、ネコの絵の中でも屈指の人気を誇る広重「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」など、実力派絵師の名作も展覧会の見どころ。今回、紹介される絵師は40 人にのぼる。巨匠だけでなく、キュートな擬人化が得意な歌川芳藤、「虎子石」の生みの親、歌川芳員など、知られざる動物絵の名手たちの作品も楽しめる。

葛飾北斎「雨中の虎」(後期)

「見もの」の作品のひとつが、菊川英山の「虎図」。日本には生息していなかったにも関わらず、古くから我が国で親しまれてきたトラ。この作品では、竹の背後からギョロリとした大きな目に笑うような口元、ふっくらとした肉球を備えた、とても愛嬌のあるトラが登場する。縦長の画面は浮世絵版画で広く用いられた大判サイズを縦に2枚つなげたもの。掛物絵(かけものえ)」とも呼ばれた形式で、周囲に表装を施し掛軸のようにして鑑賞されることもあったという。

菊川英山「虎図」(前期)

(読売新聞美術展ナビ編集班)