「オフィスにアート」 コクヨの取り組みとそのねらい

デザイン性豊かなオフィス

文房具や事務用品でおなじみの「コクヨ」。オフィスに大胆にアートを取り入れていると聞き、東京・品川のオフィス「THE CAMPUS」に伺いました。(読売新聞美術展ナビ編集班 岡部匡志)

現代アート18作品を設置

キャンパスノートをはじめ、製品は常に私たちの身近なところにある会社ですが、「コクヨ」という社名の由来はご存じですか?創業者の黒田善太郎氏(1879~1966)が、出身地である越中(富山)の「国の誉れになるよう」という願いを込めて、「国誉(こくよ)」という商号を付けたのだそうです。大阪が創業の地で、東京のオフィスは1979年から品川駅の港南口にあります。2021年2月に機能の集約などを含むリノベーションを完了し、リニューアルオープンしたのを機にアートを大幅に取り入れました。国内外10アーティストによる、18作品が館内に設置されています。

レセプションには、THE CAMPUSのロゴを元にした映像が流れる
「Untitled」佐々木拓(コクヨ)、金井あき(コクヨ)、Gottingham

THE  CAMPUSのロゴ・ビジュアルアイデンティティは社内のデザイナー・グラフィックのプロが手掛けていて、このアートはデザイナーと写真家のコラボ作品。コクヨの歴史あるオフィス家具の一部を切り取った写真が2枚対になっていますが、片方は素、片方には新しいグラフィックが入れ込んであります。コクヨが積み上げてきたものの過去と、これからの対比になっています。

「Untitled」横田大輔

抽象画がポンと壁にかかっています。写真ですが、撮影したものではなく、フィルムそのものに熱湯をかけて歪ませている作品。「これはなにに見えるだろう」と思わせることが社員同士の会話を促す契機になるかもしれません。

「SEMI-SENSELESS DRAWING MODULES」yang 02

複数の描画装置が、周辺の環境情報を反映しつつ抽象的な線を描いていきます。社内の空気の変化や、交差点の人の通行量を反映した作品が完成するのでしょう。

カラフルで自由な雰囲気のオフィス

オフィスの雰囲気も普通の会社とは違います。いるだけで楽しくなってきます。

懐かしいボードゲームがあるなど。実際、楽しむ人もいるそうです。

地域の人たちも楽しめるアート

オフィスには地域の人たちも自由に入れるオープンスペースを大きくとっており、ここにもアートがたくさんあります。

テーブルや椅子になっているこちらのパブリックファニチャー、「CAMPUS」となっているのが分かりますか。

屋外にもこうしたインスタレーションが設置されています。

こちらは屋内のフリースペース。近所に住んでいる子連れが散歩にくるなど、よく利用されているそうです。

「PWM」WA! moto “motoka watanabe”

中古ピアノを用いた彫刻作品。実際に音も出ます。街に開かれたスペースならではの触れるアート。社員ではないサラリーマンの人がふらっと立ち寄って、ピアノを弾いて帰る、なんていう場面もあるそうです。

夕方になるとビールも飲めます

もちろんコクヨ製品も買えます。

トイレはジェンダーに配慮し、デザインも凝っています。

「答えのない問いを考える」アート

同社ではこのオフィスを「働く・学ぶ・暮らすの実験場」として、様々な取り組みを展開しています。アートを取り入れたのも「社員の創造性を育む」ことをねらっています。業態的に、コロナ禍によるオフィス需要や働き方の変化で大きな影響を受けることが避けられない同社。社員の新しい発想を促すことは至上命題でしょう。

同社広報の片桐友美さんは「アートは観る人によってさまざまに解釈されるもの。モノづくりをしている会社にとって、答えのない問いを考えることはとても重要なことです。アートに日常的に触れることは、そうした思考のトレーニングになると思います」と話します。展示されているのはすべて現代アートであることにも意味があります。「作品は環境問題や多様性、デジタル化など、今の社会が抱えるテーマを反映しています。社会課題をとらえ、それを解決できる企業になることが求められているからです」。

実に深いねらいのある「オフィスにアート」。みなさんのお勤め先や学校ではいかがでしょうか。

(おわり)

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