「みんなの声と色でつくる『紙芝居』」 子どもたちの自由な発想をそのままに ワークショップルポ 東京都渋谷公園通りギャラリー

「雨が降ってきて・・」。即興で物語を作り、子どもたちだけで紙芝居を発表する場面もありました。(6月4日、東京都渋谷公園通りギャラリーで)

東京都渋谷公園通りギャラリーで6月4日(土)、5日(日)の両日、ワークショップ「みんなの声と色でつくる『紙芝居』」が行われました。参加した子どもたちがその場で描いた絵をもとに、即興で紙芝居を作りました。アートや演劇の原初の形を思わせる、ワクワクする取り組みでした。(読売新聞美術展ナビ編集班・岡部匡志)

右手の建物の1階にギャラリーがあります。パルコが目の前にある賑やかなスポット

会場の「東京都渋谷公園通りギャラリー」は、その名前のとおり、渋谷駅からNHKに向かう賑やかな公園通りに面しています。ワークショップは土日で計4回行われ、取材に伺った回は5人の小学生が参加しました。たっぷり用意された画材に子どもたちは早くも興奮気味。初対面同士でも気詰まりな雰囲気はありません。

画家の平松さん(左)から「どれを使ってもいいよ」と声をかけられ、目を輝かせる子どもたち
「どの画用紙に描こうかな」と品定め

講師は俳優の小島聖さんと画家の平松麻さんで活動されている「おもいつきの声と色」。ふたりはもともと交流があり、コロナ禍が本格化した約2年前から、紙芝居を制作し動画で発表する一方、不定期でワークショップを行っています。今回の企画は講師がワークショップのために描き下ろした物語と、子どもたちの絵を合わせて紙芝居を作り、発表するという内容です。

小島さんは「本当に思いつきで、趣味とコロナ禍からのリハビリを兼ねたようなもの。役柄がある芝居と違って、素の自分で子どもたちと向き合うのはエネルギーを使います」と話します。とはいえ、映像作品や舞台で活躍する小島さんが作画のモチーフになる紙芝居のストーリーを語りだすと、その真に迫った語り口に子どもたちはぐいぐい引き込まれていきます。

「かつて、私は巨大な森でした」と語りだす小島さん。渋谷の街の真ん中に、森が出現したような空気が流れます。

「うつくしい罠」と題したストーリーは孤独に苦しむ森が主人公。生命の愛おしさを感じさせる象徴的な物語です。絵を描く際の手掛かりになるように、印象に残る言葉をつづったカードも用意されています。

紙を手にしたらもう子どもたちは夢中。会場の雰囲気や森のストーリーに触発されたのか、どんどん筆が進みます。付き添いのパパやママが「うちの子が、こんなダイナミックな絵を描いたことはないですよ」と驚くほどです。

好きな色で太陽を描いてみました。「何色でもいいよね」と平松さん。

 

平松さんは「絵は教えられるものではないし、指で描いても自分の身体に描いてもいいです。大人に『こうしなさい』と決めつけられて絵を描くのが嫌になった人は少なくないでしょう」といいます。

描き終わったら手や体をごしごしと洗います。学芸員さんたちもそのお手伝い。服に絵を描いた子は「その恰好で電車乗って帰るの?」と聞かれ、「かっこいいでしょ」と平然としたもの。

後片付けと並行して、小島さんと平松さんは真剣な表情。子どもたちが描いた絵を組み合わせ、どう紙芝居を構成するかを急いで決めなければいけません。スタッフはドライヤーで絵を乾かします。さあ、子どもたちの絵を使った紙芝居の始まりです。

「かつて、私は巨大な森でした」。最初の時よりさらに熱の入ったトーンで、小島さんが語り始めます。自分たちの絵が紙芝居となり、プロが語ってくれる、という貴重な経験。子どもたちもじっと見つめます。

 

今度は子どもたちが即興で物語をつけ、紙芝居をはじめました。「はじまりはじまり~」「むかしむかしあるところに小川がありました」「急に雨が降りました。そこから綺麗なお花が咲きました」「猫がにゃーにゃーと鳴きました」と話が続いていきます。鉄琴でBGMも付けました。小島さんや平松さん、付き添いの大人たちは「やるなあ~」と大喜びです。

小島さんは「いつもこういう賑やかな展開になるわけではなく、みんながぐっと静かに絵を描くモードになる時もあり、本当に様々。それがいいと思っています」と振り返ってくれました。子どもたちは「楽しかった」「またやりたい」と晴れ晴れとした表情で帰っていきました。

今回の企画は、昨年から同ギャラリーで始まった子どものプログラム「Kids meet」の2回目として行われました。担当学芸員の竹野さんは「様々なバックグラウンドを持つこどもたちが一緒になり、本物のアーティストと出会うことで創造力が豊かになり、世界を広げ、様々な価値観を尊重するきっかけになれば、という狙いで行っています。これからも続けていきたい」と話していました。

◇ワークショップの成果を披露します◇

同ギャラリーでは、『ワークショップ成果発表展 みんなの「おもいつきの声と色』を7月9日(土)から開催します。ワークショップで子どもたちと作った紙芝居を映像で発表。計4回のワークショップで、同じストーリーを元に作られていても、不思議と違う物語に変化するのが興味深いです。さまざまな語りの「声」と描く「色」が合わさる世界をお楽しみください。

交流プログラム Kids meet 02 ワークショップ成果発表展 みんなの「おもいつきの声と色」
会場:東京都渋谷公園通りギャラリー 交流スペース(東京・渋谷)
会期:2022年7月9日(土)~7月31日(日)
休館日:月曜日(ただし7月18日は開館)、7月19日
開館時間:11:00~19:00
入場料:無料
アクセス:渋谷駅B1出口より徒歩5分(東急東横線・田園都市線、東京メトロ半蔵門線・副都心線)、渋谷駅ハチ公改札口より徒歩8分(JR山手線・埼京線・湘南新宿ライン、京王井の頭線、東京メトロ銀座線)
詳しくは同ギャラリーHP

(おわり)

新着情報をもっと見る