【レビュー】「木梨憲武展 Timing ー瞬間の光りー」 全国を沸かせた芸術家・木梨憲武の個展が東京で完結!

タレント、歌手、俳優として活躍する一方、画家としても25年以上のキャリアを重ねてきたとんねるずの木梨憲武。彼が2018年から全国各地で開催し、計74万人以上を動員してきた「木梨憲武展 Timing ー瞬間の光りー」が東京でフィナーレを迎える。6月4日に開幕した本展には東京会場が初公開となる最新作も展示される。作家本人も来場し、盛大に行われたプレスプレビューの様子とともに本展の概要を紹介していこう。6月26日まで。

延期を経てパワーアップして開催される“最終章”

2018年から大阪を皮切りに足かけ4年かけて全国を巡回してきた今回の「木梨憲武展」。東京での開催は2020年に予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大の観点から延期に。しかし、結果的に延期の2年間に制作された新作も加わってパワーアップされた展示になった。

ギャラリートークに登場した木梨憲武

内覧会に先立って行われたギャラリートークには木梨本人が登場。冒頭から偶然来場していたキャイ〜ンの天野ひろゆきのイジりから入るなど“ノリさん”らしいトークで会場は温かな雰囲気に。取材陣にも笑顔があふれる中で「自分が思ったことを色や線を使って絵日記のように難しくせず仕上げています。悲しい作品はほぼほぼないので、ここで何かを感じ取っていただいて、自分も何か新しいことを始めてみようと思ってくれたら」と作家としての思いを語った。

冒頭のパネルにはフィナーレを迎える木梨の万感の思いが

カラフルな「Flower」の展示から始まる会場は、初期から取り組むテーマから最新作まで200点以上の作品によって構成されている。序盤に展示されているのは「REACH OUT」の作品だ。

中央/《REACH OUT LOVE》 2018

「REACH OUT」とは、直訳すると「手を差し出す」とか「手を差しのべる」の意。木梨が初期から描き続けてきた手の形のモチーフが無数に並ぶ作品は、描く楽しみを表現する木梨のアートの自由奔放さを象徴している。連なり重なり合う大小の手は元気や生命力といった言葉を連想させる。

手前/《REACH OUT-Glass》 2020

また、ここには富山のガラスアーティストたちと共作したオブジェも置かれている。大勢の人が関わって完成した作品を見ていると、東日本大震災で絆の価値を認識したのに対して、コロナ禍で人間同士の距離が開くことを経験した昨今において、繋がりの力を再認識させられるかのようだ。

木梨の想像力に感嘆させられる2000の妖精たち

本展は画家・木梨憲武の展覧会だが、それでも人を楽しませることにかけては右に出る者がいないエンターテイナーの側面も随所に表れている。例えば、作品名に添えられたプレートには各所に木梨本人の直筆があったり、バンクシーをオマージュした作品が唐突と展示されていたり、さらには先ほど紹介した天野ひろゆきが描いた絵を展示室の片隅に展示してしまったり。茶目っ気たっぷりな演出は、きっとファンのツボに刺さるはずだ。

ユーモアあふれる作品紹介

「旅」をテーマにした展示を経て2階フロアに上がると、「フェアリーズ」のコーナーにたどり着く。

「フェアリーズ」の展示風景(画像を一部修正)

「フェアリーズ」は、様々な商品のパッケージや段ボールなどを素材にして木梨オリジナルの妖精を表現した作品だ。コロナ禍の自粛生活の中でコツコツと追加しながら、その数は何と2000点以上に至ったという。本来なら捨てられてしまうはずの箱や袋から再生された作品は、ひとつひとつが同じもののない一点もので、これだけの数の妖精たちを生み出せる想像力に驚かされる。

《フェアリーズ》(部分) 2015

また、この空間の中心には、《フェアリーズ -街-》に配置された木梨に似た妖精「コッカ」のフィギュアたちがAR技術で動いたりしゃべったりするARコンテンツ(東京会場限定)を体感できる。映像と音で楽しめる作品なので、スマホとイヤフォンの持参をお忘れなく。

《フェアリーズ -街-》のARコンテンツ

そして、これも木梨が長く描き続ける富士山をテーマにした「Mt. FUJI」に続き、2015年のニューヨークと2018年のロンドンでの個展に向けて手がけた「OUCHI」と近年の最新作が展示された空間へ。

《窓》 2015

「OUCHI」は、平面の絵の上に模型の家が載せられたミクストメディアの作品だ。都会と田舎、さまざまな“おうち”のあり方を表現した作品は、これまでの作品とは一線を画す穏やかなトーンが感じられる。

《OUCHI-街》2018

終盤には最新作である《感謝》の展示が待っている。今年で60歳を迎え、ギャラリートークの中で「ずっと小学3年生の気持ちで表現しようとやってきたけれど、今後は60歳なりに今感じたことを描いてみようかな」と語っていた木梨。「My heart is filled with so much greatful for your love.」という言葉を添えて、カラフルな点描を交えてキャンバスいっぱいに描かれた木は、節目の歳を目前にしてこれまで関わってきた一人一人への感謝の思いを込めつつ、今後の自身の方向性を示すような作品にも見えた。

《感謝》2021
木梨憲武の顔と並んで撮影できる顔はめパネル

絵画あり、オブジェあり、映像あり、芸術家・木梨憲武の多彩な才能に接しつつ、何より木梨本人が表現することを楽しんでいることが伝わる内容だ。芸術には縁がないけれど、とんねるずのファンだから…という人が、アートに触れる入り口としてもぴったりな展覧会といえるだろう。(ライター・鈴木翔)

木梨憲武展 Timing-瞬間の光り-
会場:上野の森美術館(東京・上野公園)
会期:2022年6月4日(土)~6月26日(日)
開館時間:9:30~17:30(金・土・日は9:30~19:00) (※入館は閉館の30分前まで)
休館日:会期中無休
アクセス:JR上野駅公園口より徒歩約3分、東京メトロ・京成電鉄上野駅より徒歩約5分
入館料:平日 一般2200円、大学・高校生1500円、中・小学生700円
土日 一般2400円、大学・高校生1600円、中・小学生800円
*日時指定制
詳しくは、展覧会HP(https://www.kinashiten.com/tokyo2022.html)へ