永井紗耶子さんの「女人入眼(にょにんじゅげん)」が直木賞候補に! 「強くしなやかに生きた女性たちを書きました」と永井さん

第167回芥川賞と直木賞(日本文学振興会主催)の候補作が6月17日付けで発表され、永井紗耶子さんの「女人入眼(にょにんじゅげん)」(中央公論新社)が直木賞候補に選ばれました。永井さんはアートにも詳しく、「美術展ナビ」に展覧会の紹介記事などを度々、寄稿しています。

候補作になった「女人入眼」は今、注目の鎌倉幕府と朝廷をめぐる物語。様々な政治的駆け引きと、その中で運命を自ら切り開き、あるいは翻弄された魅力的な女性たちを描いています。メインのテーマは源頼朝と北条政子の間に生まれ、夭逝した大姫(おおひめ)の悲劇です。

「美術展ナビ」の取材に、永井さんは「今回、直木賞候補となった『女人入眼』は、デビュー前から長らく温めていたテーマでもありました。平安末期から鎌倉初期、雅さと強さが拮抗する時代の過渡期に、強くしなやかに生きた女性たちの物語を書きたかったのです。こうして本として発表できて『良かったなあ…』と思っていたところ、思いがけないノミネートのお知らせ。大変、光栄なことです。小説を読みながら、遠い時代に思いを馳せて楽しんでいただければ幸いです」と話していました。

今回、芥川賞は5人の候補者全員が女性、また直木賞も5人の候補のうち、永井さんを含めて4人が女性という顔触れ。選考会は7月20日(水)に行われます。女性作家の活躍に注目が集まる中、時代小説の分野で高い評価を受けてきた永井さんにも、大いにスポットがあたりそうです。期待したいですね。(読売新聞美術展ナビ編集班 岡部匡志)

【第167回直木賞候補】河﨑秋子「絞め殺しの樹」(小学館)▽窪美澄「夜に星を放つ」(文藝春秋)▽呉勝浩「爆弾」(講談社)▽永井紗耶子「女人入眼(にょにんじゅげん)」(中央公論新社)▽深緑野分「スタッフロール」(文藝春秋)

「女人入眼」

「大仏は眼が入って初めて仏となるのです。男たちが戦で彫り上げた国の形に、玉眼を入れるのは、女人であろうと私は思うのですよ」。建久六年(1195年)。京の六条殿に仕える女房・周子は、宮中掌握の一手として、源頼朝と北条政子の娘・大姫を入内させるという命を受けて鎌倉へ入る。気鬱の病を抱え、繊細な心を持つ大姫と、大きな野望を抱き、それゆえ娘への強い圧力となる政子。二人のことを探る周子が辿り着いた、母子の間に横たわる悲しき過去とは――。「鎌倉幕府最大の失策」と呼ばれる謎多き事件・大姫入内。その背後には、政治の実権をめぐる女たちの戦いと、わかり合えない母と娘の物語があった。
「女人入眼」データ
  • 初版刊行日2022/4/7
  • 判型四六判
  • ページ数312ページ
  • 定価1870円(10%税込)
  • ISBNコードISBN978-4-12-005522-5

購入は書店か中央公論新社のHPから各ネット書店で。

永井紗耶子さん:小説家 慶應義塾大学文学部卒。新聞記者を経てフリライターとなり、新聞、雑誌などで執筆。日本画も手掛ける。2010年、「絡繰り心中」で第11回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。著書に『商う狼』『大奥づとめ』(新潮社)、『横濱王』(小学館)など。第40回新田次郎文学賞、第十回本屋が選ぶ時代小説大賞、第3回細谷正充賞を受賞。4月上旬に新刊『女人入眼』(中央公論新社)